著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
全ての子どもにとって「やさしい」ユニバーサルデザインの授業
京都文教大学臨床心理学部教授亀岡 正睦
2014/9/24 掲載
 今回は亀岡正睦先生に、新刊『小学校の学びを変える! 授業と学習のユニバーサルデザイン』について伺いました。

亀岡 正睦かめおか まさよし

小学校教諭、教育委員会指導主事、ミラノ日本人学校副校長、神戸親和女子大学准教授を経て現職。教育学修士。

―まず、「ユニバーサルデザイン」とはどのようなことを表す言葉なのでしょうか?

 ロナルド・メイス氏が1985年に提唱した「ユニバーサルデザイン」は、それまでの「バリアフリー」の概念に代わって、「全ての人にとってメリットのあるデザイン」として世界中に広まりました。本書の「授業と学習のユニバーサルデザイン」は、最新のインストラクショナルデザインのコンセプトを参照し、全ての子どもにとって「やさしい」教育の実現をめざすという願いが込められています。

―「ユニバーサルデザイン」を授業に取り入れる際のポイントにはどのようなことがありますか?

 服を一人一人の体格に合わせて仕立てるような授業の創造の仕方は「テーラーリング」と言えます。それは「個への対応」デザインです。その上で「オーケストレーティング」(個と個の響き合わせ)をめざすことがポイントになります。あたかも、音色の違う楽器の特性を生かし、お互いに響き合わせ、美しいシンフォニーを奏でるように授業を展開していこうという基本デザインを提案しています。

―全ての子どもが、主体的に学習に参画するために欠かせないことは何でしょうか。

 一人一人が自分の個性とよさを自覚し、力を合わせる喜びを感じる学びの実現が、真の主体性を支える原動力と言えます。そういった学習を可能とする授業デザインは、先生が「何を教えたか」ではなく、子ども達が「何を学び取ったか」に授業評価の視点があるという考え、つまり、教える側のデザインの適切性は、どこまでも学ぶ側からの論理によって検証されるべきとの考え方に立って「授業と学習のユニバーサルデザイン」を構想することが必要です。

―Chapter2以降では各教科・領域について具体的な実践事例が掲載されています。算数では「ふきだし法」が紹介されていますが、「ふきだし法」とはどんなものなのでしょうか?

 「ふきだし法」は、

  1. ノート指導
  2. 板書の仕方
  3. 指導と評価の一体化
  4. 学習材分析
  5. 学級経営法

の5つの観点からトータルに授業を構築していく指導システムとして開発しました。その全てが、実は「ユニバーサルデザイン」という観点からも実に理にかなった指導法となっています。筆者は、算数科の授業デザインのポイントは、「ふきだし法」に尽きると考えています。詳しくは『算数科:言語力・表現力を育てる「ふきだし法」の実践 算数的活動と思考過程記述のアイデア』を参照ください。

―最後に、日々、授業づくりをしている小学校の先生方に向けてのメッセージをお願いします!

 本書のタイトルでもある「授業と学習のユニバーサルデザイン」は、

  1. 学級の全ての子どもが
  2. 授業・学習に積極的、主体的に関わり
  3. お互いを尊重し合う互恵的な学び(reciprocal learning)をめざす

授業・学習デザインの探究によって具現化します。
 本書との出会いをきっかけにあらゆる教科・領域で「ユニバーサルデザイン」の授業と学習が生き生きと実践・展開され、全ての教室に広まっていくことを切に望んでいます。

(構成:木山)
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