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子どもたちは、言葉で考え、言葉で表現していきます。つまり、子どもの言葉を鍛えることは思考力を鍛えることと重なり、表現に生かされていきます。特に「書くこと」は、課題設定から交流までの学習のプロセスが明確になっているので、表現のプロセスの中で効果的とされる思考を整理して、発達段階ごとに系統化を図りました。本書に「『書くこと』における思考語彙の系統(課題研版)」としてまとめていますので、ぜひご覧ください。
思考は、言語活動のいたるところで様々に働きます。しかし、教師が意識しなければ思考は活動の中に埋もれたままになってしまい、子どもに思考力を付けていくことはできません。そこで、大切になってくるのが「付けたい力」と「言語活動の特徴」です。「何を」「単元のどこで」「どのように」考えるのか、「付けたい力」と「言語活動の特徴」をふまえ、しぼって取り上げていくことが必要であり、思考力育成のポイントとなります。
言語活動には特徴(表現様式)があり、その特徴を明確にした指導を具体化していくことが大切になります。また、子どもに確かな言語能力を付けるためには、既習で身に付けてきた力を教師が把握し、活用させていくことも必要です。そこで、当研究会の課題研究部(以下課題研)では、言語活動別に各学年の学習活動を系統化することを重視しました。系統化することで、子どもの前提となる知識・技能や思考力をとらえることができるとともに、指導事項や取り立てるべき思考力をそれらと関連付けた授業づくりをすることができます。
課題研では、四つの視点を大切にしています。
一つ目は、思考と表現をセットにして単元づくりをすることです。考えたことが見える、そして自分の表現につながるという授業のしかけが、子どもたちの「書きたい」という学習意欲を高めていきます。
二つ目は、書くことのプロセスの中で、効果的に考える場面(思考場面)と考え方(思考操作)を位置付けることです。子どもが、自分が何を、どのように考えるのかを自覚することで思考は働いていきます。
三つ目は、単元の中の効果的な「思考のゆさぶり」です。子どもが立ち止まったり、考え直したり、捨てたりすることが必要になるしかけをつくることで、子どもの書く能力は高まっていきます。
四つ目は、思考が働くワークシートづくりです。課題研では、「思考の手立てを与える」「表現語彙を与える」「思考の軌跡や変容が見える」ワークシートづくりを大切にしてきました。
課題研では、前回の「読むこと」から引き続き、2年をかけて「『思考力』がつく『書くこと』の授業」の研究をしてきました。思考力は、問題解決のためにも重要な能力です。本書は、人と人との関係の中で、自分が相手に伝えたいことを伝わりやすく書く力を「思考力」に着目した授業実践としてまとめました。「書くこと」における言語活動と取り上げるべき思考力の系統、思考が高まる学習計画とワークシート、言語活動別モデル文など、日々の授業にすぐ使える実践を22本載せています。教室の子どもたちに書く力を付けるために、たくさんの先生方に活用していただきたいと思います。