著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「先生、作文って楽しいね!」と生徒が言う授業ができる!
東北福祉大学准教授上條 晴夫
2012/9/26 掲載
 今回は上條晴夫先生に、新刊『中学生を作文好きにする!新レシピ60&ワークシート』について伺いました。

上條 晴夫かみじょう はるお

1957年,山梨県生まれ。小学校教師、jrノンフィクション作家を経て、教育ライターとなる。現在、東北福祉大学准教授。特定非営利活動法人「授業づくりネットワーク」理事長。お笑い教師同盟代表。特定非営利活動法人「全国教室ディベート連盟」理事。日本テレビ・ニュースアドバイザリー委員(2000年8月〜2004年7月)。現在、教育zine「指導技術の教科書」において、上條プロデュース「学習ゲーム」アイデアを連載中。

―「生徒が作文を書いてくれなくって…」と悩んでいる先生が多いようです。中学生の作文指導にあたって、まずはどのようなことを意識して授業にのぞめばよいのでしょうか。

 一番大事なことは「教師の都合」(何を書かせたいか)を一端棚上げにして、「どういう材題なら中学生が興味・関心をもつか」を考えることだと思います。
 これは、教材づくりの「下からの道」という考え方です。
 例えば、わたしは6年前から仙台の大学に勤務するようになりましたが、よく学生に書いてもらっていたのは「仙台の美味い店」という題材です。学生に味覚表現・店舗情報を書くことを求めました。東北地方・北海道など、あちこちから集まってくる学生に、このネタならヒットすると思ったからです。そして、ヒットしました。

―本書は、「活動」「交流」「評価」という3点を理論的なポイントとして作成されていますが、それぞれの特徴を教えてください。

活動…ワークショップ型授業を前提にしています。
 特徴は次の4点です。
  @文章作成体験を通して学ばせる。
  A教師は枠作りと助言で指導する。
  B短い時間でイッキに作文を書く。
  C課題の条件設定でサポートする。

交流…協同学習の手法を積極的に活用しています。
 単なるグループ学習とは異なる「協同」のためのフォーメーションを決めることで、学習の精度がぐっと上がります。

評価…各ワークシートに助言のための指針を示しています。
 その作文が「よく書けた」「書けた」「あまり書けない」の3つぐらいにザックリと分類して、それぞれにどういう助言・サポートができるかと言うヒントを示しています。

―本書では、コピーして使用できる「ワークシート」が掲載されています。作文指導にワークシートを取り入れる利点を教えてください。

 利点は、ワークシートの枠組みに従えば、誰でも書ける(圧倒的に書きやすくなる)と言うことです。これは、教育学的には「足場かけ」と言います。
 ワークシートによって、書き出しや書く長さ(規模)などが指定されます。そうしたちょっとしたサポートによって、生徒たちは圧倒的に書きやすくなります。
 生徒たちの思考エネルギーが、「書き方」ではなく「内容」に向けられることで、負担が少なく、ひとまとまりの文を書くことができます。

―本書の特徴はなんといっても、「生徒が書いたものを交流して、試行錯誤の中で学び合う」という作文指導の新スタイルを提案したことではないかと思います。この新しい作文指導がもたらす効果を教えてください。

 効果は、教師の説明からだけでなく、同級生の書いた作文の表現やグループワークでの発言からも「書くこと」について学べるということです。
 50分の授業の中で、教師が説明できることはたかがしれています。
 それに比べて、自分の書いたものを元に、友達とワイワイおしゃべりをしながら学ぶことができれば、その情報量は半端なく大きくなります。また、教師が指摘するよりも、細かな点に触れたコメントをもらうこともできます。
 ちなみに、おしゃべりは不十分なところを指摘し合うより、「よい点」を褒め合うことが効果的だろうと思います。良さを指摘してもらった方がやる気になるからです。

―最後に、読者の先生方に、メッセージをお願いします。

 作文指導をする上での最大の配慮事項は、「安心して発表のできる教室空間をつくりあげること」です。
 まずは教師自身が、生徒の発表する作品に対して、できる限りのフォローをすること。そのためには、作品の「うまさ・高さ」ではなくて、「あるある!」という共感をベースに、その人らしい表現を愛でることが大切です。
 その態度を生徒たちにも広げていくように話すことができれば、教室内にたくさんの作文好きが生まれます。

(構成:杉浦)
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