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例えば、数と式の学習では、方程式を解けば解が求まる…というように、何をすればよいかが明確です。一方、関数の学習では、表をつくる、式をつくる、グラフをかく…といった個々の学習から、関係を調べる、つかむといった目標をつかめない生徒が多く、それらが関数に対する苦手意識の大きな原因になっています。
また、国立教育研究所「基礎学力調査」(1993.1)では、関数の問題の生徒の正答率に対し、教師が予想した正答率の方が10%以上高かったという調査結果があるなど、教師が生徒の関数の理解の程度を把握しきれていないことも課題と言えます。
関数の学習では、具体的な数値を伴った事象が生徒の目の前にあり、事象の中に次々と表れてくる数値に目を向け、それらの数値の中に潜んでいる数(量)の関係を認識することになります。それら無数の数値が文字となり、無数に立ち現れる数の関係が1つの文字の式として集約されます。変数概念とともに関数概念の発達や深まりがなされるところを、指導上意識してほしいと思います。
また、中学校の関数指導は式が中心であるとお考えの先生もいらっしゃいますが、いきなり式をつくるという指導ではなく、文字の背景には必ず数があることを意識させ、まず「○○が変わると何が変わりますか?」といったように、変量や変化に着目させことも心がけてほしいと思います。
例えば、グラフをかく指導では、式から表をつくり、グラフをかきます。それでおしまいではなく、グラフの特徴をグラフの形とともに、表のx、yの値や変化、式の形に戻って見直す指導がほしいと思います。また、関数の利用の時間を設け、表をつくるよさ、グラフをかくよさ、式をつくるよさが見いだせるような問題を用意し、問題解決を通してそれぞれのよさを感得できるような指導を大切にしてほしいと思います。
本書は、現場教師による長年の関数指導のグループ研究によってでき上がった本です。常に生徒に目を向けて日ごろの授業を見つめ、研究会に課題を持ち寄って指導課題を見いだし、研究授業を通して実証的に研究してきた内容をまとめました。この本を利用して、ぜひ関数の学習を楽しいと感じる生徒を増やしていただきたいと思います。