著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
板書と発問を磨いて、国語授業を成功に導く!
鎌倉女子大学教育学部教育学科准教授松永 立志
2012/8/23 掲載
 今回は松永立志先生に、新刊『小学校国語科授業アシスト 発問付でよくわかる!教材別板書アイディア53』について伺いました。

松永 立志まつなが たてし

鹿児島県生まれ。横浜市教育委員会指導主事、指導第一課長、教育課程開発課長、学校教育部長、横浜市小学校長を経て、現在鎌倉女子大学教育学部教育学科准教授。
小学校学習指導要領解説国語編作成協力者として二度の学習指導要領の検討にあたった。小学校「国語」教科書の編集委員を務める。
編著書に『小学校新学習指導要領の授業 国語科実践事例集 1年/2年』(小学館)、「新学習指導要領へとつなぐ教科指導ヒントとアイディア集 国語科」(小学館、小四〜六教育技術別冊付録)などがある。

―先生の考える板書の5機能について、ご紹介ください。

 本書では、板書のもつ機能を、次の5点に分けて記しました。

  1. 知識・思考・技術等の操作
  2. 学習の流れのコントロール
  3. 学習への参加意識の確認・高揚
  4. 単元における教材や学習内容・活動の可視化
  5. 機器や掲示との連携

 中でも、黒板に記して子供に見せるという活動から、抽象的なものを「視覚化(可視化)する」ことと、流れや方向を「コントロールする」という機能は、大きな力を発揮します。言葉の意味や思考内容、参加意識などをはっきりと示すことによって、児童の学習内容が整理されます。また、言語活動や思考の方向性、学習のプロセスや質的な高まりなどをコントロールすることで、学習の確実な成立を期すことが可能になります。詳細は本書をご覧ください。

―本書では、学習指導要領改訂に基づく授業改善のポイントがとてもわかりやすく示されていますが、その中でも、板書計画を立てる際に、特に気をつけたいことはなんでしょうか?

 板書の機能と授業改善を絡めて言うならば、「視覚化(可視化)する」機能を最大限発揮するには、「教える中身をはっきりさせる」ことです。話し方、聞き方、書き方、読み取り方など、言語を使った技能をしっかりと教えて板書で見せる授業に改善すべきです。また、「コントロールする」機能を生かすならば、「言葉による課題解決的な学習」を構想し、課題の設定や解決・交流に向けた学習プロセスへとコントロールしていくべきなのです。

―板書に求められている変化とはなんであると先生はお考えですか?

 「黒板は先生のもの」と思っている子供は案外と多いのです。開放された黒板に子供自ら書くことができる学習は、積極的な参加型学習の象徴といえます。また、板書は、教師のもつ言語の知識、技能、感覚などがすべて表れる、まさに子供にとって最大の言語環境なのです。さらに、どこの学級にも存在する配慮を要する子供たちを意識した、板書のユニバーサルデザインの発想や配慮は、もはや学級担任の義務でもあります。

―1時間の板書と発問を1ページでコンパクトにまとめている本書ですが、効果的な活用の仕方を教えてください。

 週案などの日常の教育(授業)計画を立てていくときに、教科書の指導書に飽き足りない方は、是非活用していただきたいものです。特に、板書と発問の前ページに記した、この教材で学習するにあたって「子供に身に付けさせたい国語の力」や「板書のアイディア」、「教師の願い」を読んで、学級の子供たちの顔を思い浮かべながら、自分ならこうしようかなという思いをもって、板書や発問のページをめくってください。本書に掲載されている板書が、あなた色に変わってくると思いますよ。

―最後に、全国で国語授業に奮闘する先生方へ、メッセージをお願いいたします。

 国語科は必ず自分で授業するし、いちばん授業時間は多いし、人間は言葉で考えたり考えや気持ちを伝え合ったりするし、なんだかんだ言っても、最も重要な教科です。その授業が、わからなかったり面白くなかったりしたら、あなたも子供も毎日が不幸ですよね。国語の授業を「言葉で遊ぶ」「言葉を楽しむ」くらいの心の余裕で作ってみてください。そんなあなたに、この本はきっとお役に立てると思いますよ。

(構成:林)
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