著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ノート指導でよりよい国語の授業をつくろう!
兵庫教育大学大学院教授堀江 祐爾
2012/8/25 掲載
 今回は堀江祐爾先生に、新刊『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』について伺いました。

堀江 祐爾ほりえ ゆうじ

兵庫教育大学大学院教授、元中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語専門部会委員、平成20年版中学校学習指導要領(国語)作成協力者、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」世話役代表。
主な著書に『「国語力」向上の授業改革1 国語科授業再生のための5つのポイント』『小学校新国語科 言語活動の展開がよくわかるシリーズ1 書く力がぐんぐん伸びる!「言葉のワザ」活用ワーク』、などがある。

―本書で述べられている「よりよい授業づくりを支えるノート指導の五つのポイント」について、なぜこの五点が大切なのか、簡単にご紹介ください。

 五つのポイントは、以下の通りです。

  1. 年間を見通せるノートになっているか?
  2. つけたい力を目に見える形にするノートになっているか?
  3. 子どもの状況にふさわしいノートになっているか?
  4. 「伝え合い」の過程が記録されたノートになっているか?
  5. つけた力を目に見える形にするノートになっているか?

 これらは“よりよい授業づくりを行うための”五つのポイントなのです。1は「年間を通して力をつける」ということを意識することを求めています。2は教師にとっての「つけたい力」であり5と関係します。3は子どもの状況に応じたステップの必要性を述べています。4は「学習集団」を生かした学びの成果が尊重されるべきであるということです。5は「ついた力」を子ども自身が自覚(メタ認知)することの重要性の指摘です。

―実際のノート例だけではなく、ノート指導の過程がとても詳しく書かれているのが本書最大の特徴かと思いますが、ここにはどのようなねらいがあるのでしょうか。

 取り上げた「ノート例」は実際の授業実践から生み出されたものです。それだけに、個性的なノートになっています。その「個性」を生かしながら、多くの教師と共有できる観点を「指導過程」として書き添えてみました。先生方、どうぞこの「ノート例」「指導過程」を参考にして、授業をしてください。実践される先生方の個性が反映されたノートがたくさん生み出されるはずです。個性的なノートを生み出すこと、これを実現していただくのが最大のねらいなのです。

―本書を活用して実際にノート指導をする際に、特にオススメしたいポイントはなんでしょうか?

 「ついた力」を子ども自身が見取りやすくするためには、「ワザ表」が効果的です。本書では、その「ワザ表」をいくつか紹介しました。子どもたちの感想や伝え合いメッセージから、「言葉のワザ」を引き出し、作成します(本書24ページ、38ページに該当)。ですので、学級ごとに異なった「学級文化」の表れた「ワザ表」になります。教師が押しつけたものではない、自分たちが見つけた「言葉のワザ」であれば、子どもたちは活用してくれます。「ワザ表」をノートに貼って活用すると良いでしょう。

―先生は、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」なども主宰され、先生方の指導の悩みを聞くことも多いかと思います。よく聞かれるノート指導のお悩みがあれば、教えてください。

【お悩みその1】
どうしても板書を写すだけのノートになってしまいます

→板書はあくまで学びの指針を示すものです。ノートはその指針に従って「思考力・判断力・表現力」を発揮する土俵です。例えば、「どんな学習をしたいか子どもから引き出す」という視点で授業を組み立ててみてください。詳しくは、本書119ページをご覧ください。

【お悩みその2】
「つけたい力」から「つけた力」へのつなぎの方法がわかりません

→まず、教師が「つけたい力」を示します。そして、子ども本人に“言葉で振り返らせる”ことが大切です。あらかじめ「つけたい力」をもとにした振り返り欄を設け、その「つけたい力」を参考に、子ども自身が「つけた力」を書くようにすれば良いでしょう。詳細は、「この単元でどんな力を身につけたかを書く」(本書124ページ)をご覧ください。

―若手・ベテラン問わず、もっとよいノート指導をしたい!と考える全国の先生方へメッセージをお願いいたします。

 実は、この本を執筆した先生方のノート指導が大きく変わりました。実際のノートや原稿に触れることにより、「ノートづくり」の基本に立ち返っていったのです。例えば、「めあてをもっとわかりやすいものに」、「つけたい力を明確に示す」、「伝え合いの過程がわかるように記入させる」、「つけた力を子ども自身に書かせる」などのことです。若手・ベテラン問わず、やはり「基本に戻る」ことが重要なのですね。 

(構成:林)
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