著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
子どもが“生きる意味”を考える道徳授業を!
福岡県北九州市立浅川中学校教諭相良 賢治
2012/4/11 掲載
今回は、相良賢治先生に、新刊『中学校 「スピリチュアルな価値観」を育てる道徳授業』について伺いました。

相良 賢治さがら けんじ

1961年福岡県生まれ。横浜市立大学文理学部卒業。北九州市立浅川中学校教諭。日本学校教育相談学会北九州市支部事務局長。日本トランスパーソナル学会会員。学校カウンセラー。中級教育カウンセラー。

―はじめに、「スピリチュアルな価値観」とは具体的にどのようなものか、教えてください。

 「スピリチュアルな価値観」とは「目に見えない、大いなるものとのつながりがあることに気付き、人生に意味と目的を見いだせるようになる価値観」です。これは、国連の世界保健機関(WHO)の定義をもとにしています。
 「スピリチュアルな価値観」を育てれば、子どもは、自分の生きている意味を確信し、人生を前向きに生きていくことができるようになります。つまり、「スピリチュアルな価値観」を育てることは、中学生の心・人格・生き方を育てる基盤なのです。これを育てない手は、ありません。

―本書の中で、「『スピリチュアルな価値観』を育てることは『自殺予防教育』にもなる」と先生は書かれています。なぜ「スピリチュアルな価値観」を育てることが「自殺予防教育」につながるのでしょうか。

 「スピリチュアルな価値観」を育てれば、「子どもの自殺心理」をかなり解消していくことができます。ですから、「スピリチュアルな価値観」を育てることが「自殺予防教育」につながっていくのです。
 「子どもの自殺心理」とは何でしょうか? 文部科学省『教師が知っておきたい 子どもの自殺予防』(2009)では、以下の5つの共通点を挙げています。「ひどい孤立感」「無価値感」「強い怒り」「苦しみが永遠に続くという思いこみ」「心理的視野狭窄」の5点です。

―本書で紹介されている実践例はすべて、「読み物資料」と「エクササイズ」を組み合わせたものになっています。「エクササイズ」を取り入れるメリットを教えてください。

 「読み物資料」を読むことに加えて、さまざまな「エクササイズ」を生徒が体験することによって、生徒の「スピリチュアルな価値観」を育てることができます。なぜなら、「スピリチュアルな価値観」は合理的な説明によって教えられるものではないからです。体験活動が欠かせないのです。
 また、「生徒が楽しいと思える道徳授業」を作っていくためにも、「生徒が生き生きと活動できるエクササイズ」を取り入れています。

―本書では、先生が授業で実際にご使用されているワークシートが掲載されています。「書く活動」は意図的に取り入れられているのでしょうか。また、ワークシートを用いる際のポイントを教えてください。

 「書く活動」は意図的に取り入れています。なぜなら、読み物資料を読んでエクササイズを体験した後や、他生徒とのシェアリングの後に、生徒一人ひとりに「ワークシートへの記入(ふりかえり活動)」をさせることで、生徒の「スピリチュアルな価値観」を深めていくことができるからです。
 また、ワークシートを用いる際のポイントは生徒に自由に表現させるということです。つまり、「自分が気付いたことや感じたことを自由に書いてください」と指示します。

―最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

 「スピリチュアルな価値観を育てる道徳教育」にチャレンジするか、しないかで大きな違いが生まれます。「スピリチュアルな価値観を育てる道徳授業」を推進していけば、教師は「子どもたちの澄んだ瞳と素晴らしい感性」に出会うことができます。そして、そこで教師自身も自らの品性・道徳性・スピリチュアリティを向上させていくことができるのです。
 子どもたちに「気高い心」「崇高な精神性」を育てたいとお考えの先生に、これまでの道徳授業にどこか物足りなさを感じていた先生に、他の先生とはひと味違う教師を目指す先生に、本書をぜひ読んでいただきたいと思います。

(構成:茅野)
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