著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
表現いっぱいのあそびで笑顔満開の春にしよう!
桜花学園大学保育学部保育学科教授淺野 卓司
2012/3/30 掲載
 今回は淺野卓司先生に、新刊『「自分らしさ」をフルに発揮!0〜5歳児の楽しさはじける表現あそび』について伺いました。

淺野 卓司あさの たくじ

 名古屋市生まれ。愛知教育大学大学院 教育学研究科芸術教育専攻(美術分野)修士課程修了。専門分野は美術(彫刻)、乳幼児の造形表現活動。最近の著書として『子どもの表現力をグングン引き出す造形活動ハンドブック』『ドキドキワクワクでにんなくぎづけ!3・4・5歳児の造形活動おまかせガイド』(何れも共著・明治図書)など。社会活動として保育所等における研修・助言や生涯学習センター、子育て支援センターでのおもちゃワークショップなど多数。彫刻家として野外彫刻公募展にて受賞、国内外の彫刻シンポジウムにも参加。

―本書では92種類の「表現あそび」を紹介していますが、そもそも「表現あそび」とはどのようなあそびなのでしょうか。

 表現あそびとは、自ら「表す」ことや「表されたものを受け止める」ことを通して、様々な面白さに触れて楽しむあそびです。表現という言葉には、自分が感じていることを様々な伝達手段を使って他人に伝えるという意味があります。乳幼児期の子どもたちの心の中に、意図的に何かを表したいという気持ちが芽生えて保育者や友達がそれを受け止めることで、活動が展開していくといいなと思います。

―「近ごろの子どもたちは『自分らしさ』をなかなか出せない」と本書にありますが、子どもたちが自由に表現できるよう、0〜5歳児の各年齢で保育者が一番心がけるべきことを、一つずつあげて頂けますか。

 0、1歳児では、保育者が子どもの行為から気持ちをくみ取って接する姿勢が大切ですね。2歳児の保育では、小さなことでも自分できる!という自尊心の育ちをサポートするような言葉がけをしてみましょう。見立て・つもりあそびが盛んになる3歳児では、イメージの世界を一緒に楽しんでみてはどうでしょうか。身体の動作がしっかりしてくる4歳児にはその力にふさわしいあそびを、5歳児ではみんなで頑張る、お互いを思いやるような共同性が育まれるような活動が望ましいと思います。

―本書は、あそびのアイデアとともに、発達に関してもくわしく述べられています。本書で述べられている「発達の節目」とは何か、簡単に教えてください。

 本書では、発達の上で質的変化のことを「発達の節目」と書きました。でもこれは、何歳になると何かができるようになるという意味ではないし、劇的に変化してできるようになる時期があるということでもありません。あそびの中で子どもが繰り返し体験した結果として、自然と何かができるようになった時、その子の発達の節目を迎えたということです。この緩やかな変化における節であり、活動と年齢の適性を示す一つの目安として捉えてください。

―本書に収録されているあそびは、「感覚・認識」「身体・手指」「社会性」という3つの発達の視点と、「自然」「造形」「音・リズム」「ことば・からだ」「ごっこ・なりきり」という5つの活動種類という、2つの分類によりまとめられています。保育現場で実践する際、この2つの分類をどのように活用して、あそびを選ぶとよいでしょうか。

 3つの発達の視点は、5つの活動種類の中に含まれる要素です。そしてこれらの要素には、それぞれに育つ時期があったり、年齢によって少しずつ質が異なるといった特徴があります。こうした特徴を季節や園の行事などの保育実践に照らし合わせてみると、似通った活動でも年齢に見合ったものとして、指導の力点が見えてくると思います。

―最後に、4月から新たな子どもたちとの出会いを控えている保育者の先生方に向け、メッセージをお願いします。

 入園する子どもや、既に同じ園舎で過ごした子どもも、新しい教室での出来事に対して、少し敏感になる時期でもあります。何か言い出そうとしても恥ずかしくて言い出せなかったり、泣いてしまう子どももいるかもしれませんね。こういう時期は特に、安心できる大人として、先生はすごく頼りされていると思います。その期待に答えることができるように表現あそびを通して、子どもとの深い信頼関係を築いていってほしいと思います。

(構成:木村)
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