著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
国際社会で通用するPISA型読解力を育てよう!
国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部総括研究官有元 秀文
2008/2/8 掲載
 今回は有元秀文先生に、新刊『必ず「PISA型読解力」が育つ七つの授業改革』について伺いました。

有元 秀文ありもと ひでふみ

早稲田大学国語国文学科卒。東京都立新宿高等学校教諭、文化庁文化部国語課国語調査官、国立教育研究所教科教育研究部主任研究官を経て、現在、国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部総括研究官。東京大学教育学部非常勤講師。
主な著書に『相互交流のコミュニケーションが授業を変える』(明治図書)、『子どもが必ず本好きになる16の方法 実践アニマシオン』(合同出版)、『「国際的な読解力」を育てるための「相互交流のコミュニケーション」の授業改革〜どうしたらPISAに対応できるか〜』(渓水社)などがある。

―PISA型読解力をつけるために、日本の教育に欠けているのは、どのようなものでしょうか?

 一番欠けているのは、読んだことについて自分の意見を表現することです。現在でも、日本の国語教育は読解と表現を区別することが多いです。これではPISA読解テストに対応出来ません。
 次に欠けていることは、教材文について意見を言うときに、必ず文章に書いていることに基づくことです。自分の憶測や主観や体験だけを根拠にしてはいけません。
 三つ目に欠けがちなことは、欧米の国語教育は常に読解教材を伴いますが、日本では読解教材を伴わない聞く話すだけの授業が行われることです。これでは国際社会に通用する読解力は育ちません。

―まえがきの中で、PISAで求められているものとして「読解表現力」があげられていますが、従来の「読解力」とこの「読解表現力」との違いは何でしょう?

 従来、国語教育でよく行われた読解は、読解教材をできるだけ正確に理解したり鑑賞して味わおうとしたりすることです。PISAでも正確な読解は求められますが、その上に、「読んだことについて、正確に理解した上で、個性的で創造的な自分の意見を述べる」ことが求められます。
 これは「オープンエンド」の問いといって、日本の国語教育ではなかなか行われなかったことです。
 また、読解と表現が融合したものですから「読解表現力」と呼ぶこともできます。

―発言や表現が苦手な子どももクラスにいます。そんな子どもたちが効果的に本書で紹介されているクリティカル・リーディングを行うためには、どのようにアプローチすればよいでしょうか?

 クリティカル・リーディングは、日本の国語教育の伝統になかったことですから、いきなり子どもに押しつけてはいけません。
 最初のステップは、まずごく簡単な課題について、理由をあげて意見を書く練習をさせることです。
 例えば、「この物語のなかで、一番好きな場面はどこですか? どうしてですか?」のように尋ねます。
 発言のできない子どもは、いきなり聞かれても答えられませんから、まずノートやワークシートに書かせてから、発言させればだんだんにできるようになります。
 また、この活動は、毎時間のように行うことが大切です。毎時間、意見と理由を書かせ、発表させるという学習を繰り返せば、ほとんどの子どもは意見が言えるようになります。

―どのような活動によってPISA的な読解力は身につくでしょうか? 本書で詳しく紹介されていますが、2、3教えてください。

 私のウェブサイトのトップにリーディング・リテラシーというサイトがあります。その中に、小学校から高校までの実践事例が示されているので参考になさってください。
 PISA型の授業を行う最初のステップは、PISA型の発問をつくることです。PISA型の発問をつくるには、まず上記の実例を模倣するところから始めてください。
 その際、次の3点を守ってください。
1.その発問に答えることで、教材の一番大切なところがよくわかる発問をつくること
2.子どもが興味を持ち学習意欲を高める楽しい発問をつくること
3.はっきりと明確で、英語の疑問文になる、だれでも何を答えたらよいかわかる発問をつくること

―最後に全国で国語の指導をする先生方に一言お願いいたします。

 PISA型という名称は本当はおかしくて、欧米ではどこでも普通に行われている国語の学習のことです。つまり、このような読解力を身につけないと日本人は国際社会に通用する人間になれないのです。
 子どもたちが生まれた町で一生暮らすような時代なら、国際性など身につける必要はないでしょう。しかし、日本社会はどんどん国際化していきます。子どもたちも大都会や外国で働く機会が増えてきました。
 かつては、アメリカで起こったファッションや流行が10年たって日本にくると言われましたが、インターネットによってあらゆる情報が瞬時に伝わるようになりました。
 PISA型には、従来日本で行われてきたことも少なくありません。しかしまったく新しいこともあります。これからの時代に生きる子どもたちのために、従来行われてきた学習ももちろん大切にしながら、新しいことにチャレンジしてください。

(構成:木山)

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