著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「子どもは担任を選べない」
東京都学級教育会名誉会長中嶋 公喜
2005/4/8 掲載
 この時期1冊は読んでおきたい、学級経営の本を多く執筆されている中嶋先生。
 イラスト入りでわかりやすく、新学期の先生方をサポートする新刊、『子どもが光る学級づくり 学級担任ハンドブック』についてお聞きしました。

─本シリーズでは「学力向上のためのアイデア」、「英語に親しもう」など、今の教育界の現状にあわせた項目で、学級担任の先生方への経営方法が詳細にわたり紹介されています。このシリーズを出すに至った意図をお聞かせください。

 子どもたちの学力低下がデータで裏付けられ、いろいろなかたちで公開されています。また、新しく取り組む内容や課題がはっきりしてきました。したがって、この時期に、現場で、次のことを参考に実践していただきたく本シリーズを出版いたしました。

 ・学力の向上への諸方策
 ・新しい内容への取り組み
 ・子どもが生かされ光りだす指導法と学級経営
 ・特色ある学校への変身
 ・これからの教師の心構えと問題への対応と処理
 ・その他

─「子どもは担任を選べない」という言葉が心に響きました。それ故に教師側にはどのようなことが必要だと先生はお考えでしょうか。

 このことばを強く受け止めていただいた先生は、たいへん素晴らしい方だと思います。そんな先生方がいっぱい増えることを望みます。さて、担任は、多くの子どもを託され一任されます。しかも、小学校では、全教科を一人で教えるのです。よくよく考えると、怖いことです。ピアノが弾けて歌がうまく、水泳も得意で倒立もなんなくできる。漢字の筆順はすべて完璧で、化学も得意。どんな人間関係もこなし、トラブルは解決できる。そのような実力がなくては、全教科を教え、何十人もの子どもを一人で看ることはできない筈です。こう考えると、教師は常に研鑽に励み指導法の研究はもちろん、指導者としての学力と人間性を身につけることが必要だと思います。とにかく、「いい先生!」といわれる先生になることです。

─情報開示、説明責任が求められています。学級担任の役割・責任について、どのようにお考えですか。

 これからは、学級や学校の情報は「すべて開示する」という考えで進めていくことが望まれます。ただ、個人のプライバシーに関することや個々人が持つ人権にかかわる事項などでは、非公開であることは当然です。公開して、責任の取れないような指導や仕事しかできないようでは、困ります。評定には説明責任が求められます。テストなどのデータを事実に基づき公正に判断し、きちんと管理したいものです。

─項目の中に「心のノート」の活用方法を入れた理由は何でしょうか。

 道徳の授業についてページを取りたかったのですが、編集の関係でボツにしました。そこで、道徳の授業だけでなく、すべての教科で活用できる「心のノート」をとりあげました。

─最後に小学校で担任を務める先生方に一言お願いいたします。

 先に申し上げましたが、小学校の担任は、「万能の神」であることが求められます。だからと言って、すべてに堪能でないと担任ができないかといと、そういうものでもありません。だいたいそんな人間はいませんから。そして、それがまた、いい加減なもので、免許さえあれば、誰にでも担任がきるし、少々手抜きしてもできるから、困ってしまいます。教室という密室のなかでは、何が行われようとあまり外部には出ないし、何でもありが許されてしまいがちです。したがって、担任の第一の心構えは、人間として恥じない行動で子どもに接し、己の全身全霊を子どもに傾注していくこと、命を懸けて子どもを守り愛していくこと、教職に誇りを持ち「聖職」と心得ることです。事務を何百万冊こなしても、たった一人の子どもの「わかった!」という笑顔には、及びません。

(構成:木山)

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