著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ユーモアでつくるネアカ学級
教材・授業開発研究所代表有田 和正
2004/12/10 掲載
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  • 指導方法・授業研究
 著者インタビューは、有田和正先生の登場です! 有田先生は、月刊誌の編集長を務める一方、数多くの授業技術についての単行本を出されています。有田式授業のベースともいえるユーモア。今回は新刊『授業を楽しくするユーモア事典』について伺いました。

有田 和正ありた かずまさ

1935年福岡県生まれ。玉川大学文学部教育学科卒業。福岡県の公立校、福岡教育大学附属小倉小学校、筑波大学附属小学校を経て愛知教育大学教授。1999年3月愛知教育大学定年退官。現在、教材・授業開発研究所代表、月刊誌『授業のネタ教材開発』(明治図書)編集長。

―『ユーモア事典』という書名のとおり、抱腹絶倒の内容で楽しく拝見させていただきました(笑)。最初の卒業生の一言が、30年近いユーモア収集へのきっかけになったとのことで、本書の中でも詳しく述べられていますが、そのエピソードについて簡単にご紹介ください。

 最初の卒業生を送り出すとき、「『こうしたら、もっといい先生になるぞ』と思われることを、遠慮せずに、はっきりと言って下さい」といったのです。
 すると第1発目に、「先生は暗い。もっと明るくなれば子どもたちに好かれますよ。だから、ネアカになるよう努力することだと思います」とやられ、ショックを受けました。自分がネクラなんて思いもしていなかったからです。自分ではネアカだと思っていました。
 それから、ユーモアの本を集めたり、笑う練習をしたり、ちょっとしたことを大笑いするように努力しました。笑い話を集めては、子どもたちに話し、一緒に笑うように努力しました。そうすると、自然に楽しくなりました。子どもたちが明るくなることがわかりました。しかし、自分のことはわかりませんでした、ずっと後まで。

―有田先生が卒業生の言葉のようにかつては暗かったということは、とても想像できないのですが、ユーモアを追究することによってどんな変化がありましたか?

 あるクラスは、毎日「笑い話」をし、毎日「笑う練習」をしました。1月もすると子どもはものすごく明るくなり、よく笑うようになりました。気づいたら、わたしもよく笑うようになっていました。
 最後に担任した6年生からは、「先生、今以上に明るくなったら、子どもからばかにされるので、今くらいでやめといた方がいいですよ」といわれ、びっくりしました。長年努力しているうちに、明るくなっていたのです。継続は力なりです。
 教師がネアカになれば、子どももネアカの楽しい雰囲気を持つようになることがよくわかりました。

―有田先生が集めたユーモアをクラスに紹介することによって子どもたちにはどんな効果がありましたか?

 朝や帰り、一番多く話したのは、授業中です。授業が面白くいかない時や、ノリが悪い時、逆にノリにのっている時などに、ユーモア小話をしました。すると、子どもは絶対といってよいくらい元気に笑い(小話にもよるけれど)、授業もうまくいきました。
 先生方対象の模擬授業でも、ユーモア小話から始めると緊張がとれ、授業がうまくいきます。子どもも大人も、笑いによって勉強が楽しくなるのです。「勉強というのは、遊びよりも楽しいですね」と子どもにいわれたこともあります。ユーモアには、子どもを勉強好きにする効果もあるようです。

―子どもたちの書いたものや、先生のお孫さんとの会話など、本書にはたくさんの子どもたちのユーモアが紹介されていますが、ユーモアに関しては子どもに軍配が上がるようですね。やはり心のゆとりの問題でしょうか?

 ズバリですね。子どもは生まれながらのユーモリストだと思います。これをつぶしているのは大人です。だから、小さい子どもほど面白いです。小学生では、1年生が1番のユーモリストです。学年が進むにつれて、まわりの大人たちがつぶしているのではないかと思います。
 このことに気づいてから、わたしは子どもに学ぶことにしました。その気になると、子どもの言っていること、やっていることが面白くてたまらなくなりました。大人はもっと子どもに学ぶべきだと思っています。孫と話すと、必ずユーモア小話が1つか2つ入手できます。電話で話したりして、話のネタを入手しています。

―今後、読者の先生方が教室でユーモアを披露する際の注意点などがありましたら、ご紹介ください。

 「これは面白い」というユーモア小話を入手したら、自分と結びつけ、自分が体験したように話すのがいいようです。「わたしが、病院にいったら、〜がありましたよ」というふうに。
 話すとき、自分から先に笑ってはダメです。子どもが大笑いしてから自分も笑うのです。自分が笑ってみせては、笑話になりません。むずかしい話をするような顔をして、面白い話をするのがコツです。
 そうしているうちに、「先生がむずかしい顔をしたら、笑い話があるぞ!」と見破られるようになります。そうしたら、別の顔をするのです。子どもの状況に応じて、顔も、態度も変えて話せるように修業することだと思います。面白い人ほど努力しています。

(構成:木山)

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