ハッピー先生のとっておき授業レシピ
“この教科の授業はこうでなくちゃ…”と決めてませんか? ハッピー先生がそんなあなたの授業観を大転換!
ハッピー先生の授業レシピ(6)
とぼけることも大事
よい意味で教師に頼らない子どもにするために
大阪市立千本小学校教諭金大竜
2012/11/25 掲載
  • ハッピー先生の授業レシピ
  • 指導方法・授業研究

とぼけたり、理解できないそぶりをしたり

 こうなると、子どもたちは、“先生はこれを言ってほしいんかなぁ”と予想して考えを発表するようになったり、教師の話さえ聞いていれば授業が理解できるので、友だちの意見を聞かなくなってしまったりします。さらに、こうした状況が続くと、子どもはどんどん発表しなくなっていきます。意見を発表しなくても、授業が進んでいくからです。
 そこで僕は、教師は正しい意見に対しても、ときにはとぼけたり、理解できないそぶりをしたりすることが大切だと思います。そうすることで、子どものフラストレーションが高まり、「だからぁっ!」と言いながら、より詳しい説明をいろんな表現でしようとするようになるからです。
 とぼける場面はいろいろですが、僕がやってみた2つの実例を紹介したいと思います。

先生はそう思わんけどなぁ…

 社会の工業の学習で、関連工場について考えた授業でのことです。
ある子が、「関連工場は、自動車工場の流れ作業の一部みたいだと思いました」と意見を言いました。発表の序盤にこういうしっかりした意見が出てきたので、「そうかなぁ? 先生はそう思わんけどなぁ…」と僕は言いました。
 すると、クラスの多くの子どもたちが、「Aさんの発表は正しいと思う!」と言い出したので、僕はさらに、「なんで?」と聞きました。すると、子どもたちが、そう思う理由を、これまで調べたことから必死になって口々に説明し始めたのです。

今の説明、わからんなぁ…

 次は、算数の時間のことです。
 問題を解いて、自分の考えに自信たっぷりの子がいます。その子を指名すると、一生懸命自分の考えを発表しました。深い気付きがあり、すばらしい発表でしたが、説明が長いうえに、早口でした。
 そこで僕は、説明が理解できていなさそうな子に「今の説明わかった? めっちゃ難しくてわからんかったよなぁ」と話しかけました。すると、話しかけられた子は、「うーん、難しかった」と言います。さらに僕は、クラス全員に「大事なこと言ってるような気がしたけど、どうしたら伝わるかなぁ?」と尋ね、どうすれば伝わるかをペアで話し合う時間を設けました。
 するとその後、先ほど発表した子は、「昨日学習したノートを開いてください」と自分の考えの根拠になる部分を指しながら説明しだしました。
 ここで僕は、自分の考えがどうすれば人に伝わるのか、いくつかのスキルを指導しました。

  1. 根拠になる部分を「見てください」と言ってから説明に入る
  2. 板書を指さしたり、自分で板書したりしながら説明する
  3. 途中で「ここまでわかりますか?」と全体に聞く
  4. 簡単な計算は「2×3はいくらになりますか?」などと全体に聞く
  5. わかるところまで発表して、そこからは交代してもらう

 これらは、一度に指導するのではなく、一週間に1つ程度ずつ定着させていくのでもよいと思います。

よい意味で教師を頼らなくなる

 このように、教師がとぼけることは、子どもたちが「もっと上手に説明をしたい!」と思えるようになり、人に伝わる話し方のスキルを指導するきっかけにもなります。
 また、こうしたことを続けていると、教師がどのように反応するかを、子どもたちが必要以上に気にしたりしなくなります。“どうせ先生はデタラメ言ってる”と思うからです。よい意味で教師に頼らなくなり、自分たちで考えるようになっていくわけです。
 

金大竜きむ てりょん

1980年生まれ。
「日本一ハッピーな学校をつくる」ことを夢みる、教師歴11年目の大阪市小学校教員。周囲からは“ハッピー先生”と呼ばれている。
教育サークル「教育会」代表。「明日の教室」をはじめ、各地のセミナーで講師を務める。
また、「あいさつ自動販売機」など、型にとらわれない個性的な実践が注目を集め、様々なメディアで取り上げられている。
ブログ「日本一ハッピーな学校をつくろう」において、日々の学級での出来事や実践を配信中。
2012年4月に、『日本一ハッピーなクラスのつくり方』(明治図書)を刊行。

(構成:矢口)

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