- まえがき
- 第1章 トラブルの本質を見抜く技術
- 見抜く技術の基本的な考え方
- 子どもの大人への見方を見抜く
- 子ども同士の人間関係を見抜く
- 見抜く以前の教室環境を整える
- 保護者の真意を見抜く
- 職員同士の関係を見抜く
- 第2章 こんな時にどう動く? スルーorリアクション
- 授業場面
- 「今言った…」ことを質問されてしまった時
- 子どもが授業開始に遅れてきた時
- 授業で間違えた友達を馬鹿にする時
- 授業中,真面目に話を聞いていないと気付いた時
- 指名されたのに黙って突っ立って発言しない時
- 授業中の手いたずらに気付いた時
- 授業中にふさわしくない言葉を使っている時
- 授業中にノートをとろうとしない時
- 「ハイハイハイ!」「いいで〜す!」の大合唱が出る時
- 授業中に子どもが立ち歩いている時
- 生活場面
- 同じ注意を何度も言わせる時
- 廊下を走っているのを見つけた時
- 毎度給食を残す時
- 何度言っても宿題や提出物を出さない時
- 忘れ物が多い時
- 返事はいいがやらない時
- トイレの使い方が汚い時
- 手を洗った後にハンカチで拭かない時
- やたらと要求や指摘が多い時
- 「ため口」で話しかけてくる時
- プロフ帳,メモ帳など余計なものを持ってきた時
- 大きな筆箱を持ってきている時
- 子ども同士の関係
- 友達同士であだ名で呼び合っている時
- 担任に友達の陰口を言う時
- 隣と机をつけようとしない時
- テスト中に隣の席との間に筆箱を立てる行為を見つけた時
- 「仲良し」女子グループ内の排除行為があった時
- ペアやグループづくりでいつも同じ子どもが余る時
- 特定の子ども同士でおしゃべりが止まらない時
- 特定の子どもが何か言うと茶化す時
- 周りにちょっかいを出すのが止まらない時
- 手を繋いでトイレへ行くのを見かけた時
- 教室環境
- 机の中がぐちゃぐちゃな時
- 床にたくさん物が落ちている時
- それでも床に落ちた物を見つけた時
- ロッカーの中が乱れている時
- ロッカーの上が乱れている時
- 掃除用具と用具箱の中が乱れている時
- 黒板の扱いが気になる時
- 掲示物のはがれや乱れがある時
- 本棚の乱れが気になる時
- 教師用の机や棚,引き出しの中身が乱れている時
- 保護者との関係
- もっと子どもを見て欲しいと求められた時
- 隣の学級と同じ対応を求められた時
- 無理のある対応を迫られた時
- 怒り役を頼まれた時
- 我が子のために行事を中止する要望をされた時
- 授業の進度の心配をされた時
- 子どもが一人でいるのを心配された時
- 特定の子どもと席を離して欲しいと要求された時
- 同僚との関係
- 学年で何でも揃えようと言われた時
- 子どもの悩みや愚痴を相談された時
- 同僚が保護者のことで悩んでいる時
- 同僚への悩みや愚痴を相談された時
- 管理職など上の立場への悩みや愚痴を相談された時
- 軽く扱われる同僚がいる時
- 同僚があだ名で呼ばれている時
- 職員室の乱れが気になる時
- COLUMN
- クラスの成長とスルーorリアクション
- 他人の重荷を背負うには余裕が大切
- あとがき
まえがき
学級担任を長年やってきて,現場でのいわゆる「荒れ」や「崩れ」をたくさん見てきました。とても真面目ないい人,熱心な人が担任をしている場合でも起きます。何事にも大らかで人間的な魅力がある人であっても,やはり起きる時には起きます。
そういったことが,どうして起こるのか。なぜ,真面目にやっている人でもそうでない人でも,荒れや崩れが生じるのか。
この問いに対するヒントを見せてくれたのが,実は教育実習生たちでした。私は千葉大学教育学部附属小学校というところで勤務しています。教員養成の場としての機能がある学校なので,年間に教育実習生をたくさん指導する機会があります。
彼らの子どもとのやりとりを見ていると,不適切な関わり方というか,「それをやってはまずい」というものがたくさん見受けられました。こちらがきちんと教えていないのだから,知らないのだし,当たり前です。つまり,私が自覚していない問題がそこに出ていたのです。自分としては経験上自然にやっていたことは,知らない人にとっては意識していないと当たり前にはできない,という事実に気付かされたのです。
実習期間というのは,1か月程度であり,決して長くはありません。つまり,信頼関係をはじめとする人間関係どうこうは,あまり強く関係しない状況でのやりとりなのです。長い期間をかけて互いのことがわかっていくから指導が通る,という思い込みがあったのですが,どうもそれだけではなさそうなのです。
子どもとの即時のやりとりの中には,「スルー」すべきところと「リアクション」をすべきところが分かれます。当たり前の例でいうと,「いじめられて悩んでいます」という相談をスルーする人はいないでしょうし,逆に授業中に突然関係ないことを言ってきたら「また後でね」とスルーする人がほとんどです。
しかし実際の現場での対応を見ていると,スルーすべきなのに関わってしまう,逆にリアクションすべきところを見逃してしまう,といった姿を数多く見つけることができました。つまり,問題の本質を見抜けていないのです。
本書のきっかけとなるヒントは実習生から受けたものであるものの,内容の多くは私が学級担任として学校に関わってきた上で実際に経験してきたものです。どんなに一生懸命な学級担任であっても,誤った対応をしてしまうことは多々あります。
本書は,特に経験の浅い若い先生にとって,大変有益なものになったと自負しております。それは本書を読むことで,一つ一つの状況への判断の迷いがなくなるからです。その判断が間違っていたのか,正しかったのか,日々打ち寄せる波のように次々と起こる各状況への判断は,経験による部分が非常に大きいのです。その答えが「間違いだった」とわかる頃には,手遅れになっているというのが現実なのですが,本書を予め読んでおくことで,その結果を高い確率で予想し,見抜くことができます。
今の学校現場は,団塊の世代が抜けた後の大きな世代交代の時期であり,今後の学校教育の成否は若い人たちにかかっています。だからこそ,若い先生方には,この教師という仕事を楽しく,長く続けて欲しいのです。学級担任の仕事は,判断の連続です。スルーorリアクションを適切に選択できるようになるだけでも,日々の仕事は何倍もスムーズに,楽しくなっていきます。
1章の理論から順に読んでいっても結構ですし,今必要な項目だけをたぐって読んでも大丈夫なように構成してあります。まずは目次を眺めて,興味のあるものを試しに読んでみることをおすすめします。
本書が,素晴らしい学級・学校を作ろうと燃えている,あるいはうまくいかずに悩んでいる皆様にとって,有意義なものになることを願っています。
著者 /松尾 英明
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