向山型算数教え方教室 2007年1月号
向山型算数に「全校」で取り組んで何が変わったか

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向山型算数教え方教室 2007年1月号向山型算数に「全校」で取り組んで何が変わったか

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2006年12月7日
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 向山型算数に「全校」で取り組んで何が変わったか
学校長が見た子どもの変容・職員の変容
「向山型算数」の威力に魅せられて
阿部 惣一
向山型算数導入が子ども・教師・学校を変えた
大森 修
学校の中心で実感した子どもの変容
子どもの変容を支えた、教師の自己変革
北澤 美千子
『全校』だからできた「相乗効果」と「波及効果」
泉 範子
授業をしてみて実感した子どもの変容
自然で落ち着いた成長が感じられた子どもたち
谷 和樹
問題提起のある指導案で、趣意説明をせよ!基礎基本は、教科書にある
甲本 卓司
子どもたちのすごさを飛び込み授業で体感した
末廣 真弓
ミニ特集 教科書チェック&ノートチェックを徹底させるには
授業中のノートチェックと単元末のノートチェックはリンクして効果を発揮する
赤石 賢司
4つのポイントと教師の信念
大関 貴之
チェックの仕方を本当に知っているか
根本 直樹
「型」を教えて「突き放す」
戸村 隆之
教科書チェックを「広める」ステップはこれだ!
勇 和代
3点セットで身につける!
千葉 真理
グラビア
いかなる道でもプロになるためには、学んだ上で“技能化する修練の場”が必要である
村田 斎
若葉印教師のための向山型算数基礎基本イラスト事典
数と量を獲得させる「かけ算九九計算尺」
小倉 郁美
向山型算数キーワード
やってごらん&しつこく
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
「疑問」をもっとつきつめよ!
向山 洋一
学年別1月教材こう授業する
1年・かたちあそび
例題指導
田口 広治
「練習問題・スキル」と教材教具
中村 智治
2年・三角形と四角形
例題指導
真鍋 陽子
「練習問題・スキル」と教材教具
川口 啓二
3年・重さ
例題指導
中桐 信哉
「練習問題・スキル」と教材教具
荒谷 卓朗
4年・およその数
例題指導
田口 慎一郎
「練習問題・スキル」と教材教具
溝端 達也
5年・百分率とグラフ
例題指導
渡辺 睦生
「練習問題・スキル」と教材教具
三浦 一心
6年・比
例題指導
山本 昇吾
「練習問題・スキル」と教材教具
南 尚美
中学難教材こう授業する
3年/平面図形への応用「2点間の距離」
伊藤 宗子
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第82回)
「向山型」だからこそ、様々な授業形態に対応できる
井上 好文
向山型算数に挑戦/論文審査 (第86回)
原理を貫く授業プランを考える
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第88回)
特別支援の目で授業を見直す(後)
木村 重夫
〜横山式さくらんぼ計算のステップ〜
向山型算数WEBサロン (第82回)
2つの量を表で表した基本型を使って問題を解く
赤石 賢司
〜単位量あたりの大きさの授業(2)〜
“若葉印”教師が向山型算数でダッシュするとき (第22回)
正しい努力の方向が分かったときに子どもの事実は生まれる
赤塚 邦彦
“問題解決学習”隣の教室の実態ルポ
問題解決学習の推進者は、特別支援の意味が分かっていない
桜井 潤
誰のための授業なのか!
平林 強
〈教室の障害児と向山型算数〉特に気になる『あの子』への向山型アプローチ
「先生、こんなの簡単!」その笑顔に出逢うために
辻中 直子
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第88回)
低学年
辻 和彦
中学年
前川 淳
高学年
鶴田 博史
ビギナー専科=向山型算数ココが授業の勘所
1年/うっとりするノートを作る
苑田 知久
2年/間違えさせることで、知的に考える授業になる
小林 弓子
3年/点ではなく線で指導をせよ
小井戸 政宏
4年/できない原因の全ては、我流授業だった
藤田 明子
5年/指示を徹底させるには、微細技術を使う
佐々木 真吾
6年/子どもの心に届くほめ言葉のポイント
田中 直行
向山型算数セミナー
4月の算数授業びらきは向山型算数でバッチリ!!
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
算数の苦手な子を救えるのは向山型だけ!
瀧日 幸雄
3つの「時間」を意識した
郡司 崇人
授業を変えた、百玉そろばん!
木下 翔太
算数の時間が楽しくなった
沼田 里美
これだ!と思った向山型算数
弘瀬 利英
あの子を見ることができた
鬼武 優一郎
算数の授業が楽しくなった
西野 俊太
論文ランキング
10月号
木村 重夫
実物ノートと指導のポイント
やる気になる、勉強しやすい環境を整える
手塚 美和
読者のページ
全国各地で深まる向山型研修
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
赤石 賢司
向山型算数に挑戦/指定教材 (第88回)
向山 洋一

巻頭論文

算数授業へのこだわり

「疑問」をもっとつきつめよ!

向山 洋一


 「挑戦論文」にたくさんの応募があった。今月の挑戦は,審査だけにするのはもったいない内容なので巻頭で取り上げる。手紙もたくさん入っている。読むのが,楽しみだ。

 産休から復帰した人,特別支援の子を担任して向山型算数の温かさが分かった人,たった1人で学生サークルをやり帰途かけつけた教師と出会い,2人で研究会をした大学生。

 全国には,人それぞれのドラマがある。「向山先生,ありがとうございます。10年目にして教師に合格しました」という便りがあった。TOSSの先生方のおかげだと感謝のことばが書かれていた。

 苦節十年。よくぞ,がんばったと思う。

 この先生の模擬授業を見たことがあるが,可能性の大きい立派な資質をもった人だった。

 それにしても10年。さぞ,ご両親はうれしかっただろうと想像したとたん,胸が熱くなってきた。

 新しく赴任してくる教師は,教育界の大切な宝だ。一人前の教師に育てるのも,先輩教師の大切な仕事である。

 福井の上木先生。次のようにあった。


 この教科書の1番の問題をパッと見て,何が言いたいのかがよく分からなかった。

 長方形と正方形の面積を比べるのに,複雑に線が入っている。どうして,こんなに複雑に分ける必要があるのか?違和感があった。

 そして,最後の練習問題。なぜ,1p2を教えたばかりなのにマスの半分の形の問題をさせるのか?

 この教科書を使って授業するのは,非常にやりにくいと感じた。


 このように,「批判的に考える」のは,大切なことだ。学問研究の進歩は「批判」を通してもたらされる。

 ただし,「批判のため」の批判はダメだ。実践のための「批判」でなければならない。

 そのために,「子どもの事実」が大切にされる必要がある。

 「子どもの事実」こそ,教育研究の「証拠」だ。

 また,「批判」のときに,次のことを考えなくてはならない。


(1)その批判は,正当なのか

(2)それとも,その批判は,自分の未熟さ,勘違いによるものなのか


 自分が正当であった場合,次の2つを考えなければならない。


(1)それは,「原理」が間違っているのか,あるいは不十分なのか

(2)それとも,「原理」は正しいが,「指導展開の具体的方法」が不十分であるのか


 上木先生は,せっかくたどりついた自分の考えを,じっくりと振り返ることが必要だった。


 例えば,応募者の中に,次のような授業開始があった。

 千葉の福地先生である。


0.どちらが大きいかを予想させる。

(発問)@とAどちらが大きいか予想します。@だと思う人?Aだと思う人。

※広さのくらべ方を考える必要感を持たせる。


 山口の桑原先生も次のように書いている。


発問:@とAはどちらが広いですか。

指示:@だと思う人?(手を挙げなさい)A?

発問:これ比べる方法がいくつかあるのですが,どんな方法がありますか。


 一方,次のような授業の入り方もある。東京の乙津先生である。


1辺が1pの正方形の面積を1平方センチメートルという定義を知り,四角形の面積を求める授業の流れになる。最後に@で単位量の1平方センチメートルの正方形ではしきつめられない形の面積を求める。ここが大きくジャンプしていると考える。


 それ以外に,教科書の逐一指導型の導入もある。

 それぞれに意味はある。しかし,どれが望ましいのか。私の実践で,1年生算数の授業が参考になる。


 三日して算数の時間に「長さくらべ」を授業した。私は一メートル近い竹の棒二本を十字にして,子供たちに示した。どちらが長いかどうしたら分かるかを問うたのである。「両方あわせればわかる」と子供たちは言ったが,「この竹は動かせないんだよ」と説明した。予想させると,たてが長いが八名,横が長いが十二名,同じ長さが十二名であった。「どうしようか」と聞くと「人数が多い方」と「調べる」という両方が出た。そして,手をあげさせたら「調べる」という意見が三十六名中三十五名いたのである。「学問の社会では多数決はなじまない」という原理を一年生は一年生なりに納得したのである。


 調べる方法について五通りの意見が出された。大竹君が「見て,大体の長さで決めればいい」と言った。私は「なるほど,生活の中ではこうすることが多いな」と思って聞いていた。今村君が「短い棒で,数えていって,何本分あるか測ればいい」といった。指の巾でいくつ分と同じ発想である。高山君が,「長いものさしを用意して測ればいい」と言った。坂田君が「手を広げて,くらべればいい」と発表した。太田さんが「棒をたてて床につけ,自分の背の高さのどこまでくるか調べればいい」と言った。子供たちは「なるほど」と,ものすごく納得していた。

 かくして,それぞれの方法で調査することになったのである。


 1年生でも,何通りもの意見が出る「直感」がある。

 「直接比較」も「間接比較」も意識している。個別単位も普遍単位も出てくる。 このような,「巾」をもった授業が望ましい。


 原理について,考えている人もいた。 福岡の石原先生である。

教科書の構成を見る。

 11月号の論文審査を読みました。

 1992年10月22日の面積第一時のツーウェイが我が家にもあり,読みました。当時も読んでいたのですが,今読むと,すごい発見の連続です。

 逐一指導からの脱却と同時に,向山型算数のダイナミックさが詰まっていました。

 ちょうど今月号の論文審査も,面積という点では同じです。

 逐一指導からの脱却。ダイナミックな向山型算数を目ざして考えてみました。

 『教室ツーウェイ』で,すでに15年前に,似たことを述べていたのである。

 横浜の前田先生も,原理からとらえている。

 面積の導入

 長さの時にも同じことが考えられたが,面積の導入には,直接比較,間接比較,任意単位,普遍単位と段階を追って指導していかなければならない。教科書では,導入でシートの広さを直接比較している。これは重ねればすぐにわかる。次に,テーブルクロスを間接比較している。

 このように考えると,教科書には論理があったことになる。

 新潟の本間先生は,次のように原理を考えた。


【授業の流れ】

〈比較の方法〉

@直感(目で見て比べる)

 *クラスの誰でもできるところから導入

A直接比較 *既習を生かす(1年:長さ)

B普遍単位による比較

 こちらの方が実践的だ。「直感」は,現場教師の実感だろう。

 長野の宮崎先生は,次のように原理を考えた。


 今回の指定教材は,同じ部分にあたる所を2001年向山型算数セミナーIN東京で,福島の大関貴之氏が模擬授業をし,向山氏が介入している。私も,このセミナーには参加していた。定義の扱いが,非常に印象に残っている。が,改めて調べ直してみると自分の中で抜け落ちていることがたくさんあった。

 まとめの部分「長方形や正方形の広さは,1辺が1pの正方形が何こならぶかで表すことができます」と「広さのことを,面積といいます」を全員で読ませる。


 広さとは何ですか。 (面積です)

 面積とは何ですか。 (広さです)


 これは,授業の後半の部分である。

 つまり,この授業では,具体的な事例を通して,様々な比較をさせ,やがて普遍単位としての「p2」の学習に入っていくのである。

 後半は,それなりにできるだろうが,前半は,人によって大きく異なってくる。

 そこに力量が表れる。

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