- 特集 “算数授業力”この「自己診断票」で飛躍しよう
- 1 授業開始のつかみ
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- 2 向山型は教えない
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- 3 特別支援の対応力
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- 4 赤鉛筆指導の原理原則
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- 5 うっとりするノート指導
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- 6 空白禁止の八等分板書
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- 7 あかねこ計算スキルの使い方
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- ミニ特集 今までの「1年算数セット」ココが問題だ!
- 名前書き・出し入れが大変!1年算数セット
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- すべての子どもにとって操作しやすいか
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- ブロックが刺激物になったA君
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- 本当に使える物だけを用意したい
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- 無駄が多すぎる算数セット
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- ブロックは、問題だらけ!
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- グラビア
- 授業とはみんなができるようになった事実を作っていくもの
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- 若葉印教師のための向山型算数基礎基本イラスト事典
- 本当の個別指導
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- 向山型算数キーワード
- 我流チェック
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- 巻頭論文 算数授業へのこだわり
- 論争は上品な言葉で、具体的事実にあくまでこだわって…
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- 学年別12月教材こう授業する
- 1年・くり下がりのあるひきざん
- 例題指導
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- 「練習問題・スキル」と教材教具
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- 2年・かけ算の応用問題・文章題
- 例題指導
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- 「練習問題・スキル」と教材教具
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- 3年・1けたをかけるかけ算の筆算
- 例題指導
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- 「練習問題・スキル」と教材教具
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- 4年・角の大きさ
- 例題指導
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- 「練習問題・スキル」と教材教具
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- 5年・分数と小数
- 例題指導
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- 「練習問題・スキル」と教材教具
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- 6年・体積
- 例題指導
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- 「練習問題・スキル」と教材教具
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- 中学難教材こう授業する
- 2年/1次関数のグラフの利用
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- 中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第81回)
- 難教材はいくつかの既習事項にシンプルに分解する
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- 向山型算数に挑戦/論文審査 (第85回)
- 基本概念をふまえて
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- 向山型算数実力急増講座 (第87回)
- 特別支援の目で授業を見直す(前)
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- 〜新潟中野山小1年公開授業の学び〜
- 向山型算数WEBサロン (第81回)
- 2つの量を表で表した基本型を使って問題を解く
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- 〜単位量あたりの大きさの授業(1)〜
- “若葉印”教師が向山型算数でダッシュするとき (第21回)
- 自然教室の心配事は、分数の約分を忘れることです
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- “問題解決学習”隣の教室の実態ルポ
- 「宿題をしないのに、学力がつくわけないのよ」
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- 子どもの事実を見ない問題解決学習
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- 〈教室の障害児と向山型算数〉特に気になる『あの子』への向山型アプローチ
- 個別指導を嫌がる子に有効な向山型算数
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- もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第87回)
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- ビギナー専科=向山型算数ココが授業の勘所
- 1年/「ノート指導」に潜む我流と戦う!
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- 2年/練習問題の○つけは、本当に3問目だけ
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- 3年/「待たない」から全員が授業に集中する
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- 4年/「かすかな濁り」を追求せよ!
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- 5年/あかねこ計算スキルは、最良の指導書である
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- 6年/本当に「授業の始まり」から「本題に突入」しているか?
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- 向山型算数セミナー
- 2007年算数セミナーの大綱が決まる
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- 腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
- 中途半端が一番駄目だ
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巻頭論文
算数授業へのこだわり
論争は上品な言葉で,具体的事実にあくまでこだわって…
向山洋一
教育実践,教育研究は,「1つの方法・事実」の主張である。
そこには「方法」がある。
そこには「事実」がある。
そこには「主張」がある。
もちろん「他の方法,他の事実,他の主張」もある。
いくつもの主張があれば,「どれが正しいか」「どれが相対的によいか」「どの条件のもとでは,どれがよいか」などが問題になる。
それぞれの主張が比較される。
それぞれの主張が分析される。
従って「論争」がもたらされる。
「実践」「研究」に,論争はつきものである。
論争は学問研究の骨格だ。
論争なしに,学問研究の発展はない。
だから,「研究」の場では,「学問」の場では,自由が保障される。
それを「事実」に基づき,比較,検討される。
「追試」も,重要な学問研究のパーツである。
国立大学の数学教育の教官の中には,2,3人,「向山の本を読むな」という人がいるが,それは,信じられないくらいレベルの低いことなのだ。
「TOSSを止めろ」と強要する数学教育の大学人もいる。「思想信条,学問研究の自由」を大学人がふみにじっている。
私が聞いたのは,「算数の問題解決学習を推進している大学教官」のみである。
さすがに,他の教科ではいない。
内閣府や文科省前大臣との懇談でこの話をすると,「国立大学に,本当にそんな人がいるのですか,どこの大学です」と聞かれた。
大学名,教官名は黙っていたが,あまりにもひどいのであれば,名指しで批判をしたいと思っている。長野方面や岡山方面や愛媛方面である。
学問研究の世界では論争はつきものだ。
多くの人から疑いの目で見られ,検証がされる。こうした「試験」を通過して,初めて学問の成果は,多くの人々のものになっていく。
だから,論争を避けてはならない。
ただし,論争にとって,大切な心得がある。
ケンカになっては,いけないということだ。
空中戦になってはいけないということだ。
そのための2か条。
(1)批判,論争の言葉は,あくまで上品に。
(2)論争は,具体的な上にも具体的に。
私は,新卒のときの実践(3年,4年,5年,6年)が,全国教研の東京代表になった。
一部の教師からは,注目されていた。
高校1年生から青春時代の10年間を学生運動のリーダーですごしていたから,論も弁も人よりかは立った。
1000名の人の前で,30分1時間を演説することが,日常的だった。
そして,私の発言になると,会場はシーンとなった。
だから,生意気でもあったと思う。
酒の席で,やり手の先輩教師から,批判もされた。
批判は,同じような内容だった。
昔,若いときに自分も,その方法をやっていた。
自分もやったけど,それでは駄目だった。今は,新しい方法がある。
私は,このように言われると,必ず話を具体的にした。
昔やった方法が載っている「研究紀要」や「論文」をぜひ教えてください。勉強します。
相手は必ず,口を濁した。いや,どの紀要に書いたかなあ…?
私は,しつこく上品に言う。
先生,どの学校に勤務されていたときのことですか。学校名が分かれば,区の教育センターに行って探します。
相手は,ますます口を濁していった。
結局,言うことができなかった。
また,次のようにも言った。
昔のやり方と今のやり方を比較して,今のやり方がいいということになったのですよね。
それが書いてある論文や紀要をぜひ教えてください。
これにも,口を濁していた。言うことができなかったのだ。
このように,論争は,「具体的」な上にも「具体的」である必要がある。
TOSSのSNSに次の報告があった。
■今日,算研のグループ討議会があった。そこでTOSSの批判を聞いた。
教育委員会のある指導主事は次のように言った。「TOSSは30〜40年前の指導法だ。時代に合っていない」
また,私の勤務校の教務主任は次のように言った。「TOSSは個への対応がない。『線をひきなさい』『○ページを開けなさい』と言われてもできない子がいる。そんな子どもへの対応がない」
まず指導主事の発言について。
「30〜40年前の指導法である」について,私は30〜40年前の指導法をよく知らない。もしかしたら実際にそうなのかもしれないが,そんなことは関係ないと思う。
「時代に合っていない」については,その指導主事が時代に遅れているのだと思った。TOSSこそが時代に乗っているのだ。
次に教務主任の発言について。
「個への対応がない」と言うが,果たしてそうであろうか。例えば,「線をひきなさい」と指示する。「○○君ができないだろうな」という予測は立つ。そういうときは,そっとそばに行って線をひくところを指で押さえてやるといった対応。
教科書が開けない場合も同様,その子のそばにそっと行って,教師が教科書を開けてあげるといった対応。
教務主任は,TOSS教師のそういった対応を見逃しているのだと思う。
私なら,次のように質問する。
TOSSの算数指導法は,A教科書指導とB難問選択システムの2つから,なっています。両方とも30〜40年前の指導法なのですね。
これは,Aの教科書指導法ということになるだろう。難問選択システムは向山が創った指導法であり,昔はなかった。
教科書指導法は,3つのパーツから成り立っています。
A例題指導 B練習問題指導 Cスキル指導 このすべてが,30年昔と同じだと言うのですね。
少なくても,Cは違う。昔はドリルであった。学校教育に「算数スキル」を持ち込んだのは,向山であった。
しかも,毎時間の授業に位置づけたのも,向山だった。昔はなかったのである。
さて,例題指導です。
問題文を読んで,ノートに式を書かせます。できない子には,教科書からうつさせます。
この指導法は,30〜40年前の実践記録にありませんでした。いくら探してもありません。
実はこの指導は,特別支援の子を意識しているのです。30年昔,そのような意識はなかったと私は思っています。
「同じだ」というのであればぜひ読んで勉強します。
どの本を読めばいいでしょうか。
どの学校の紀要を見ればいいでしょうか。ぜひ教えてください。
これは,答えられない。
同じではないからだ。
まして,リズム,テンポ,ノート指導,百玉そろばんなどの意識はなかった。スマートボードももちろんなかった。授業が違うのである。1つ1つを,具体的に取り上げていくのである。
次に,練習問題です。
私のクラスでは,33人全員の子が,教科書のすべての問題をノートに書いています。
これは,授業時間だけでやっています。
このような指導が30年昔のどこにあったのか,何の本を読めばいいのか教えてください。
また,30年,40年昔の指導法なら現在55歳以上の先生の多くは,やっていたことになりますね。新潟の大森校長,熊本の吉永校長,東京の舘野校長先生などに聞いても「似ているようだが,全く違う」と言ってます。
先生のご発言のように一般化できないのではないですか?
このように上品に,具体的に論争していくのである。論争は楽しいものである。
事実がある方,真実がある方が,最後は勝つからである。
途中,負けたとしても,それは「弱い自分の修業」なのだと思えばいいのである。そのことをテコにもっと勉強していくのだ。
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- 明治図書