向山型算数教え方教室 2006年8月号
“子どものミス”を発見する技量&システムづくり

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向山型算数教え方教室 2006年8月号“子どものミス”を発見する技量&システムづくり

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2006年7月7日
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 子どものミスを発見する技量&システムづくり
当たり前だと思っていたことが、間違い 教えてくれるのは子どもの事実
甲本 卓司
予測して動く、目を配る、模擬授業をし続ける
水野 正司
木村重夫氏の追試 “子どもの誤答に学ぶ”
川原 奈津子
考え方までさかのぼって間違いを正す
馬場 慶典
教師修業の原点となったY君の「つまずき」
杉山 裕之
発見の機会が何度もあるから、初心者でも子どものミスに対応できる
齋藤 一子
「確認の原則」を意識して、ミスを防ぐ
矢野 晴美
ミニ特集 かけ算九九ができない“この子”への手だて
かけ算九九計算尺でドラマが起こった
迫田 一弘
倍数・約数にもかけ算九九表
松本 俊樹
「かけ算九九の暗記」は授業中に勝負する
上木 朋子
百玉そろばんで数の量感をとらえさせる
脇 規洋
あきずに何度も練習できる教材がAを合格させた
堤 緑
九九表・百玉・学習ゲームを活用する
山下 敏彦
グラビア
向山式を体感する・学習とは丁寧に丁寧に!
村田 斎
若葉印教師のための向山型算数基礎基本イラスト事典
子どもが集中できる環境づくり
小倉 郁美
向山型算数キーワード
つまずき・まちがい・できない
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
教師力を向上させるのは実用的実践、計画的行為である
向山 洋一
学年別教材教具こう使いこなす
1年
教師用百玉そろばんをこう使いこなす
小林 篤史
子ども百玉そろばんをこう使いこなす
楢原 八恵美
2年
かけ算九九尺を全体指導でこう使いこなす
岩本 友子
かけ算九九尺を個別指導でこう使いこなす
細羽 朋恵
3年
はかりを授業でこう使いこなす
河野 健一
そろばんを授業でこう使いこなす
佐藤 志保
4年
コンパスを授業でこう使いこなす
石富 敦子
分度器を授業でこう使いこなす
川西 良治
5年
電卓を授業でこう使いこなす
橋爪 里佳
スマートボードを授業でこう使いこなす
石原 卓
6年
立体模型を授業でこう使いこなす
上川 晃
スマートボードを授業でこう使いこなす
松本 隆行
中学4色ボールペンを授業でこう使いこなす
3年/中点連結定理を使った証明
越智 鈴穂
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第77回)
「できる生徒」も同じ時間熱中して取り組んでいるか
井上 好文
向山型算数に挑戦/論文審査 (第81回)
キーワードをどう授業するのか
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第83回)
震える事実に出会った学生からの報告
木村 重夫
向山型算数WEBサロン (第77回)
1時間の授業での到達度を明確にすると教科書の軽重も明確になる
赤石 賢司
“若葉印”教師が向山型算数でダッシュするとき (第17回)
真の「向山型算数」を求めて修業していく
松本 一樹
“問題解決学習”隣の教室の実態ルポ
初めから教科書を使えば混乱はなかった!
藤川 功一
問題解決学習で学力は向上するのか
大倉 章大
〈教室の障害児と向山型算数〉特に気になる『あの子』への向山型アプローチ
ほとんど授業を受けなかったA君が、毎時間教室で授業を受けるように
藤井 優作
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第83回)
低学年
小井戸 政宏
中学年
森本 雄一郎
高学年
勝田 秀樹
ビギナー専科=向山型算数ココが授業の勘所
1年/肝に銘じた全員確認と繰り返し
浅野 あけみ
2年/1人残らず授業に引き込む
渡辺 佳起
3年/「先生、これ私の宝物」
河中 淑恵(仮名)
4年/「わり算のアルゴリズム」をたたきこめ
山川 直樹
5年/私が陥る我流ワースト2
西田 裕之
6年/本を読んだだけでは分からない ライブで学ぶ
横崎 邦子
向山型算数セミナー
会場を大きくしてお待ちしております
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
授業技量検定で弱点を克服する
三浦 広志
少人数でも荒れた私の授業
大場 絵美
昔と今の自分を思い出させてくれたポケットアルバム
花田 伸一
できない子をできるようにさせる
青木 英明
「写すのも……」に救われた私
水田 孝一
うっとりする美しいノート
安部 克則
笑顔で手を突きあげたA君
本田 和明
論文ランキング
5月号
木村 重夫
実物ノートと指導のポイント
準備をし、イメージをもたせ、できるようにする
飯塚 美代子
読者のページ
伴氏の分析で見えた向山実践の凄さ
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
赤石 賢司
向山型算数に挑戦/指定教材 (第83回)
向山 洋一

巻頭論文

算数授業へのこだわり

教師力を向上させるのは実用的実践,計画的行為である

向山洋一


 今年のTOSSデーが終了した。全国760会場,参加2万8千人近く。昨年に比べて大幅なアップである。全国760会場ということは,760人の会場責任者がいたということになる。

 この経験は貴重だ。

 「学校行事の責任者の仕事なんか,簡単にできるようになるわよね」これは,師尾先生の口グセである。

 学校行事の責任者は,学校の仕事としては重いものの1つだ。それが,「こんなの簡単」と思えるようになるのである。

 さらに,「5分間の講座の担当」は,「学校の研究授業20回分」くらいに相当する。

 TOSSデーで,「5分間の講座」を担当した人は,そのことを実感しているだろう。学校での「研究授業」など,何でもなくなるのである。「わずか5分間の講座」であるが,本や論文を何十も読み,細かい動作の1つ1つまで確認をし,何十回も練習をしたのである。

 今までの教師生活では体験しなかった,初めての緊張した日々だった。

 その体験が,教師の技量を急速に向上させたのである。

 案内状を配ること,友人・知人を誘うことの1回1回に大きなプレッシャーがあったはずだ。

 それは,自分の内なる弱さとの対面だった。 自分の弱さから逃げることなく,小さな一歩を前に踏み出した人が,人間としてもきたえられ,強くなり,教師の深さを身につけたのである。

 サッカーでも,テニスでも,踊りでも,書道でも,英会話でも,ピアノでも「自分をきたえる」ことなしに上達はない。「試合」「発表会」「展覧会」などの,真剣な勝負の場を逃げていては上達しない。

 前へ進む人だけに幸運の神様はほほえんでくれるのである。

 40代,50代になって教え子たちの反乱に遭うのがいやだったら,若いうちから修業しておくことだ。40代,50代のベテラン教師になって,どうしようもない学級にしてしまっている人がいる。

 そういう教師に限って「自分の責任」と考えずに「子どもの責任」にするから,救いようがない。

 次の学年になっても,その次の学年でも,ひどい学級を作ってしまうのである。

 若い頃から,教師修業を積んだ人は,幸せなクラスを作れることが多い。

 もちろん,すべてがうまくいくとは限らない。

 神様は,ちゃんと「新しい困難,新しい問題」を用意してくれる。

 しかし,それは必ず克服できる問題なのだ。これまでの修業から得た知恵が,次へと導いてくれる。

 向山だって,その年その年の山ほどの問題に出会ってきたのである。


 愛媛の上杉先生から便りをいただいた。

■愛媛TOSSデーが終了しました。TOSS大洲は今年も5会場で開催し,179名の参加をいただきました。今回は,ほとんど,地元の方に参加していただきましたので,十分満足できる結果が出たと考えております。

 今年は複数会場に参加される方がたくさんいらっしゃり,5会場すべてに参加された方もいらっしゃいました。その方は,教職歴25年のベテラン女教師でした。

 そして,本日(5月27日)TOSSデー後,初例会を開催しました。拡大例会として案内したところ5名の方に参加していただきました。先のベテラン女教師の方も参加されました。皆さんの感想は以下の通りでした。

 「テンポがよくて,びっくりした」

 「授業を受けて,子どもの気持ちがよく分かった」

 「細かいところまで,指摘され,このようにすればよいという意見が出されて勉強になった」

 「みなさんが,楽しそうに研修をしているのでいい雰囲気だった」

 これからも,拡大例会の開催,サークル通信の発行,五色百人一首大会のお手伝い依頼などいろいろと働きかけます。

 また,今回は愛媛県のTOSSデー責任者を仰せつかりました。こちらの方は,参加者が前回よりもかなり減少しました。TOSS愛媛例会のおりに,第4回TOSSデーの進め方や地上戦のやり方をお伝えしたつもりでしたが,うまくいきませんでした。

 参加人数が減少したサークルは,地上戦の弱さが出ました。ノウハウをお伝えするだけでは,うまく進められないのだなあと思いました。TOSSデー後,各サークルの地力をつける必要があると思いました。

 県内を動かすというのは難しいなと,勉強になった今回のTOSSデーでした。

 全体としては前進したが,部分的によく見るとうまくいかなかった点もある。

 教室での実践も同じである。

 前進,停滞,後退を,1つ1つの事実を,正確にとらえるべきなのだ。

 それぞれに,必ず「原因」がある。「結果」は「原因」から,もたらされる。「なぜ」なのか,「仮説」を出さねばならない。「仮説」を「実行」してみる。「仮説」が正しければ,「前進」するし,「仮説」が間違いならば,「停滞」する。

 そのとき,「次の仮説」を考え,「実行」するのである。

 「1つのやり方」ではダメだ。「二策」「三策」「四策」「五策」とやっていくのだ。

 どこまでやるのか。

 成功するまでやるのである。

 これが「成功する法則」なのだ。

 いかなる道であれ,成功した人は,必ずこのやり方をしてきたのである。TOSSデーは,「成功哲学」「成功法則」を学ぶ,またとないチャンスなのである。

 もちろん「自分の人生」「教室の実践」にそのまま適用できる。

 TOSSデー参加者には,粗く3つのタイプがあった。

 第一は,次々と多くの会場へ来られた教師である。

 多くを学びたいのである。学んでよかったと思っているのである。だから「県内の会場」を調整して,1つ1つの会場の特徴をはっきりさせることが必要だった。

 A会場もB会場も「何でもあります」ではいけないのだ。

 A会場は,「算数のスキル,ワークの正しいユースウェア」,B会場は,「感動のドラマを生む跳び箱,なわとび,逆上がり指導」というような特徴を出すことが必要だった。

 第二は,自分の友人,周りの人を誘って参加してくれた教師である。

 この人は,「すぐれた技術・方法」を,多くの人に紹介したいのだ。

 TOSSの教師と同じ心情をもっている。

 その行動に深く感謝しなければならない。

 サークルへのお誘いも必要だ。

 第三は,一度は来たけれど,次の年は来なかった人だ。結構いると思う。「誘い方の工夫」は,もちろん大切だ。近くなったら,ハガキを出すくらいの行動は必要だっただろう。

 しかし,本質は,そこにはない。

 「一度出て,TOSSの指導法は分かった」と思い込んでしまったのである。

 ちょっと見ただけで,全部が分かったように感じてしまったのである。その人たちには,「技能,技術,知識」の違いが,一目ではっきり分かるパンフレットが必要だったのだ。

 例えば,次の図。


(図省略)


 このようなステップがあり,その入り口がTOSSデーだと分かれば,次も出たくなる。

 あるいは,「国語授業力一覧表」みたいにして「何十もの目次」を作り,「今年はこれをやりました」とすれば,「来年も来よう」となったと思う。

 さて,「TOSSデー」の後は『算数が出来ない子100人を出来るようにした教師の物語』(明治図書)の普及である。

 向山型算数しかできなかった珠玉のドラマ集だ。TOSS中央事務局は,第一は「全国すべての地方新聞社」,第二は「全国すべての教育長先生」,第三は「全国のPTA,ロータリー,ライオンズ,JC,青少年問題協議会」などに寄贈しようと準備中である。

 この本を大々的に広げよう。

 感動のドラマを1人でも多くの人に読んでもらおう。

 それが,日本の子どもを救い,基礎学力を保証する近道となる。

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