向山型算数教え方教室 2005年5月号
算数授業構成の基本「説明しない・教えない」指導法

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向山型算数教え方教室 2005年5月号算数授業構成の基本「説明しない・教えない」指導法

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2005年4月7日
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 算数授業構成の基本「説明しない・教えない」指導法
「“教え”ずに“同意”する」指導法が革命的効果をもたらす
伴 一孝
細分化してやることで、説明しなくてもよい授業に変わる
小林 幸雄
教師が間違えることと百玉そろばんの1年3学期の実践
小松 裕明
「終わった人は待ってなさい」は説明しない授業を作る
正木 恵子
「点の指導」ではなく「線の指導」
根本 直樹
「説明」とは「言葉に依存した情報伝達」のことである
八和田 清秀
作業指示・発問で授業を進め、基本型を繰り返す!
木村 孝康
ミニ特集 授業参観で保護者を納得させる最先端の向山型算数
最先端の授業、それは向山型算数の原点の授業である
松崎 力
テンポのよさだけでは信頼を得られない
塩苅 有紀
最初の授業参観は、楽しく!楽しく!
小路 健太郎
スマートボードの活用で保護者を安心させる
白井 朱美
親子で唱える楽しい筆算
今井 美与子
スマートボードの機能を使って、さらに分かりやすい教科書通りの授業
門 貴幸
グラビア
算数指導の重要ポイント
村田 斎
若葉印教師のための向山型算数基礎基本イラスト事典
授業の始まり
小倉 郁美
向山型算数キーワード
逐一(ちくいち)指導
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
「問題文を読む」とはいかなる授業行為なのか
向山 洋一
学年別5月教材こう授業する
1年
なんばんめ
神村 昭子
いくつといくつ
松村 雪子
2年
あたらしい計算のしかたをかんがえよう
白瀬 嗣大
たし算のしかたをかんがえよう
高橋 一行
3年
わり算
末益 紀子
わり算
岩岸 節子
4年
表や図を使って
赤塚 邦彦
わり算の筆算(1)
中村 智治
5年
かけ算の筆算
河田 真介
小数の計算の仕方を考えよう
石原 卓
6年
整数の性質を調べよう
長谷川 敬志
分数のたし算とひき算を考えよう
岩田 史朗
中学難教材こう授業する
3年/文字を使った説明
橋 薫
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第62回)
サークル模擬授業で、向山洋一氏「汽車ぽっぽ」を追試する
井上 好文
向山型算数に挑戦/論文審査 (第66回)
何気ないイラストを多くの人は見逃している
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第68回)
公開授業で問われる授業力と子どもの学力(下)
木村 重夫
向山型算数WEBサロン (第62回)
子どもへの対応力で授業を成功させる
赤石 賢司
“若葉印”教師が向山型算数でダッシュするとき (第2回)
テンポよくリズムよく、子どもたちを集中させていく授業が向山型算数である
有村 春彦
“問題解決学習”隣の教室の実態ルポ
これからも、学校ぐるみの『犯罪的教育』と闘う
廣野 毅
問題解決はAS児をスポイルする
高元 忠
〈教室の障害児と向山型算数〉特に気になる『あの子』への向山型アプローチ
授業開始で引きずり込み、キーワードでやる気を維持する
小野 隆行
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第68回)
低学年
保土田 佳敬
中学年
津下 哲也
高学年
横崎 剛志
【学年別】『TOSS算数ワーク』活用事例集 (第2回)
1年/指示はいらない配ればシーンとなる
柴田 泰士
2年/全員熱中!「またやりたい!」
荒谷 卓朗
3年/『TOSS算数ワーク』は本物の教材であると実感した
梶田 俊彦
4年/まず名前を書くことが大切
池町 徹也
5年/もっとコール、142点に震撼
塩澤 巻浩
6年/楽しみながら実力をつけるワーク
大前 暁政
向山型算数セミナー
残り席もわずか、キャンセル待ち受付も間もなくです
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
向山型算数を知ったからもう罪は重ねない!
泉 範子
できない生徒を思って話す
相神 淳也
算数楽しいね!子どもたちの笑顔
金城 貴裕
教師にも学びの多い知的な算数
下出 和子
できる喜びを与える
坪谷 賢士
「個別評定」のすごさ
大島 佳代
教師が変われば、子どもも変わる!!
南 尚美
論文ランキング
2月号
木村 重夫
実物ノートと指導のポイント
ノートスキルは転入生のやる気を引き出す
朝長 唯
読者のページ
教師の生き方が変わった瞬間
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
赤石 賢司
向山型算数に挑戦/指定教材 (第68回)
向山 洋一

巻頭論文

算数授業へのこだわり

「問題文を読む」とはいかなる授業行為なのか

向山洋一


 授業の違いは,「一見小さなこと」の中にあらわれるものなのだ。

 「神は底部に宿り給う」のである。

 3月号の「挑戦問題」は,「単位量あたり」の単元であり,旅行の部屋割りの混み具合についてだった。

 応募論文は多数あり,常連もあり,水準は向上していた。

 今回は,「授業開始」を取り上げて論じてみよう。

 できたら3月号の裏表紙を見てほしい。

 単元名のところに,旅行の絵があり,部屋と人数のイラスト図がある。

 「問題文」があり,「表」がある。

 授業開始では,「イラスト図」「問題文」「表」を,意図的に扱わねばならない。

 しかし,ほとんどの人は,そんな意識はない。「当たり前のこと」と思っている。「神は底部に宿り給う」ことの,本当の意味を理解していない。

 授業開始をどのように扱うのか。応募論文から紹介しよう。

 愛知の渡辺先生。

 実にシンプル。「範読」の2文字で終了。

 でも,問題なのは,「範読」の中身なのである。

 渡辺先生は,「教師が読んで終了」なのだろう。あまりにもおそまつ。

 長野の宮崎先生。

 こちらの方がよい。

 「タイトル」も読んでいる。

 「子どもにも読ませている」からだ。

 しかし,「一方調子の読み」しか見えてこない。

 「読み方」の「方」こそが問題なのだ。

 新潟の本間先生。

 タイトル,葉っぱマークは教師が読む。子どもにも問題文を読ませる。

 「A室,B室,C室を上から見た絵があるね。指で押さえなさい。」

1.「もし,6年教室で全校児童が勉強するこ

とになったら?!」(無理!窮屈すぎる。)

  「もし,体育館が6年生教室だったら?!」

(ゆったりだ。)(ひろすぎるよ。)

2.今日は,どちらがこんでいるか,こみ具合

 葉っぱマーク 範読。

 家の中には,3つの部屋の図があります。

指示1 C室を右手で隠してごらん。

 隣と確認。

 読み方は,宮崎先生とほぼ同じだ。「読み方」の「方」についての意識がない。

 導入に対して,「教室,体育館の例」をあげている。分かりやすい例えだ。

 抜群の導入である。とてもよい。

 残念ながら,「読み方」の「方」がない。

 もう,みんな,ほとんど同じだ。

 東京の深野先生。

 福岡の末冨先生。

 「葉っぱ問題を読む」「問題文を読む」「範読する」と書いた人は,問題を読むには様々の「読み方がある」ことを意識してないのである。

 次に問題文を示すので,まず読んでほしい。

(啓林館『算数6年上』P.64)

 この問題文の上に,部屋割りのイラスト図がある。

 「イラスト図」と「問題文」と「表」をどのような「読み方」をするのかがポイントなのだ。

 さっき自分が読んだ方法と異なる方法を2通り考えてほしい。

 子どもが前にいるつもりで,「3つの方法」を読んでほしい。

 「問題文を読む」というのは,こうした作業が必要なのである。

 たくさんの応募の中から「読み方」を実践した指導案が3つあった。

 岩手県の皆川先生。

 皆川先生は,全文を読み通してはいない。途中で止めている。

 表を確認して,表の読み方を教えている。「範読」「問題を読む」より,はるかに,高度な指導である。

 皆川先生は,「どの部屋がこんでいるかくらべましょう」で区切ったが,私は違った。

 私は,その前で区切ったのである。

 皆川先生と同じように,表を示した。私は表を自分で解説した。

 読み方まで教えると,本題からずれるとを調べる学習をします。教科書64ページ。E単位量あたり

3.(口絵)町内の子ども会で,宿に泊まります。

〈葉っぱマークを教師が読み,その後児童も読む。〉

1.「E単位量あたり」です。言ってごらんなさい。さんはい。

2.問題文を教師が読む。「のりこさんたちは……どの部屋がこんでいるかくらべましょう。」

3.表を指さしなさい。隣と確認。

4.このように読みます。「A室の畳の数は10枚,子どもの数は6人です。」さんはい。(A室の……6人です。)そうです。B室も読みましょう。さんはい。(B室の……5人です。)その調子。C室,はい。(C室の……5人です。)その通り。

1.問題を読む。

教師の範読後,子どもに読ませる。

(問題文を読んだ後)右の表を見ます。

思ったのである。

 もちろん,皆川先生のように「読み方」を教える方法も立派に成り立つ。

 愛知の奥井先生。

 奥井先生も,「読み方」の「方」について意識はあった。少しだけど。

 第一文は教科書通り。第二文の末尾を省略した。これは,教科書通りがいい。

 「教科書通り」なら「宿の部屋わりは右のようにきめてあります」という文なので,表に向かう。

 奥井先生は,イラスト図に行きたかったのである。

 それで「宿の部屋割りを決めました」に直したのである。

 この修正は,意味のある修正だ。

 つまり,文の途中で「表」に行くのか,「イラスト図」に行くのかの違いなのである。

 「読み方」の「方」についての意識はあったのだとお分かりいただけるだろう。

 埼玉の横崎先生。

 「問題を読む」は,ダメな例と同じだ。

 大切なのは,カッコの注である。(◯アの手前まで)となっている。

 横崎先生も,「読み方」の「方」についての意識があった。問題文を途中でストップして,イラスト図に向かったのである。

 「問題文を読む」という何気ない表現の奥深さを感じていただけただろうか。

 「神は底部に宿り給う」例をもう1つ。

 木村重夫先生が,本誌4月号で次のように書いている。

 こんな場面があった。先生問題。「みんなで10人います。ひろしさんまで6人。ひろしさんのうしろに何人いますか?」答えが4人なのは図で分かった。「4を求める式はどうなりますか?」10−6と出させたい。

 ある子が小声で「2+2」と答えた。意外な反応はあるものだ。「2+2そう思った人?」と全体に聞いた。誰も手を挙げない。「確かに2+2になる。でもこの2つの数を使って出すんだ」とスクリーンを指さした。その子をいったん認めつつ,さばいた。

 見事なさばき方だ。安定した授業だ。

 しかし,向山ならこのようにしない。この部分を読んで,「私は違う」と即座に思った。

 小声で「2+2」と答えた子への対応は,向山は,全く別の方法でする。

 「木村先生の対応と向山の対応」そこには,「授業」の根本的思想の違いが見え隠れする。読者諸氏も考えていただきたい。

 神は底部に宿り給うのである。

T:64ページ。

T:のり子さんたちは子供会で旅行に行きました。宿の部屋割りを決めました。

A・B・C室の絵を指でおさえなさい。隣同士確認。

1 問題を読む(◯アの手前まで)

2 畳の部屋の絵で,混み具合を比べる

 畳の絵の,C室を指で隠させる。

A室とB室,どちらが混んでいますか。

Aだと思う人?Bだと思う人?

A室の方が混んでいるのですね。

どうしてですか?

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