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- 教師が間違えることと百玉そろばんの1年3学期の実践
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巻頭論文
算数授業へのこだわり
「問題文を読む」とはいかなる授業行為なのか
向山洋一
授業の違いは,「一見小さなこと」の中にあらわれるものなのだ。
「神は底部に宿り給う」のである。
3月号の「挑戦問題」は,「単位量あたり」の単元であり,旅行の部屋割りの混み具合についてだった。
応募論文は多数あり,常連もあり,水準は向上していた。
今回は,「授業開始」を取り上げて論じてみよう。
できたら3月号の裏表紙を見てほしい。
単元名のところに,旅行の絵があり,部屋と人数のイラスト図がある。
「問題文」があり,「表」がある。
授業開始では,「イラスト図」「問題文」「表」を,意図的に扱わねばならない。
しかし,ほとんどの人は,そんな意識はない。「当たり前のこと」と思っている。「神は底部に宿り給う」ことの,本当の意味を理解していない。
授業開始をどのように扱うのか。応募論文から紹介しよう。
愛知の渡辺先生。
実にシンプル。「範読」の2文字で終了。
でも,問題なのは,「範読」の中身なのである。
渡辺先生は,「教師が読んで終了」なのだろう。あまりにもおそまつ。
長野の宮崎先生。
こちらの方がよい。
「タイトル」も読んでいる。
「子どもにも読ませている」からだ。
しかし,「一方調子の読み」しか見えてこない。
「読み方」の「方」こそが問題なのだ。
新潟の本間先生。
タイトル,葉っぱマークは教師が読む。子どもにも問題文を読ませる。
「A室,B室,C室を上から見た絵があるね。指で押さえなさい。」
1.「もし,6年教室で全校児童が勉強するこ
とになったら?!」(無理!窮屈すぎる。)
「もし,体育館が6年生教室だったら?!」
(ゆったりだ。)(ひろすぎるよ。)
2.今日は,どちらがこんでいるか,こみ具合
葉っぱマーク 範読。
家の中には,3つの部屋の図があります。
指示1 C室を右手で隠してごらん。
隣と確認。
読み方は,宮崎先生とほぼ同じだ。「読み方」の「方」についての意識がない。
導入に対して,「教室,体育館の例」をあげている。分かりやすい例えだ。
抜群の導入である。とてもよい。
残念ながら,「読み方」の「方」がない。
もう,みんな,ほとんど同じだ。
東京の深野先生。
福岡の末冨先生。
「葉っぱ問題を読む」「問題文を読む」「範読する」と書いた人は,問題を読むには様々の「読み方がある」ことを意識してないのである。
次に問題文を示すので,まず読んでほしい。
(啓林館『算数6年上』P.64)
この問題文の上に,部屋割りのイラスト図がある。
「イラスト図」と「問題文」と「表」をどのような「読み方」をするのかがポイントなのだ。
さっき自分が読んだ方法と異なる方法を2通り考えてほしい。
子どもが前にいるつもりで,「3つの方法」を読んでほしい。
「問題文を読む」というのは,こうした作業が必要なのである。
たくさんの応募の中から「読み方」を実践した指導案が3つあった。
岩手県の皆川先生。
皆川先生は,全文を読み通してはいない。途中で止めている。
表を確認して,表の読み方を教えている。「範読」「問題を読む」より,はるかに,高度な指導である。
皆川先生は,「どの部屋がこんでいるかくらべましょう」で区切ったが,私は違った。
私は,その前で区切ったのである。
皆川先生と同じように,表を示した。私は表を自分で解説した。
読み方まで教えると,本題からずれるとを調べる学習をします。教科書64ページ。E単位量あたり
3.(口絵)町内の子ども会で,宿に泊まります。
〈葉っぱマークを教師が読み,その後児童も読む。〉
1.「E単位量あたり」です。言ってごらんなさい。さんはい。
2.問題文を教師が読む。「のりこさんたちは……どの部屋がこんでいるかくらべましょう。」
3.表を指さしなさい。隣と確認。
4.このように読みます。「A室の畳の数は10枚,子どもの数は6人です。」さんはい。(A室の……6人です。)そうです。B室も読みましょう。さんはい。(B室の……5人です。)その調子。C室,はい。(C室の……5人です。)その通り。
1.問題を読む。
教師の範読後,子どもに読ませる。
(問題文を読んだ後)右の表を見ます。
思ったのである。
もちろん,皆川先生のように「読み方」を教える方法も立派に成り立つ。
愛知の奥井先生。
奥井先生も,「読み方」の「方」について意識はあった。少しだけど。
第一文は教科書通り。第二文の末尾を省略した。これは,教科書通りがいい。
「教科書通り」なら「宿の部屋わりは右のようにきめてあります」という文なので,表に向かう。
奥井先生は,イラスト図に行きたかったのである。
それで「宿の部屋割りを決めました」に直したのである。
この修正は,意味のある修正だ。
つまり,文の途中で「表」に行くのか,「イラスト図」に行くのかの違いなのである。
「読み方」の「方」についての意識はあったのだとお分かりいただけるだろう。
埼玉の横崎先生。
「問題を読む」は,ダメな例と同じだ。
大切なのは,カッコの注である。(◯アの手前まで)となっている。
横崎先生も,「読み方」の「方」についての意識があった。問題文を途中でストップして,イラスト図に向かったのである。
「問題文を読む」という何気ない表現の奥深さを感じていただけただろうか。
「神は底部に宿り給う」例をもう1つ。
木村重夫先生が,本誌4月号で次のように書いている。
こんな場面があった。先生問題。「みんなで10人います。ひろしさんまで6人。ひろしさんのうしろに何人いますか?」答えが4人なのは図で分かった。「4を求める式はどうなりますか?」10−6と出させたい。
ある子が小声で「2+2」と答えた。意外な反応はあるものだ。「2+2そう思った人?」と全体に聞いた。誰も手を挙げない。「確かに2+2になる。でもこの2つの数を使って出すんだ」とスクリーンを指さした。その子をいったん認めつつ,さばいた。
見事なさばき方だ。安定した授業だ。
しかし,向山ならこのようにしない。この部分を読んで,「私は違う」と即座に思った。
小声で「2+2」と答えた子への対応は,向山は,全く別の方法でする。
「木村先生の対応と向山の対応」そこには,「授業」の根本的思想の違いが見え隠れする。読者諸氏も考えていただきたい。
神は底部に宿り給うのである。
T:64ページ。
T:のり子さんたちは子供会で旅行に行きました。宿の部屋割りを決めました。
A・B・C室の絵を指でおさえなさい。隣同士確認。
1 問題を読む(◯アの手前まで)
2 畳の部屋の絵で,混み具合を比べる
畳の絵の,C室を指で隠させる。
A室とB室,どちらが混んでいますか。
Aだと思う人?Bだと思う人?
A室の方が混んでいるのですね。
どうしてですか?
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- 明治図書