向山型算数教え方教室 2004年10月号
公開授業の焦点“向山型学力づくり”のワザ

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向山型算数教え方教室 2004年10月号公開授業の焦点“向山型学力づくり”のワザ

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2004年9月9日
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 公開授業の焦点“向山型学力づくり”のワザ
向山型がネットワークであることが分かれば、ワザも分かる
大森 修
必達目標の設定と公開研修会の開催が、学校ぐるみの実践を可能にする
吉永 順一
脳科学から検証できる向山型算数のすぐれた指導法
小林 幸雄
変化のある繰り返しは、脳科学の研究結果と一致する
吉田 高志
全員参加「時間調整」6つのワザ
水野 正司
教科書を教えるというこの授業のパターンはすごくいい
奥 清二郎
布石を打ち続ける
浅野 光
ミニ特集 役に立つ「授業記録」の書き方3か条
自分の授業をテープにとって正確に再現する
井上 好文
「指導案」「所見・反省」「子どもの事実」の記録を残す
本間 尚子
禁句,分析を経て,授業を切り取る
八和田 清秀
向山先生の授業VTRの再現が私の授業を変えた!
根本 修成
「発問・指示」「子どもの動き」「結果(変化)」
田村 治男
「やらざるをえない」状況に自分を追い込もう
寺田 真紀子
グラビア
教科書があれば道がはっきりする、そこが大切です
村田 斎
若葉印教師のための向山型算数基礎基本イラスト事典
写すのもお勉強のうちA
小倉 郁美
向山型算数キーワード
子どもへの目線
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
向山型算数の必需品
向山 洋一
学年別10月教材こう授業する
1年
たし算(2)
横山 利恵
10より 大きい かず
下山 てるみ
2年
三角形と四角形
山本 敏子
かけ算(1)
白瀬 嗣大
3年
大きな数
□□□□□
あまりを考えて
河田 真介
4年
はしたの大きさの表し方を考えよう
土屋 洋之
がい数
藤崎 久美子
5年
面積
吉田 真弓
面積の求め方を考えよう
山下 文廣
6年
分数倍を考えよう
青木 勝美
単位量あたりの大きさ
石橋 剛
向山型算数に挑戦/論文審査 (第59回)
あくまですべての子に(できない子もそしてできる子も)、知的で熱中する授業を!
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第61回)
文章題入門期の実力アップ指導(下)
木村 重夫
向山型算数の原理原則と応用 (第61回)
できない子に、絶大な効果を発揮する「基本型と唱え方」の原則
大野木 一雄
向山型算数と出会ってTT授業・少人数授業が変わる (第30回)
「一番好きな勉強は算数です」向山型算数がもたらす事実
山本 昇吾
向山型算数WEBサロン (第55回)
子どもを授業に乗せる口調とにこやかな表情を向山洋一教え方ステーションと向山型算数セミナーで
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第55回)
図形の証明・例示問題7つのステップ
井上 好文
「親と子の証言!」向山型算数は公文を超える! (第19回)
TOSSノート販売システム構築の裏にあるドラマ
松崎 力
〈教室の障害児と向山型算数〉特に気になる『あの子』への向山型アプローチ
基本型を繰り返して授業を進める
上杉 圭子
アルゴリズムでできる・できる・できるの体験を
佐藤 琢朗
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第61回)
低学年
石本 康一郎
中学年
刀祢 敬則
高学年
堀部 克之
ライブ体験で味わう“実力づくりへの道”向山弟子の介入を受けて
実力をつけるための出発点
佐々木 伸也
教材は深く、深く、研究しなくてはいけない
小路 健太郎
向山型算数セミナー
問題解決学習との論争がここから始まる
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
初めて算数の授業を感謝された
浅野 あけみ
子どもたちの笑顔を見たいから
助川 仁史
教科書通りは奥が深い!
榎本 寛之
明確な評価基準で、授業が評価される
山田 淳
我流に気づく
新瀬 英樹
ノートに薄く赤鉛筆、「何!?」とキッとした眼で私をにらんだB君
高野 宏子
きれいなノートになってきた
柳田 真弓
論文ランキング
7月号
木村 重夫
実物ノートと指導のポイント
決してあせらず,あきらめず!
奈良 満
読者のページ
先人の努力を無視する行為への憤り
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
赤石 賢司
向山型算数に挑戦/指定教材 (第61回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

向山型算数の必需品

向山洋一


(1)

 向山型算数は,「一まとまりのシステム」である。

 決められた授業時間の中だけで,宿題も出さず,特別指導もせず,残り勉強もせずに教科書だけを使っての指導で,絶大な効果を上げる。

 教科書指導は,3つの部分から成り立つ。

(1)例題の指導

(2)例題と似た問題(類題)の指導

(3)練習問題の指導

 教科書の指導計画で「1時間」とある部分を,正味30〜35分くらいで指導するのである。

 向山は,教科書進度「1.5時間分」くらいを正味30〜35分くらいで指導していた。

 算数の授業が「5分早く終わる」など,しょっちゅうあった。同学年の筧田先生が,証言している通りである。もちろん,「10秒といえども授業がのびた」ことは,4年間で一度もなかった。

 4年間で教えた子は,およそ540名。3学期,授業終了の日,「向山先生の算数の授業」について感想を書いてもらった。400字詰原稿用紙で1人,2,3枚である。この作文は校長先生にだけ,見てもらった。

 「嫌いな算数が好きになった」「算数ができるようになった」「算数のある日が楽しみだった」と書いた子は,540名中539名である。

 この作文は,今も大切に保管してある。

 「1時間で,予定進度の1.5倍のスピード」は,子どもたちに合っていたのである。

 「教科書」を上手に使うことが,向山型算数の絶対条件だが,他にも必需品がある。

 「あかねこ計算スキル」と「TOSSノート」である。この2つの教材・教具は,「向山型算数」のために,向山が創り出したものである。

 「あってもなくてもいい」のではなく,絶対の必需品である。

 学校によっては,「使えない」ところもあろうが,「自分のクラスは使わせてほしい」という根性も必要だ。

 ヨーロッパでは,クラス毎に教科書が違うところは,いくらでもある。

 日本では,教科書は同じものを使うよう法律で定められているが,「ノート」「教材」は,担任に任されている。子どもにとって,もっともよい教材・教具を,担任が選べばいいのである。

(2)

 必需品ではないが,あった方がいい教材・教具がある。

 「百玉そろばん」と「スマートボード」と「S社市販ワークテスト」である。

 これらは,「向山型算数」のさらなる進化のために,向山が復活させたり,選択したり,創り出したものである。

 この効果は,やった人ならお分かりだろう。

 最近,各地で「スマートボードの研修」をTOSS教師が依頼されている。

 参加した教師は,初めて見る「スマートボード」の授業に,ビックリして目が点になるという。

 「スマートボード型」の電子黒板はいくつかあるが,英国教育省が定めた「教具としての条件」をクリアしているのは,世界中でスマートボード1社である。

 これは,カナダで発明された。日本では,TOSS,内田洋行,など3社(団体)が総代理店である。

 ちなみに,イギリスで学校への普及は3万5千台。日本は4千台である。

 スマートボードを使って,TOSSランドを活用しての授業が,これからの最先端の授業になっていくだろう。

(3)

 「あかねこ計算スキル」が使えずに,他のドリルで工夫した先生の報告がある。

 先生は,がんばったのだが,しょせん「思想」「組み立て」「配慮」「工夫」が違う教材では,代用にならないのである。

 ○スキルのようには使えない

          鹿児島 内永加奈子

 教材選定の時に「あかねこ計算スキルがいい」と主張した。「先生ってスキルが好きなんだね」で片付けられてしまった。

 「問題と答えが対応しているし,低位の子どもでもやり方が書いているから分かりやすいんですよ」と反論した。しかし,返ってきた答えは「高学年なんだから,対応していなくても大丈夫だよ。子ども達の適応能力でカバーできるから」であった。

 更に「授業で使うなら,教材研究で何とかできるよ。先生,若いんだし」と言われてしまった。

 私以外の先生が「宿題に使いたいから繰り返し使えるものがいいな」の一言で計算ドリルを採用することとなった。採用できなかった後は,ものすごく悔しかった。

 いくら悔しがってもいても,計算スキルを今からとれるわけではない。しかも,算数の授業は毎日のようにやってくる。

 そこで,計算ドリルをスキルのように使うことにした。

 「計算を速く解きたいっていう人は,ステップ2のところまで。ゆっくりじっくり解きたい人はステップ1まで。どちらも同じ100点です」

 ドリルがステップ1,2と分けられていた。そこで,2問コース,5問コースのように分けてみた。挙手でコースの確認をした後,解かせていった。

 答えを読み上げるのも後ろのほうから読んでいった。

 子ども達は,100点を取れたからか楽しそうにドリルに取り組んでいた。

 しかし,次第に変化が表れてきた。

 「ドリルをします」と言うと「えー!」の声があがるのだ。

 スキルを使っていた学年では,「スキルをします」というと「やったあ」の声だったのに。

 なぜ,子ども達のやる気がなくなっていったのか考えてみた。

原因1 問題の文字が小さい

 小さなスペースに20問も詰め込んであるのだから仕方がない。一挙に20問解かせることはなかったが,視覚的に圧迫感があり,やる気をそいでいるようだった。

原因2 空白の時間が生まれてしまう

 ドリルは,全体的に見て5問ごとに区切ってある。速く計算できる子どもは,10問なんてあっという間に解いていく。しかし,計算が苦手な子が5問解くというのは,時間がかかる。ヒントもないのだから,余計に時間がかかるのだ。

 スキルのように2分ぐらいの短い時間で区切ってしまうと,低位の子ども達は,絶対に5問解き終わることはない。

 これでは,算数の時間の度に「お前はできない」と言われているのと同じである。少し長めの5分くらいの時間をとると,途端に騒がしくなってしまった。

 子ども達が「えー」の声をあげる。私も,だんだんドリルをすることが億劫になってしまった。私が億劫になってしまった原因が他にもある。ドリルの解答は細かく,どこを見ているか分からない

 ドリルの答えは,ただの数の羅列である。

 問題を読み,答えのページをめくる。すると,ドリルの何番をやっていたのかわからなくなってしまった。

 テンポよく答えが出せないと,途端にだらけたムードになった。

 また,大人の私でも,どこを見ているか分からなくなるのだから,低位の子ども達はなおさらわからないはずだ。毎時間使えない

 スキルのように基本型と対応しているわけではない。まとめて問題が書いてある。そうなると,毎時間ドリルというわけにもいかなくなってしまう。ドリルをやる日とやらない日が出てくるわけだ。

 「スキル」には,「できない子どももできるようになる」「達成感を味わわせる」様々な手立てが具体化されている。しかし,ドリルにはない。ドリルをスキルのようには使えないのだ。

〈向山〉これが,内永先生の実感である。ドリルをスキルのように使うのは無理なのである。

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