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- ミニ特集 新年度の授業を成功させる「準備」ここがポイントだ!
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- 向山型算数の原理をふまえて応用を!−フィードバックは担任がやらなければならない仕事だ−
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巻頭論文
算数授業へのこだわり
向山型算数の原理をふまえて応用を!
―フィードバックは担任がやらなければならない仕事だ―
向山洋一
向山型算数は,私が池雪小学校に勤務していた4年間に形づくられた。
これまでの向山実践をきびしい条件の下で吟味した結果生れたのである。
もちろん,授業の骨格は,それまでの延長にあったが,削りとったことも多かった。
私は,池雪小の四年間は,算数のT.Tであった。4年生4クラスを教えていたのである。
T.Tには,きびしい条件がついてまわる。
授業中に,すべてを終了しなければならないということである。
担任なら,休み時間に教えることも,放課後残すことも可能だが,T.Tでは,物理的に無理なのである。
まずは,授業をチャイム迄に修了しなければならない。すべての授業を,チャイム迄に終了させなければならないのである。
しかも,その中で,「ある範囲の内容」を全員に修得させなければならない。
勉強ができる子も,できない子も満足させなくてはならない。
しかも,4クラス130 名全ての子どもたちに,安定した同質の授業をしなければならない。クラスによって異なるのでは,話にならない。
教科書を基本にするのが一番いい。
教科書は,多くの教師の体験をくぐりぬけてきたすぐれた教材である。
最近の教科書は,問題解決学習の悪影響が色濃いのもあるが,前はそれほどひどくなかった。
算数の教科書は,昔の方が相対的に良い。
教科書から「問題解決学習の悪影響」を排除していくのは,教師の大切な仕事である。
どうすればいいか。
一人一人の教師が,教科書研究をして(一部分でいい)前より悪くなった所を教科書会社に送ればいい。メール,画像のコピーでもいい。1000 人の教師がこれを実行すれば,かなりの影響が出る。
さて,「教科書」だけでは,心もとない。
練習問題(スキル)も,授業の中でやりたい。実力は,授業でつけるのである。
ところが,スキルをすると,はやくできる子もいれば,遅い子もいる。
中には,ほとんどできない子も何人かはいる。
これを,どうするのか?
ここから「赤ねこスキル」は作られた。
いや,この問題を,解決することから,「向山型」は生れた。
それが「赤ねこスキル」に書かれている三つの特徴である。
第一は,2問コース,5問コース,10 問コースを作ったことである。
全員に,同じ問題をさせていたそれまでの実践から見ると,これは草分的な方法だった。
はやい子,おそい子が,これによって解決されることになった。
第二は,補助計算やあみかけのうすい文字をヒントに入れたことである。
これによって,「できない子」の,ほとんどの子は救われることになった。
赤えんぴつの「うすい字」をなぞるのは,この応用である。
しかし,それでもまだ「できない子」がいる。
第三に考えたのは,できない子は,できている部分だけ丸をつけてやる方法である。
36
×43
108
134
1448
図のようにあっている数字に丸をつけてやるのだ。「10 個のうち8つも丸だよ,すごいなあ」とほめてやるのだ。そして,間違いを考えさせるのである。
これは,子どもにもやらせる。
そのためには,「途中も書いてある解答欄」が必要だ。
かくて「赤ねこスキル」は,途中過程も書いてある解答欄がつくことになった。
学校用教材としては,日本初のことである。
これが,向山型算数のスキルのポイントだ。
別途,「授業中のノートの丸つけ」は,「列を作らない」ことが原則となる。
それまで,長々と説明している教師をよく見かけた。長い説明が,教室に騒乱をもたらすのである。
短くするためには,「一問」だけを評定すればいい。
バツか丸かが分りやすい。説明はいらない。
最後まで残った何人かは,呼んで「うすく書いてやる」方法や,「数字に丸をつける」方法などをすればいい。
これが,向山型の丸つけであり,最初から私が主張してきたことだ。
もちろん,1000 万,2000 万人もの子どもがいれば,いろんな子が出てくる。そうした子には,原則をふまえて担任が工夫していくのである。これが,フィードバックだ。
すべての子への適応方法など,科学としてあり得ないのだ。
原則があり,それを応用したフィードバックがあるのである。このことも,「教育技術論」として,十数年昔から向山は書いてきた。
ところで,最近算数メールに次の文が流れた。
□担任している2年生の男の子ですがノートにバツをつけると次のようになった子がいます。
1「なんでなんでなんでー」と叫びながら教卓を揺すぶる。
2そのまま床に寝ころび,他の子たちの足をつかんだり蹴ったりする。
3その時点で,授業にはもう参加しなくなる。
この子のノートには,バツをつけてはいけない,ということなんでしょうか。
丸だけになるように,赤鉛筆指導をタイミングよくする修業をすればよいのでしょうか。
3学期を目前に,悩んでいます。
私の今までの対応(失敗)
・「バツはバツです」と,あっさり返す。
(上記の状態になる)
・バツの理由を説明してやる。
(はやり上記の状態になる)
・丸付けのじゃまをするので教卓から離すように連れて行く。
(その場所で寝ころんで他の子のじゃまをする)
・「バツでも暴れない?」などと念を押してつける。
(やっぱり同じ)
・ノートを持ってきたら,とりあえず○をつける。
(彼は喜んだが…私としては自己嫌悪)
少人数加配のベテラン先生とTTや少人数で授業してきました。
問題解決学習で学校公開などもあり,向山型算数を目指した実践ができませんでした。
2学期は彼にバツをつけたことはありません。
とても悲しいですが,他教科でも,ほとんど勉強しなくなっていたからです。
本当は頭のよい,才能のある子どもだと思います。□
(向山) この先生は「向山型算数」をしていない。向山型をしていないのに,ノートの丸つけだけを,向山型の一方法をとり入れている。これは,メチャメチャだ。
部分的にとり入れても駄目だということを,私は何回か書いてきている。
次にこの先生は,「できない子への対応」の向山型の原理を全く理解していない。何も分っていないのである。原理が分らなければ工夫だって,デタラメになる。
次に,メールで中央事務局の一メンバーが,次のような文を書いた。
□向山型算数は,アスペルガーには効かないとありましたが,ほかにも行動障害の子には,うまくいかない面もあるような気がします。きちんと話の聞ける子で単に学習が遅れがちな子については,確かに効果絶大です。
向山型算数自体,まだ10 年もたっていないのですから,絶対うまくいくはず,と思いこまない方がいいのではないでしょうか。
同じような事例をたくさん集めて,効果ある対応を探っていかなければならないと考えます。□
中央事務局の一員のこの発言は見すごせない。
向山は「絶対うまくいくはず」などと言ったことはない。そんな方法はないからである。
これは,法則化規約の4つの理念でも明らかだ。
「アスペルガーにきかない」のは,自閉症が質的障害だからである。蓄積がむずかしいのだ。すぐに他へ飛んでいくからだ。
このような原理をふまえないで,一般化しないでほしい。
しかし,最近の「向山型算数セミナー」には,ADHD,アスペルガーの子への指導が次々と報告されている。
一人一人の教師の苦闘の記録だ。
その中には,「これはよかった。」「これは駄目だった」という報告もある。
頭の下がる報告をする教師が,次々と生れ,参加者に大きな感動と勇気を与えている。
日本の教師の仕事としては,初めての実践,研究報告群なのである。
算数セミナーの参加者に,私は「このアスペルガーの指導報告」「このADHDの指導報告」(日本で初めての貴重な報告です)と解説している。
こうしたセミナーが,何回も続いている。
これが,向山型算数の現状である。
何百人もの教師が,アスペルガーの子,ADHDの子を担任し,努力し苦闘し,それを報告しているのである。
こうした動きを知った上で発言してほしいと思う。
一つ一つの報告を聞いているのだが,涙が出てくるほど感動的なのだ。
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- 明治図書