向山型算数教え方教室 2003年3月号
「この到達度テスト」で1年間の成長を点検する

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向山型算数教え方教室 2003年3月号「この到達度テスト」で1年間の成長を点検する

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2003年2月
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 「この到達度テスト」で1年間の成長を点検する
1年/教師の1年間の指導力がはっきりと問われる
渡辺 佳起
2年/到達度テストは,教師の通知票である
小森 俊宣
3年/学習内容が習得されたか一目で分かるのがTOSS到達度テストである。習得制度を生き残る指導法は向山型算数しかない!
大関 貴之
4年/子どもの事実とむきあうことができる
奈良 満
5年/指導力は客観的データによって表される
金子 明弘
6年/詰めの甘さがはっきりと現れた!
塩沢 博之
中学/到達度テストも「あかねこ中学数学スキル」を使う!
西野 一葉
ミニ特集 新年度の授業を成功させる「準備」ここがポイントだ!
100珠そろばんを準備せよ!
菅野 裕紀子
ノート忘れに対するシステムを確立する
西田 裕之
何はなくとも百玉そろばん
小林 篤史
1年生,1人に1つ百玉そろばん
羽鳥 久美子
教材を採用してもらえる3つのポイント
前田 亮
4月に「TOSSノート」使用の年間システムを確立させる!
小田 哲也
グラビア
1回や2回聞いてわかったつもりになっていませんか。
村田 斎
向山型算数キーワード
作業記憶(ワーキングメモリー)
木村 重夫
論文ランキング
12月号
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
向山型算数の原理をふまえて応用を!−フィードバックは担任がやらなければならない仕事だ−
向山 洋一
学年別3月教材こう授業する
1年
たしざんとひきざん
岡 惠子
1ねんのまとめ
清水 洋子
2年
春がきた
礒貝 定徳
もうすぐ3年生
川田 英津子
3年
3年のふくしゅう
山口 美智子
もうすぐ4年生(3年のまとめ)
井戸 砂織
4年
分けた大きさの表し方を考えよう
鎌田 信美
分数
西尾 豊
5年
5年のふくしゅう
菅原 光敏
円をくわしく調べよう
橘内 求
6年
ともなって変わる量
與賀田 忠倫
算数のまとめ
下重 和也
向山型算数に挑戦/論文審査 (第40回)
教科書には,ひどい教材も入っている。問題解決学習のライターが改悪した部分も多い。
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第42回)
「先生が一目でわかる図」を描いた後の指導
木村 重夫
向山型算数の原理原則と応用 (第42回)
向山型算数には教師の「安定した言葉」が必要である
尾崎 文雄
向山型算数と出会ってTT授業・少人数授業が変わる (第12回)
子どもの人生を変えた向山型算数
柳橋 学
向山型算数WEBサロン (第36回)
0.5なら分かる。0.5が分かれば小数が分かる
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第36回)
リズムとテンポはライブで学ぶのが近道である
井上 好文
『教え方大事典』を活用した算数授業体験
2年/逆転現象が起こった「九九ずもう」
濱田 謙
3年/みんな納得!「かけ算の筆算」
吉田 真弓
4年/正に,「子どもが夢中で悩む」問題
長谷 和美
5年/授業に「ほんのちょっとの工夫」
藤倉 欣浩
6年/4+2から4m×2mで逆転現象
柿崎 厚子
中学/指示はスモールステップで
月安 裕美
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第42回)
低学年
楢原 八恵美
中学年
仲山 由美子
高学年
鮒田 美代子
衝撃のライブ体験「向山洋一の介入模擬授業」を受けて (第12回)
枝葉はバッサリ切り捨てる
小松 裕明
割合はこうすれば分かるのか!
若部 毅
向山型算数セミナー
向山型算数セミナーの2本柱で力量をつけよう
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
「先生の授業つまんない。」
阿部 力
算数の苦手な子ができるようになる
堤 直子
授業するのが楽しみになった
鈴木 はるみ
向山型算数は全てに波及する
小田 昌宏
子どもを変えた向山型算数
石神 裕子
子どもを救う,魔法の赤鉛筆!
中田 昭大
赤鉛筆が私と子どもを変えた
大橋 純子
自由投稿フリーページ
木村 重夫正木 恵子
実物ノートと指導のポイント
表を書かせる3つのポイント
岩田 史朗
読者のページ
不勉強な校長の横柄さ,塾チーフの謙虚さ
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
向山型算数に挑戦/指定教材 (第42回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

向山型算数の原理をふまえて応用を!

―フィードバックは担任がやらなければならない仕事だ―

向山洋一


 向山型算数は,私が池雪小学校に勤務していた4年間に形づくられた。

 これまでの向山実践をきびしい条件の下で吟味した結果生れたのである。

 もちろん,授業の骨格は,それまでの延長にあったが,削りとったことも多かった。

 私は,池雪小の四年間は,算数のT.Tであった。4年生4クラスを教えていたのである。

 T.Tには,きびしい条件がついてまわる。

 授業中に,すべてを終了しなければならないということである。

 担任なら,休み時間に教えることも,放課後残すことも可能だが,T.Tでは,物理的に無理なのである。

 まずは,授業をチャイム迄に修了しなければならない。すべての授業を,チャイム迄に終了させなければならないのである。

 しかも,その中で,「ある範囲の内容」を全員に修得させなければならない。

 勉強ができる子も,できない子も満足させなくてはならない。

 しかも,4クラス130 名全ての子どもたちに,安定した同質の授業をしなければならない。クラスによって異なるのでは,話にならない。

 教科書を基本にするのが一番いい。

 教科書は,多くの教師の体験をくぐりぬけてきたすぐれた教材である。

 最近の教科書は,問題解決学習の悪影響が色濃いのもあるが,前はそれほどひどくなかった。

 算数の教科書は,昔の方が相対的に良い。

 教科書から「問題解決学習の悪影響」を排除していくのは,教師の大切な仕事である。

 どうすればいいか。

 一人一人の教師が,教科書研究をして(一部分でいい)前より悪くなった所を教科書会社に送ればいい。メール,画像のコピーでもいい。1000 人の教師がこれを実行すれば,かなりの影響が出る。

 さて,「教科書」だけでは,心もとない。

 練習問題(スキル)も,授業の中でやりたい。実力は,授業でつけるのである。

 ところが,スキルをすると,はやくできる子もいれば,遅い子もいる。

 中には,ほとんどできない子も何人かはいる。

 これを,どうするのか?

 ここから「赤ねこスキル」は作られた。

 いや,この問題を,解決することから,「向山型」は生れた。

 それが「赤ねこスキル」に書かれている三つの特徴である。

 第一は,2問コース,5問コース,10 問コースを作ったことである。

 全員に,同じ問題をさせていたそれまでの実践から見ると,これは草分的な方法だった。

 はやい子,おそい子が,これによって解決されることになった。

 第二は,補助計算やあみかけのうすい文字をヒントに入れたことである。

 これによって,「できない子」の,ほとんどの子は救われることになった。

 赤えんぴつの「うすい字」をなぞるのは,この応用である。

 しかし,それでもまだ「できない子」がいる。

 第三に考えたのは,できない子は,できている部分だけ丸をつけてやる方法である。

          36

         ×43

         108

        134

        1448

 図のようにあっている数字に丸をつけてやるのだ。「10 個のうち8つも丸だよ,すごいなあ」とほめてやるのだ。そして,間違いを考えさせるのである。

 これは,子どもにもやらせる。

 そのためには,「途中も書いてある解答欄」が必要だ。

 かくて「赤ねこスキル」は,途中過程も書いてある解答欄がつくことになった。

 学校用教材としては,日本初のことである。

 これが,向山型算数のスキルのポイントだ。

 別途,「授業中のノートの丸つけ」は,「列を作らない」ことが原則となる。

 それまで,長々と説明している教師をよく見かけた。長い説明が,教室に騒乱をもたらすのである。

 短くするためには,「一問」だけを評定すればいい。

 バツか丸かが分りやすい。説明はいらない。

 最後まで残った何人かは,呼んで「うすく書いてやる」方法や,「数字に丸をつける」方法などをすればいい。

 これが,向山型の丸つけであり,最初から私が主張してきたことだ。

 もちろん,1000 万,2000 万人もの子どもがいれば,いろんな子が出てくる。そうした子には,原則をふまえて担任が工夫していくのである。これが,フィードバックだ。

 すべての子への適応方法など,科学としてあり得ないのだ。

 原則があり,それを応用したフィードバックがあるのである。このことも,「教育技術論」として,十数年昔から向山は書いてきた。

 ところで,最近算数メールに次の文が流れた。

□担任している2年生の男の子ですがノートにバツをつけると次のようになった子がいます。

1「なんでなんでなんでー」と叫びながら教卓を揺すぶる。

2そのまま床に寝ころび,他の子たちの足をつかんだり蹴ったりする。

3その時点で,授業にはもう参加しなくなる。

 この子のノートには,バツをつけてはいけない,ということなんでしょうか。

 丸だけになるように,赤鉛筆指導をタイミングよくする修業をすればよいのでしょうか。

 3学期を目前に,悩んでいます。

 私の今までの対応(失敗)

・「バツはバツです」と,あっさり返す。

 (上記の状態になる)

・バツの理由を説明してやる。

 (はやり上記の状態になる)

・丸付けのじゃまをするので教卓から離すように連れて行く。

 (その場所で寝ころんで他の子のじゃまをする)

・「バツでも暴れない?」などと念を押してつける。

 (やっぱり同じ)

・ノートを持ってきたら,とりあえず○をつける。

 (彼は喜んだが…私としては自己嫌悪)

 少人数加配のベテラン先生とTTや少人数で授業してきました。

 問題解決学習で学校公開などもあり,向山型算数を目指した実践ができませんでした。

 2学期は彼にバツをつけたことはありません。

 とても悲しいですが,他教科でも,ほとんど勉強しなくなっていたからです。

 本当は頭のよい,才能のある子どもだと思います。□

(向山) この先生は「向山型算数」をしていない。向山型をしていないのに,ノートの丸つけだけを,向山型の一方法をとり入れている。これは,メチャメチャだ。

 部分的にとり入れても駄目だということを,私は何回か書いてきている。

 次にこの先生は,「できない子への対応」の向山型の原理を全く理解していない。何も分っていないのである。原理が分らなければ工夫だって,デタラメになる。

 次に,メールで中央事務局の一メンバーが,次のような文を書いた。

□向山型算数は,アスペルガーには効かないとありましたが,ほかにも行動障害の子には,うまくいかない面もあるような気がします。きちんと話の聞ける子で単に学習が遅れがちな子については,確かに効果絶大です。

 向山型算数自体,まだ10 年もたっていないのですから,絶対うまくいくはず,と思いこまない方がいいのではないでしょうか。

 同じような事例をたくさん集めて,効果ある対応を探っていかなければならないと考えます。□

 中央事務局の一員のこの発言は見すごせない。

 向山は「絶対うまくいくはず」などと言ったことはない。そんな方法はないからである。

 これは,法則化規約の4つの理念でも明らかだ。

 「アスペルガーにきかない」のは,自閉症が質的障害だからである。蓄積がむずかしいのだ。すぐに他へ飛んでいくからだ。

 このような原理をふまえないで,一般化しないでほしい。

 しかし,最近の「向山型算数セミナー」には,ADHD,アスペルガーの子への指導が次々と報告されている。

 一人一人の教師の苦闘の記録だ。

 その中には,「これはよかった。」「これは駄目だった」という報告もある。

 頭の下がる報告をする教師が,次々と生れ,参加者に大きな感動と勇気を与えている。

 日本の教師の仕事としては,初めての実践,研究報告群なのである。

 算数セミナーの参加者に,私は「このアスペルガーの指導報告」「このADHDの指導報告」(日本で初めての貴重な報告です)と解説している。

 こうしたセミナーが,何回も続いている。

 これが,向山型算数の現状である。

 何百人もの教師が,アスペルガーの子,ADHDの子を担任し,努力し苦闘し,それを報告しているのである。

 こうした動きを知った上で発言してほしいと思う。

 一つ一つの報告を聞いているのだが,涙が出てくるほど感動的なのだ。

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