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巻頭論文
算数授業へのこだわり
問題解決学習は最低・最悪の指導法である
向山洋一
私は,何度でも言い続ける。算数の問題解決学習は,最低・最悪の指導法である。
算数の問題解決学習を推進する教師は,いずれ子ども,保護者に裁かれ,法にも裁かれるだろう。
学校教育法では,教科書の使用が定められている。それを,「教科書は使うな」「教科書をしまえ」というのであるから,明確な法律違反なのである。
そして,いつか,歴史に裁かれるであろう。
私たちが,その証言者である。
『向山型算数教え方教室』誌の読者は,すべての問題解決学習誌の総和よりも,多いことを肝に命ずるべきである。
問題解決学習から,雪崩のように向山型算数へ移動してくる。
「私は,公開発表の研究主任として,問題解決をやってきました。あの時代を,消しゴムで消し去りたいです」と,40代の女性教師。
「私は,問題解決学習の県の事務局を10年やってきました。できない子ができた事実は一つもありませんでした。
向山型になったとたん,そういうドラマが津波のように生まれました」と40代男性教師。
「私は,大学でも,大学院でも数学を専攻し,問題解決学習だけを研究してきました。
新卒からずっと問題解決学習をやり,論文も書きました。でも『子どもの手ごたえ』がなく,向山型に移りました。
私の問題解決学習の研究は,嘘でぬり固められたものです。」と30代教師。
こうした便りが山ほど届く。
算数の問題解決学習は,最低・最悪の指導方法であることを,かつて長く推進してきた教師が証言してくれている。
算数嫌いの子を大量に生み出し,学力を低下させることにおいて最低の学習方法なのである。
ADHD,LDなどの障害のある子にマイナスになる我流の指導方法を実施し,反発・反抗する子どもを生み出してしまうことにおいて,最悪の指導方法なのである。
算数の問題解決学習の実践報告の中には,「ADHD」(クラスに2,3人)と「LD」などの障害を持った子への対応は皆無だ。
「できない子」に冷たく非情な教育方法である。
「一時間に一問」
「教科書を使わない」
「一分を越える個別指導」
「自分で考えなさい」という指示
「毎日の宿題」
「30秒を越える長い説明」
これらは、すべて「ADHD」の子をスポイルする最低の指導法だ。
問題解決学習の授業の組み立ては、すべて障がいを持った子には、悪い作用をする方法なのである。
小学校、中学校で、最低の授業論、授業技術を持った教師だけが、推進していると思える。
問題解決学習には、授業論は全くない。いや、デタラメの授業論しかない。
問題解決学習には、子ども論がない。一人一人の子どもが見えていない。十把ひとからげに見ている。
問題解決学習には、実態論がない。学力や考える力などを、実態、事実を示して論ずることはできない。授業論がデタラメで、子ども論がないのだから当然だ。
問題解決学習にあるのは、空念仏だけである。底の浅い、貧弱な理論があるだけだ。
それを推進できる教師は、子どもから離れ、授業から離れることができるレベルの低い教師だけなのである。
今から60年も前に、問題解決学習の学習指導を示したポリアは、対象を数学専攻の大学生においたのである。
これなら、話は分る。
しかし、日本の教師はそれを、小学生に取り入れた。
授業についてろくに分らず、子どもについても無知な大学の教師が推進したのである。
大学の教師は、「授業や子ども」について分ってないのだから、少しは許せる。
しかし、それを取り入れた小・中学校の教師の罪は深い。
あのような指導法は、子どもが反発そたはずだからである。
特に「できない子」は反抗したはずだ。「ADHD」等の子は、原理として、受け入れられない方法だからだ。
問題解決学習で、県でも有名な教師のクラスがグチャグチャになった報告を全国から受けている。何なら、氏名を入れて公表してもよい。
もちろん、問題解決学習の教師の中には、力のあった人も少しはいただろう。ほころびが出ないようにした人がいるかもしれない。
しかし、「できない子をできる」ようにさせることは無理だったはずだ。
附属小は、選抜されているから、「障害を持った子」は比較的少ない。
ここでなら(親が塾にやったりして)、ほころびは少なかったと思える。
算数の問題解決学習の推進拠点は、全国の附属小算数部である。くだらぬ研究をしている付属小が山ほどある。
過日、文科省寺脇審議官との対談の時の雑談を思い出す。
寺脇審議官は、「附属の研究は全くくだらない。附属はなくなった方がいい」という個人的見解を述べられていた。「必要なのは、普通の学校の研究なのだ」とも述べられていた。
私も、全く同感である。
附属小の研究が立派だと思っているのは自分たちだけであり、周りはとっくに離れているのだ。「算数の問題解決学習」など、私が紹介すると、みんなびっくりして、あきれていた。
例えば、建設省都市計画研究会の中で、東大工学部卒の何十人という専門家に話してみた。彼らは、数学の専門家だ。当然あきれたいた。
例えば、エネルギーシンポジウムで、電力・エネルギーの研究者に話した。彼らも数学は専門だ。東大、京大、名大学の教授だ。
「そんなこと、本当にやっているのですか」とびっくりしていた。
例えば、NEC、松下、富士通、マイクロソフト等の通信、コンピュータの専門家にも話した。彼らも、数学は専門だ。「なんてひどいことをやっているのだ」という反応だ。
それ以外にも、政治家、高級官僚、マスコミ、メーカー、外国の研究者、医師、いろいろと紹介してみた。
算数の問題解決学習がいいといった人は、一人もいなかった。
「それはひどい」「あきれたことだ」と反応した人が、ほとんどだった。
とりわけ、小児科医は、「算数の問題解決学習で、ズタズタにされた子どもたちが、いっぱい来ているからである。
再度言う。算数の問題解決学習は、最低・最悪の指導法である。
それを推進している教師は、教師としてのレベルが最も低い人々である。
(反論があるなら、ぜひ特集を組んでも構わないと思っている。)
8月の向山型算数セミナーは、300名の会場にぎっしり、キャンセル待ちが200名、それ以外にも多くの人を断った。
北海道からも20名、沖縄からも5名。全都道府県からの参加があった。
参加者の感想をいくつか。
●石川県のS先生
問題解決学習、いっしょうけんめいやればやるほど悪くなる方法ですね。子どもにはもちろんめいわくですし、教師にとっても教材研究、修業の方法は見失うし、子どもができなくて悲しいし、(親にも文句言われて)時間はつかうし…まさに「百害あって一利なし!」です。
私はさほど熱心ではなかったけれど、研究授業といえばこれ!(問題)でした。未だ中途半端であると恥かしく思っています。
●北海道のR先生
問題解決学習をしている教師達は、授業時間を守りません。平気で5分、10分と延長して授業をします。計算練習が不足していますから、そうでもしないと基礎学力が定着しないのでしょう。その方は、1年生を担任していますが、1年生の下校時刻が全校で一番遅いのです。居残りで勉強させているわけです。当然親にも了解をとっているようですが、あまりにもひどいので一部の親からは苦情がよせられています。親におどしをかけて公にならないようにしているみたいです。
●宮城県の浅野先生
「教科書の読み方」からして、全然違うということを再認識しました。あんなにもゆったりと、包み込むように、あたたかく読むなんて!!自分の読み方は冷たいな…とあらためて思いました。こうしてライブで何度も何度も本物を知って、打ちのめされて、少しでも真似できるように近づけるように修業していくことが大事なんですよね。同じように「〜なさい」という言葉の言い方の優しさ(「毅然とした優しさ」とでも言うのでしょうか)にも驚きでした。向山先生のような言い方を身につけた!!何度でもライブで学びます。
今回のセミナーで問題解決学習と戦う意欲がもりもりとわいてきました。最初から5%の子どもを排除するような指導法には絶対に屈しません。子どもの事実で「しなやかに」「したたかに」戦っていきます。
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- 明治図書