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巻頭論文
算数授業へのこだわり
鉛筆で学習するから,脳も鍛えられ,かしこくなる―それは経験の教えであり,脳科学の教えである―
向山 洋一
向山型算数の学習方法をめぐって,小ぜりあいと思える状態が一部に生まれている。
わけのわからない母親が,したり顔に文句をつけるのだ。
「シャーペンを使わせたっていいじゃありませんか」というようにである。
わけのわからない親は,わけがわからないのだから「しゃかりき」になっては駄目だ。
軽く,うけながすのだ。
「分かりました。勉強中にシャーペンを使わせないというのは教師の常識ですから,どうしても使いたいというのなら認めましょう。
但し,学習中は鉛筆というのが常識ですから,このことはお含みおき下さい。」
このように言って,子ども全員には「鉛筆で勉強するとかしこくなる」ことを説明して,「どうしてもシャーペンを使いたい人は,親からの申し出があれば認める」とすればいいのである。
「シャーペン」などの件を親からつっこまれて,オタオタしている教師がいるが,実に情けない。勉強不足もいいところだ。
これは,小さなことのように見えるが,「学習モデル」「発達時期・テーマ」などを内包した基本的な問題なのである。
四十年以上昔,私が中学生の頃「勉強」のガイドラインになったのは,旺文社,学研が出している二つの雑誌だった。
「中学時代」と「中学コース」である。
その雑誌では,「勉強のやり方」「勉強の極意」が,くり返し,くり返し紹介されていた。
例えば,英単語の覚え方である。
「ある日覚えても,次の日は忘れてしまう。
これは人間なら誰でも同じである。
だから復習をする。すると,忘れ方が少くなくなる。くり返し覚え,くり返し忘れて,やっと記憶できるのである。」
こんなことが書かれていた。
今なら,「脳科学」の成果から,もっと科学的に説明できるだろう。
「脳科学」から見て,四十数年前の説明は,全く正しかったのである。
また,次のような説明もあった。
「単語を覚えるのは,目だけで覚えるのではない。口もつかうのだ。耳で聞きながら覚える。
しかし,もっと大切なのは,指だ。
指で覚えるのである。
指は脳とつながっている。鉛筆でしっかり書いて覚えるのである。」
「指で覚える」ということも,今の脳科学なら常識的なことである。
『頭を鍛える手指訓練法』(健友館)という本がある,平成四年の発行だ。
監修は,群馬大学名誉教授で医学博士の高木貞敬氏である。
脳科学に関心を持った人なら誰でも知っている大脳半球と運動中枢との関連図を見てみよう。手の占める面積は大きい。
「前著より引用」
脳に関する傑出した研究者であるカナダのモントリオール大学の脳外科教授,ウィルダー・ペンフィールドの運動中枢の詳細地図(図2−7)を見てみよう。
人間の大脳のうちで,手のあたりとか口のあたりは,その形が小さいにも拘わらず,大脳中枢の運動領域では他に比べて大きな面積を占めている。このことは,器用なところほど広い場所が分担しているという事実であって,非常に興味深い問題である(胸,腹や腰を支配する運動領域が極めて狭いことから,人間の感覚のうちどの辺がいちばんよく使われ,大切かがよく判る)。
鉛筆の使い方がきちんとしていれば,大脳に刺激がいって,それだけ頭がよくなる。
次のように本は言う。
●大脳を刺激する
もっとくわしくハシやエンピツの使い方を調べてみると,驚くような事実がたくさん出てくる。ハシやエンピツなどで物をつまんだり,字を書いたりすることは,なんでもない動きのような気がするが,人間の体は,この手の動きだけでも,ものすごく複雑な働きをているのである。
手首,指,肩などにある三十以上の関節と五十以上の筋肉が連動するさまは,複雑なばかりでなく,すばやく,大脳をゆさぶる。もともとこの動きは大脳が命令してはじまるものだが,その動きが逆に大脳への刺激ともなるという動きなのである。
「だから,ハシの使い方,エンピツの使い方がうまくなるということは,手の多くの筋肉が動くのでそれだけ脳への刺激も多いので頭脳の働くもよくなるということになる」
ということである。指の動きと頭脳がしっかりつながっている例として,記憶力の問題がある。つまり,黙読するのと,音読するのと,ノートをとりながら読むのとでは,指を動かす三番目がいちばん記憶に残るおぼえ方なのである。
東京医科歯科大教授角田忠信氏(ベストセラー『日本人の脳』の著者)は,次のように述べている。「だいたいウデを担当する脳の面積は広いので,できるだけ指を器用に活発に動かすことは,脳のいい刺激になるんです。ピアノや編み物など指先を器用に使えば使うほど脳は発達します。ハシも一回の食事を一時間として,一日三時間は動かすわけですから,とてもいい刺激。日本人の器用さは,小さいころからハシを使っていることにある。という説もあるようですが,追跡調査は不可能だけれど,今の子たちのようにスプーンなどに慣れてしまったら,脳の発達に影響がないとはあながちいえませんね。
もちろん,鉛筆の正しい使い方も大切である。
ハシの使い方で大切なことは“正しいフォーム”が必要だということである。
かつて野球の王選手がフォームをくずす
人間の右の大脳半球の断面図で,骨格筋を支配する中枢の位置と広さを示すとホームランが出ないでスランプにおちいったように,ハシを上手に使うようになるのも,エンピツで上手な字を書くようになるのも“正しいフォーム”が絶対に必要なことである。まちがったフォームをしていると,手にクセができて大脳が命令しても,思うように動かず,字が上手にならないまま終わってしまう結果になりかねない。
大切なのは,小指球の発達である。
ハシを使ったり,鉛筆などで字を書くためには,親指の動きとそれを支える中指の働き,運動の方向を決める人さし指の働きが分化しなければならない。一歳の幼児では,親指の働きは分化するが,人さし指,中指の働きは完全には分化していないのである。
しかし,三歳から五歳までの間に,幼児は手の三つの機能を獲得していって,それらを働かせてゆくようになる。そして,この機能をうまく操作できるようになるのは,五歳以上になってからである。この年齢になると,幼児はぬり絵をしたり切りぬき遊びができるようになるが,それはこの現われである。
しかし,幼児から少年期にいたる間に発育するもう一つの新しい機能を忘れてはならない。それは小指球(手根骨―図5−1)――私たちが字を書くとき掌が机に一番くっつく部分―の発達である。成人の手の動きを見ると,この部分を使う動きが案外に多いことがわかる。
確かに,支えたり,つまんだりするような小さな複雑な動きは,指によって行われるが,回転させたり,ねじったり,運動の方向を変えたり,前後左右にカジをとったりする大きな動きは,すべて小指球部分と母指球部分で行われている。そして,その力の中心になるのが小指球である,自転車や自動車のハンドルを敏速に操作する時,力の支点となるのがこの部分である。従って,どんなに,親指,人さし指,中指の部分が発達していても,この部分の機能が発達しないと,非常に統制のないものになる。たとえば,文字を書く場合にこの部分に力がないと,しっかりとした規制的な書体にならないのである。
この人たち(向山注・シャーペンで書く子。はしの持ち方が正しくない子)は,五指の接点である中指に,毎日のように緩慢な持続運動を与えることによって,つづく薬指,小指の活動を鈍らせ,手の力の支点となる部分の小指球の発育を妨げているのである。
このようなアンバランス化した指先で運筆を重ねていると,当然そこに障害が生まれても不思議ではない。つまり,鉛筆で字を書くことは一見,三指(親指,人さし指,中指)の共働きで書いているように見えるが,運動生理学からみると,この三指は出先機関にすぎず,ホームベースは小指球になるのである。
小学生の学習には脳を活性化させる,機能を開発するという点からも鉛筆にすべきなのである。
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- 明治図書