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- 向山型算数のシステム修正は充分に注意を払って
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巻頭論文
算数授業へのこだわり
向山型算数のシステム修正は充分に注意を払って
向山 洋一
TOSSランドのMLには,全国数千名の教師の情報がとびかう。
県別MLもあれば,学年別MLもある。
教科別MLもあれば,分野別MLもある。
所帯が大きいMLは,300名を超える。
新しい情報が行きかっている。
「向山型算数ML」も活発だ。
日々の実践でつまずいたことや,うまくいったことが報告される。
質問もあり,紹介もある。
インターネット時代の教育実践研究は,すでにTOSSランド上で開始されている。
MLに参加してない教師は,マラソンで新幹線と勝負するようなものだ。
その差は,開くばかりだ。
TOSSランドへのアクセス数もうなぎのぼりである。
4月上旬は,一日平均1700のアクセスがあった。
4月下旬は,一日平均2500のアクセスとなった。
5月上旬は,一日平均3000になっている。
しかも「ヤフー」の方から「リンクしたい」という申し込みがあったので,許可するつもりである。
サーバーを何とかしなければならない。
TOSSランドの一年間の運営費は,最底で1000万円かかりそうだ。
もちろん,法則化中央事務局がそれを維持する。教師が作り,教師が運営するポータルサイトである。
さて,「向山型算数ML」の中に,興味深いやりとりがあった。
「百マス計算」を,授業中に5分ぐらいやっているという報告である。
計算力がつくというわけだ。
一方,これまで「百マス計算」を熱心にやっていた先輩の中から,「努力は分かるが,成果は小さい」という報告もあった。
さて,私の意見だが,「教師は,自分のクラスでいいと思うものをやったらいい」ということである。
全国には,いろいろなクラスがあるし,子ども達がいる。自分のクラスの子を一番考えているのは担任だ。責任も持っている。
教師はそれぞれプロなのだから,「教師がいい」と思うことをやったらいいのである。
しかし,原則は,ふまえておく必要がある。
MLでも流れた意見だが,「向山型」と「百マス」では,思想が違う。
簡単に言えば,「向山型」は,システム派だし,「百マス」は,体力派である。
体力派の欠点は,「とりこぼし」が出ることだ。実は,「できない子」は,あまりのびないのである。
体力派には「ドリル型」もある。
細長い「横長ドリル」を使って,やたら計算問題をやらせたがる教師だ。
これも,教師の願いに反して「できない子」は,そのままだ。
体力派には,もう一つ「宿題型」がある。
毎日,せっせと,宿題を出すわけだ。プリントにのめり込む教師もいる。
すべて,子ども達に体力で勝負させるタイプだ。
「勉強している気にはなるのだが,その割には,できるようにならない。
できない子はできない子のままだ」というのが,共通している。
もちろん,中には,伸ばしている人がいるかもしれない。その人は,実にきめ細かい指導をしているはずだ。
そうでないと,体力派の各タイプは,ボロボロ落ちてしまうのである。
向山型の授業に「百マス計算」を入れると,「5分程度」時間を割かれる。
MLで,八和田君はこの点を心配していたが,最もなことだ。
「5分」もの異物を入れて,授業をこなしきれる教師は,日本中に5人もいない。
自己流では,本流がガタガタになる。
この点を,充分に注意した上で「向山型」をすべきなのである。
さて,MLの中で「百マス計算は岸本先生が考え出した」とあったが正しくない。
考え出したのは別の人(40年前に新聞で紹介されていた),有名にしたのは岸本先生である。私は,このことを何回も書いているのだが不勉強の人が多いので原典を紹介する。
書名は『勉強力をつける』,朝日新聞社の発行である。発行年は昭和38年7月20日。(P.131〜133)
執筆は大阪市小学校算数研究会のメンバーで,新聞に連載された。
百マス計算の部分は,次の通りである。
かけ算九九を覚えられぬ子
効果のある反復練習−反射的に答えるまでに−
二年生の終わりから三年生のはじめにかけて習う「かけ算九九」は,あらゆるかけ算・わり算の基礎になる大切な勉強です。正しく,しかも反射的に答えがいえるまで,こどもたちの身につけさせなければなりません。
一口に「かけ算九九を間違える」といっても,その誤りにはさまざまの型があります。
「七九62」というA君。彼に「なぜ62になるの?」と聞くと「だって七九だから62でしょう」と答えました。A君はまるっきり記憶ちがいをしているのです。B君は「六八42」といいます。これは唱え方のまずさから来た誤りです。彼は「六八」を「ろくはち」と唱えて来たためについ「六七(ろくしち)42」と混同して「六八42」と覚えこんでしまったのです。「六八」は「ろくは」でなければなりません。そのほか特定の段,例えば7の段や8の段に弱いこどももいます。「六二12」「六三18」……と,はじめから順にいわないと「六八48」の出てこないこどももいます。
かけ算九九の力をつけるには,まず,そのこどもがどういう点に弱いのか,なぜその誤りをするのか,を見つけてやるのが先決です。その上で,おかあさん方には,次の三つに気をつけて指導していただきましょう。
@九九を忘れたら,自分でその九九を作る習慣をつけさせる。「九四」がわからなければ「9+9+9+9」でも「9×3+9」でも,答えが作り出せることを覚えさせてください。親が答えを教えてはいけません。
A正しい唱え方で覚えさせる。九九のいい方は一つのリズムになっています。これを誤ると,B君のように答えまで見失ってしまいます。とくに,教科書でよみがなのついている九九には注意してください。
Bかけられる数とかける数との区別をはっきりさせる。「えんぴつを8本買いました。一本6円です。みなで何円でしょう」といった問題を作ってやって,この場合は「八六」「六八」のどちらを使うべきか,などを考えさせてください。
かけ算九九は,一応の理解ができたら,あとは一にも二にも練習です。いまの算数は,たしかにこどもたちの理解と納得の上に立って学ぶのですが,それだけに練習では,徹底してこどもの力を鍛えねばなりません。九九はとくにそうです。家庭でしていただける効果的な練習法を申上げましょう。
@A図のようにます目を入れた紙に,上と左横の数字を,毎日順序をかえて書き,あいたます目に答えを全部入れさせる。
AB図のようなカードを作って,できたものから区別していく。
BC図のように,細長い紙に2から9までの数字を適当に書込んで,隣同士の数の九九の答えをいわせる。これには,誤りやすい4や7や8を多く書き込む。
引用文の通り,「百マス計算」の原型は新聞で紹介され,本でも示されたものだったのである。大阪市の研究会が出したものだ。それ以前にも実践されていたと推定できる。
教育研究では,このように原実践や修正実践や追試実践を正確に述べるべきだ。それでこそ,教育は,「論」や「学」として成立する。
向山実践が原実践であるにもかかわらず,追試実践が紹介され,追試者が原実践者になっている文が「ツーウェイ」「トークライン」誌上で多く見られる。その数は百をはるかに越える。不勉強,不誠実な論文だ。
論文を発表する時は,このようなことをきちんと調べて書くべきだ。基本がいいかげんな論文は,しょせん三流で終わるのである。
「実践」は,「子どもの事実」を大切にし,論文は「先行論文」を大切にすべきである。
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- 明治図書