- 特集 「発達障がい児本人の訴え〜龍馬くんの6年間〜」から学ぶ
- 特集のねらい
- 「発達障がい児本人の訴え〜龍馬くんの6年間」について
- 障がいの3つめの理解「障害のある人はどのように感じているのか」が大切である
- /
- 特集1 失敗は許されない! 発達障がい児のいる授業開き
- 〔授業開き1年生〕授業を通して「学習のしつけ」をしていく!
- /
- 〔授業開き2年生〕教育活動には,入念な準備と配慮が必要 進級する誇りを大事にする
- /
- 〔授業開き3年生〕「空白禁止/変化のある繰り返し/教えてほめる」この3つで最初の成功体験をさせる
- /
- 〔授業開き4年生〕口に二画を付け加えて漢字を作りなさい
- /
- 〔授業開き5年生〕あたたかな表情で教えほめることを徹底することが大切だ
- /
- 〔授業開き6年生〕絶対ほめる! 事実をほめる! ぜひ用意したい3つの強力な教材
- /
- 〔中学国語〕変化に富んだ指導を,どこまでも明るくテンポよく行う
- /
- 〔中学数学〕小学校から中学校への段差を緩やかなスロープにする
- /
- 〔中学社会〕《教えて,ほめる》の大原則を貫く
- /
- 〔中学理科〕全員参加で,逆転現象をしくみ,ほめる
- /
- 〔中学英語〕中学英語は「予告と承認」が最も必要な教科である
- /
- 特集2 発達障がい児の訴え 教師のNG指導をこう変える
- 〔教師の授業行為〕「うるさい」を定義し,状況を設定し,具体的に教え,ほめること
- /
- 〔国語の時間の指導〕「不規則発言」をSSTに活用する
- /
- 〔算数の時間の指導〕算数の問題解決学習が及ぼす子どもへの悪影響
- /
- 〔図工の時間の指導〕「自分で考えなさい」はNG,教えてほめて成功体験を積ませる
- /
- 〔家庭科の時間の指導〕「視覚と聴覚からの入力」と「教えて,ほめる」
- /
- 〔音楽の時間の指導〕特性を理解し,寄り添いながら,具体的な方法を教える
- /
- 〔体育の時間の指導〕インクルーシブ教育が体育こそ必要
- /
- 〔グループ・学級での話し合い〕発達障がい児本人の訴え(仮称:龍馬くん)から見える学級活動の効果的な運用
- /
- 〔全校集会・学年集会〕「必ずおなかが痛くなる」という訴えにどう対応するか?
- /
- 〔文字を書くこと〕文字を書くことを一つの技術としてとらえ,技術指導をするつもりで教えなくてはならない
- /
- 〔給食の指導〕給食だけが栄養源ではないのだ
- /
- 〔教師の注意・指導〕通俗からの脱却を今求められている。無知が多くの不幸をつくってきた。チェンジの年に!
- /
- 〔ほかの子とのトラブル指導〕トラブルは,「受容」「共感」で「指導」する
- /
- 〔家庭学習のやり方〕何をすればよいかが分かり,ほめられることで,家庭学習がスムーズに進む
- /
- 特集3 すぐに使える 対応力アップのテキスト
- 〔テキスト1〕指示しても動こうとしない子への対応
- /
- 〔テキスト2〕表情・身ぶり・手ぶりで指導できない子への対応
- /
- 〔テキスト3〕友だちとよくけんかになる子への対応
- /
- ミニ特集 1年間ブレのない指導をしよう! 場面別対応の原則
- 宿題をやってこなかった時
- ルールを守らせるために、学級のシステムと個別の対応をする
- /
- 忘れ物を繰り返した時
- 自尊心を下げずに貸し出すことが教師のできるサポートである
- /
- 授業中におしゃべりがとまらない時
- 作業指示が必要だ。その上で「聞いているよ」と分からせる
- /
- 感想や作文が書けずに困っている時
- 作文の苦手な子には「起承転結」を意識して対応する
- /
- 問題ができなくて,イライラしている時
- どの子もできるようになりたい! その気持ちを大切に育てる赤ペン指導
- /
- 机につっぷして,やる気がない時
- 現象面だけを追うのではなく、背景を考え、対応する
- /
- 授業に遅れて戻ってきた時
- やってはいけないことを具体的に教え、できたらほめる
- /
- うまくいかないことがあってパニックになった時
- どんなことも冷静に笑顔で対応すること 全員の子どもたちを励まし続けること
- /
- 相手を叩いてしまった時
- 「行動のみ取り上げる」ことが1年間を貫く原則である
- /
- ちょっかいを出してトラブルになった時
- 1年間をつらぬく、場面対応の原則
- /
- 給食のおかわりでずるをした時
- ずるをさせないおかわりシステム
- /
- 掃除時間に遊んでいる時
- 「子どもの中に入る」ことにより教師の視点がかわり、「まじめな子」をほめられる
- /
- 片付けができなくて,身の回りに物が散乱している時
- 事前の予防がその子の自己肯定感を上げる!
- /
- グラビア
- 第8回 新生TOSS特別支援セミナー in 大阪 ほか
- /
- ギフテッド もう一つの特別支援教育 (第5回)
- 認知の違いを知ることで正しい対処ができる
- /
- 〜「視覚優位」など独自の認知世界を知ることはプロとしての義務である〜
- 写真で見る構造化 分かりやすい情報伝達の工夫 (第5回)
- iPadで広がる視覚支援の可能性
- /
- 〜iPadが秘める無限の可能性を開花させるA〜
- 教育の新課題と特別支援教育
- 小学6年龍馬くんの訴えを教育界のすみずみに広げよう
- /
- 巻頭言
- 龍馬くんが教えてくれた特別支援教育に必要な3つの理解
- /
- 『教育』と『医療』の連携で特別支援教育を強化する (第4回)
- 特別支援教育:医療現場からのアドバイス
- /
- 子どもに力をつけるTOSS教材教具
- 〈かけ算九九尺〉量が分かるから,無理なく楽しくエラーレスで覚えられる
- /
- 〈算数ノートスキル〉入力をスムーズにするのはほめること
- /
- 〈おてほんくん〉作品の仕上がりにみんな満足! 自己肯定感を高められた
- /
- 〈直写ノート〉どの教科でも活躍する直写ノート,社会科の授業の新聞作りでも大活躍
- /
- 若葉マーク必見―これだけは知っておこう 特別支援教育の基本用語 (第2回)
- 子どもの“障がい”ってどんなものがあるの?
- /
- 【最新】特別支援教育―最新用語や最新情報 (第2回)
- 筋ジストロフィーの革新的治療がはじまる
- /
- 〜エクソン・スキッピング療法〜
- “あの有名人”も実は〜 教室で読み聞かせ:元気が出る実話シリーズ (第4回)
- アインシュタイン
- /
- 〜20世紀天才物理学者のことば〜
- 特別支援教育で学校は変わる (第14回)
- 教育相談で失敗しないための技術
- /
- 学級担任に必要な「特別支援教育の基本スキル」 (第2回)
- 『メタ認知』という名の“内なる教師”を育てよう!
- /
- 教育は格闘技だ―フリースクールの実践 (第19回)
- 不登校の生徒への登校刺激
- /
- 〜「頑張って通う」ことよりも「上手に休む」ことを練習して1年間継続的に登校させる〜
- コーディネーターのお仕事拝見 (第8回)
- 校内研修を行う
- /
- 誌上QAコーナー こんな時どうしますか
- 若い教師はこんなことで困っている ベテランから若い教師へ向けてのQA
- /
- 特別支援学校・特別支援学級コーナー
- コーナー担当
- /
- 特別支援学校の実践
- /
- 〜重度重複障がい生徒にも有効な「セロトニン5」〜
- 特別支援学級の実践
- /
- 〜支援学級を元気にする学級経営。ルールの徹底や逆転現象など,それは普通学級と同じだった!〜
- 論文ランキング
- 28号/「ミニ特集 医師との連携」に大きな反響
- /
- 読者のページ
- 28号の学びや感想
- /
- 編集後記
- /
- TOSS特別支援教育イベント情報
- /
- どんな子でも熱中する教材はこれだ!!
- 毎日のように指導をする漢字と計算。発達障がいの子も,混乱することなくステップを踏んで習得していく教材がお薦めです。『あかねこ漢字スキル』と『あかねこ計算スキル』を紹介します。
- /
巻頭言
龍馬くんが教えてくれた特別支援教育に必要な3つの理解
TOSS熊本 吉永順一
1 困った子ではなく「困っている子」
目の不自由な人は,メガネがないと困る。耳の不自由な人は補聴器がないと困るし,足が不自由な人は車いすがないと困る。周囲もそのことにすぐ気づくものである。人はそういう人たちを「困った人」とは決して思わない。ところが発達障がいは見ただけでは分からない。だから教師が不勉強だと発達障がいの子どもを周囲に迷惑をかける「困った子」だと見誤ることがある。この度,東京教育技術研究所より発刊された『発達障がい児本人の訴え〜龍馬くんの6年間〜』を読むとそのことがよく分かる。龍馬くんは障がいから起こってくることで困っていた。学校生活のさまざまな場面で困っていた。
「待つこと」は一番たいへんです。いつも動き回っている僕にとって,静かにしている,待っているというのは,間違いなく不可能です。ADHD(注意欠陥・多動性障がい)という障がいです。
それを本人のせいにされ,多くの人とトラブルを起こしている。結果,無視されたり,いじめにあったりしている。また教師の不適切な指導のためにどうしてよいか分からず混乱し,分からなくなっている。
国語の授業で,「どんな感じですか?」「どんな様子ですか?」「どう思いますか?」という質問をされる。僕の頭の中は,意味が全然分からずチンプンカンプンになる。何も思い浮かばない。頭が真っ白状態。なんかイライラしてくる。
それなのに,3,4年のときは担任から「なんでも障がいのせいにするな!」と言われている。発達障がいに無理解なその担任は龍馬くんを,いつもいつも,毎日毎日,「困った子」扱いした。教師の負担を優先させ,責任を子どもに押しつけている。龍馬くんは「困っている子」であって,「困った子」ではない。
この視点の移動ができるかできないかで,教育の効果は天と地ほどの差がでる。
2 担任しだい
龍馬くんは「発達障がいのことを理解してくれた担任」「発達障がいに無理解だった担任」二人に出会っている。龍馬くんは理解のあった担任に感謝している。自分の「困り感」を解決してくれたからである。龍馬くんの冊子には,授業の基本になることがいくつも記されている。先に国語の例を示したが,発問や指示の基本を守って教えてほしいと願っている。次の指摘などは,発問の基本の「き」が何であるかを教えてくれる。
必要な言葉を正確にきちんと使うことで,やっと分かるのに,わざわざ分からないようにしてしまっている。
私はTOSS熊本の椿原正和氏が大分の某小学校で行った飛び込み授業を拝見したことがある。担任のほかに支援の教師が二人ついている学級での授業である。最初,VTRを見たとき発達障がいの子どもがいることに気づかなかった。何の問題もなかった。全員が授業に集中していた。それは椿原氏が「言葉を削る,一目で分かる工夫,笑顔を絶やさない,変化のある繰り返しで気づかせる,優れた教材をユースウェアどおりに活用する」などの対応の原則を駆使して授業を行っていたからである。
まさに障がいの特性を理解し,適切に対応することで子どもの「困り感」を解決していく授業だった。表現を変えると,「特別支援教育」から「特別」の2文字を取り去るためのプロセスだったとも言える。龍馬くんの冊子は,発達障がいの子どもには本物の教育しか通用しないことを教えてくれている。
3 説明の仕方
障がい特性から生じる問題は,説明がないままだと,周囲に「わがままだ」「自分勝手」「変わっている」と思われてしまう。その結果,周囲は本人に対して叱責を加えたり,無視したりする。このような不適切な対応により,本人は傷つき不適応を起こすといった悪循環に陥りがちである。
だから啓発が必要になるわけだが,問題は説明の仕方である。関係書を読むと自閉症について「@相互的社会関係能力の限界,Aコミュニケーション能力の限界,B想像力の限界」という専門家の言説が載っている。この「三つ組」についての記述は,外側からの見立てによる特徴である。多くはこの段階の説明で終わっている。これでは配慮をお願いしたいと言われても現実は変わっていかない。さらに本人の内面から見える景色や,内側から感じていることのズレがどの程度あるのか分からない。
その点で龍馬くんの冊子は画期的である。説明の仕方が極めて優れている。はじめに,自分の嘆きを繰り返さないでほしいという趣意説明がある。次に,発達障がいについての一般的な説明をし,学校生活で生じた問題場面を取り上げている。さらに,問題の理解の仕方とそれに対する対応について説明している。小学生による,このような説明の仕方は世界にも類を見ないと専門家も言っている。
臨床の面からみると,龍馬くんの冊子は,医師の診断と教師の指導を結びつける役割を果たしてくれる。授業の組み立て方,発問・指示の工夫,子どもへの接し方,学級集団の高め方のヒントがたくさん含まれている。この冊子を読んだ教師は,自分ははたしてまともな教師だったのか,その良心が問われることになる。
まさに,教師評価のリトマス紙である。
-
- 明治図書
- 龍馬君の訴えは,世界初といっていい冊子です。その価値を高める,補充するのが,この29号ですね。最初から最後まで一気に読みました。ぜひとも全教師、保護者に読んで欲しいです。2011/4/9つばさ