特別支援教育教え方教室 2015年3月号
44号 “夢と希望”で構築!特別支援の教育システム

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特別支援教育教え方教室 2015年3月号44号 “夢と希望”で構築!特別支援の教育システム

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ジャンル:
特別支援教育
刊行:
2015年2月23日
対象:
幼・小・中・他
仕様:
B5判 112頁
状態:
絶版
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目次

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特集 “夢と希望”で構築!特別支援の教育システム
特集のねらい
発達障がい児を巻き込む教育システムの構築をTOSSが開発・実践してきた
桑原 和彦
1.特別支援教育〜システムの歴史
TOSS特別支援教育のシステムの歴史と現状
谷 和樹
TOSSが障がい児を支える教育システムを構築した歴史的価値 <1>
大森 修
TOSSが障がい児を支える教育システムを構築した歴史的価値 <2>
吉永 順一
教育現場にもの申す!〜これは許せない教育システム <1>
伴 一孝
教育現場にもの申す!〜これは許せない教育システム <2>
甲本 卓司
2.これが鉄則!〜教師のベーシックスキル
教育システムを構築するために必要な教師のベーシックスキル <1>
松崎 力
教育システムを構築するために必要な教師のベーシックスキル <2>
河田 孝文
教育システムを構築するために必要な教師のベーシックスキル <3>
小嶋 悠紀
教育システムを構築するために必要な教師のベーシックスキル <4>
手塚 美和
国語の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
椿原 正和
国語の指導における教育システム構築のポイント(中学校)
渡辺 大祐
算数の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
木村 重夫
数学の指導における教育システム構築のポイント(中学校)
星野 優子
理科の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
千葉 雄二
理科の指導における教育システム構築のポイント(中学校)
小森 栄治
社会の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
樋口 正和
社会の指導における教育システム構築のポイント(中学校)
進士 かおり
音楽の指導における教育システム構築のポイント(小学校&中学校)
関根 朋子
音楽の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
飯田 清美
体育の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
小田 哲也
体育の指導における教育システム構築のポイント(中学校)
辻 拓也
図工の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
上木 信弘
美術の指導における教育システム構築のポイント(中学校)
高橋 正和
英会話の指導における教育システム構築のポイント(小学校&中学校)
井戸 砂織
英会話の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
笹原 大輔
3.新提案〜システムが安定する発達障がいを教える授業
小学校事例<1>
間嶋 祐樹
小学校事例<2>
西村 純一
中学校事例<1>
森川 正彦
中学校事例<2>
田中 繁一
高等学校(通常学級)
佐藤 泰弘
特別支援学校
河村 要和
4.次世代に伝えたいTOSS特別支援教育の研究遺産
子役付き模擬授業
小野 隆行
セロトニン5
高野 宏子
ギフテッド教育
熊田 賢人
ブレインジム
鈴木 恭子
ビジョントレーニング
堀田 和秀
モンテッソーリ教育
安齋 晴美
5.システムを支える特別支援教育の教材開発
Gペン
畦田 真介
ペーパーチャレラン
越智 鈴穂
「アタマげんきどこどこ」
小貫 榮一
フープとびなわ
三城 利惠
脳トレ士ジュニア
舘野 健三
視知覚トレーニングフラッシュカード
高見澤 信介
百玉そろばん
井上 好文
自作教材
武井 恒
輪郭漢字カード
林 健広
直写ノート&おてほんくん
川原 雅樹
6.これが究極〜対応の技法
教えてほめる
許 鐘萬
無視をする
信藤 明秀
負けを認める
和田 孝子
活動を入れて動かす
赤木 雅美
予防的支援
平野 遼太
薄く書く
岸上 隆文
7.これが究極の日常指導
給食(準備・片付け・食事)指導
戸村 隆之
掃除指導
千葉 康弘
整理整頓
神谷 祐子
友だちとのトラブル対応
中川 貴如
8.これが究極の支援システム
校内ケース会議
浦木 秀徳
個別の教育支援計画
山田 恵子
応用行動分析
大島 英明
特別支援教育コーディネーター
加賀谷 晃子
9.万策尽きるまでの対応ドラマ〜この指導であの子が変わった!
「すごろく」の進み方が分かった時,「1+1」ができた
鎌倉 由佳
10年後のあの子からの電話―「就職しました」
小松 裕明
「事前の予告」で劇的に解決
石坂 陽
「わかる授業」・「ほめる授業」で落ち着いたSくん
並木 孝樹
10.応援メッセージ〜これからの特別支援教育への期待
医師と学校が連携して,地域の子どもを一人でも救うことは,教師の責務である
大場 寿子
特別支援教育はこれからの5年間が勝負
小嶋 瑞紀
生徒指導部との協働を実践しよう
伊藤 雅亮
特性にあった社会参加を目標に適切な学校選択の支援を
大場 龍男
グラビア
TOSS熱海合宿2015 2015.1.10〜2015.1.11 静岡 熱海後楽園ホテル
小野 隆行
〜「スキルシェア」から「システムシェア」へ〜
学校を変える校内特別支援教育通信 (第2回)
研修の成功の秘訣は,復習から入ること
小野 隆行
写真で早分かり 子どもの特性に合わせた“情報伝達の構造化” (第20回)
学校で最も大切な「原理」を視覚化する
小嶋 悠紀
〜原理まで踏み込んで「教えて→ほめる」〜
教育の新課題と特別支援教育
「夜8時に寝かす」家庭は,けっこうあります
向山 洋一
巻頭言
「黎明期」の特別支援教育あれこれ
向山 行雄
『教育』と『医療』の連携で特別支援教育を強化する (第19回)
教育と医療の連携で,対象児の症状と障がいを理解し,可能性を引き出す
福田 恵美子
『龍馬くんの訴え』から学ぶ発達障がい指導原則 (第15回)
小さなことを毎日無理なく続けるから,できないことができるようになる
今井 豊
子どもに力をつけるTOSS教材教具
〈ソーシャルスキルかるた〉理屈を抜きにして望ましい行動を楽しく教える
森本 麻美
〈アタマげんきどこどこ〉集中力やコミュニケーション力を高める教材
吉川 たえ
〈わくわくずかん『こんちゅうはかせ』〉Aくんが“虫取り名人”になった!
川津 知佳子
〈TOSSノート〉TOSSノートは、特別支援を要する子に優しいノートである
小松 和重
ポイントを外さない〜特別支援の子の保護者への対応術 (第13回)
保護者の思いを受け止め,子どもの成長の様子をこまめに知らせる努力を
沼田 能昌
本を読み,知識を持って対応すれば信頼される
細井 俊久
私は,この本をこう読んだ (第13回)
『人間発達学』福田恵美子著(中外医学社)
豊田 雅子
〜誕生から死までの発達が凝縮された一冊〜
『医師と教師が発達障害の子どもたちを変化させた』宮尾益知監修・谷和樹編(学芸みらい社)
福田 辰徳
〜医教連携のあり方を示す本〜
特別支援教育を視野に入れた学校づくり (第12回)
「教えてほめる」指導法の工夫を学校経営の全面に据える
木村 宏之
TOSS特別支援教育を知る前と後 (第5回)
「特別支援教育はオーダーメイドだ」という自覚をもった
村野 聡
「予防」の観点から特別支援教育を見直す
水本 和希
学級担任に必要な「特別支援教育の基本スキル」 (第17回)
特別支援教育は脳科学だ!
平山 諭
〜エビデンスにも興味を持とう〜
教育は格闘技だ―フリースクールの実践 (第34回)
「人間の生きていく気力を育てる」翔和学園の教育
伊藤 寛晃
〜翔和学園卒業生は、就職率が高く、継続率も高い〜
続・中学校を改革する 特別支援教育で中学校が変わる (第5回)
コミュニケーションのズレにアプローチする
長谷川 博之
若手女教師の特別支援教育奮闘記 (第5回)
“得意”を伸ばし障がいを補う「ギフテッド」教育
岸上 水月
発達障がい児への食事指導 (第5回)
食事指導を進める手立て
河村 要和
〜今後、重要な指導の一部として、教科指導と同レベルで教育課程に位置づける必要性〜
発達障がい児へのキャリア教育/就労指導 (第5回)
卒業後の生活
富山 比呂志
特別支援学級経営&授業づくりのポイント (第3回)
「記録をとり続ける」こと
野口 澄
誌上QAコーナー こんな時どうしますか
学習中,机に突っ伏してしまう子への対応
平山 諭藤原 能成
〜セロトニンを出させ、心を安定させる〜
特別支援学校・特別支援学級コーナー
コーナー担当
五十嵐 勝義間嶋 祐樹
特別支援学校の実践
五十嵐 勝義
〜絵を眺めるように漢字が覚えられる教材「輪郭漢字カード」〜
特別支援学級の実践
渡邉 俊郎
〜できることを増やし、自信をつける。それが教師の仕事である。〜
特別支援のモノ・ヒト・コト (第4回)
【東京都】わが校の「モノ」ご紹介
近江 利江
読者のページ
43号の学びや感想
桑原 和彦
TOSS特別支援教育イベント情報
桑原 和彦
編集後記
桑原 和彦
この号のバックヤード (第4回)
特別支援教育を学ぶ上での『おすすめ基本文献〜ベスト12選』
小野 隆行
どんな子でも熱中する教材はこれだ!!
いつでも、どこでも、楽しく視知覚トレーニング教材! 1分間フラッシュカード「視知覚トレーニング編」@〜Dセット
桑原 和彦

巻頭言 「黎明期」の特別支援教育あれこれ

帝京大学教職大学院教授・元全国連合小学校長会会長/向山 行雄


1特別支援教育という言葉

冷静に考えてみると,「特別支援教育」とは,かくもあいまいでとらえどころのない用語である。「特別支援教育」の用語は,平成17年2月の中教審答申で基本的な考え方が示されてから使われ始めた。すでに10年が経過して,教育界は当たり前に受け入れている。

だが,そもそも「特別な支援」を必要とする教育は,何も心身障がい教育だけではない。

困難な家庭環境で生活する子ども,不登校やひきこもりの子ども,同和地区で生活する子ども,山間島嶼部の僻地で生活する子ども,日本語の話せない子どもなど,『特別な支援』を必要とする教育は多方面で必要とされている。

例えば,「へき地教育」を僻地の人が聞くと嫌な思いをするから,「特別支援教育」と呼ぼう。日本語学級とすると,日本語が離せないことが分かるから特別支援教育としよう。同和教育では,同和地区の人々が不快に感じるから特別支援教育にしよう。

仮にこれらの言葉を,「特別な支援」と置き換えると,ファジーな語感になり,具体性が薄れる。それは支援を必要とする当事者にとって,心地よく響くかもしれない。しかし,「特別」という語の陰に隠れて,事実が見えにくくなる問題点が生じる。

心身障害教育を特別支援教育と言い換えたことで,国民にとっては,かえって概念があいまいになってしまった面もある。「特別支援学級」という語を聞いて,教育関係者はすぐにその内実を理解できるが,多くの国民はイメージしにくい。

かつて使用していた,「心身障害学級」「養護学校」「ろう学校」「盲学校」という語の方が一般国民にとって,その内実をイメージしやすい。だから理解と協力も得やすい。

特別支援教育という語は,学校教育の中では確かに定着した。しかし,まだ黎明期である。たまには多様な角度から眺めることも必要である。


2「あすなろさん」と呼ぶ教師

多くの学校では,特別支援学級の名称を,「あすなろ学級」「どんぐり学級」などと名付けている。あるいは,各学年3学級編成の学校では,「5組」と名付ける。

特別支援学級に通う子どもや保護者の心情を慮(おもんぱか)ると,そのくらいの配慮をすることも必要かもしれない。

しかし,例えば職員会議などで,「では,あすなろさんから提案してください」と発言する教師,全校朝会で「どんぐりさん,立派に並んでいますね」と言う教師が多い。

このように多くの学校には,特別支援学級を「さん」付けする風潮がある。一見,特別支援学級を大切にしている言葉である。ふつう,自分の学校の中で,「6年さん」とは呼ばない。しかし,あすなろ学級を「あすなろさん」と呼ぶ。そこには,自分たちとは違う異質なものに対する「さんづけ」の意識があるのではないかと推察する。これは見えにくい差別である。

特別支援学校では,職員間で話すときに子どもたちのことを「お子さん」と呼ぶ人が多い。通常学級の職員間で話すときは,「子どもたち」と呼ぶ。「お子さん」と言う人はいない。

「お子さん」という用法の陰にも,必要以上に気を遣うという〈特殊性〉が見え隠れする。ぜひ,特別支援教育にかかわる言語感覚を見直したいものだ。


3黎明期の特別支援教育

民主党政権時代,鳩山総理は「障がい者制度改革推進会議」を設置して,急進的な障がい者制度改革を進めようとした。推進会議のメンバーには,過激なインクルーシブ教育論者などもいて,これまでの我が国の心身障がい教育を否定しようとした。その一つが,特別支援学校を廃止して,障がい児をすべて通常の学校に受け入れるというプランである。

そのような事態になれば,我が国の学校制度は瓦解する。危機感を抱いた校長会は,小学校,中学校,特別支援学校の会長がそろい踏みで,鳩山総理大臣に慎重に議論する場を設けるように申し入れをした。

それを受けて,平成22年7月に中教審初等中等教育分科会の中に「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」を設置した。全連小会長として,私もその委員会のメンバーとなった。メンバーは障がい当事者を始め各界の代表で構成され,活発な議論を行った。

私のスタンスは,公立学校全体の教育体制を維持することが重要であり,行き過ぎたインクルーシブ教育の歯止めをするというものだった。通常の学級に存在する特別支援の子どもが引き金となり,学級崩壊を引き起こした事例なども紹介した。会議を参観する多くの障がい者団体の人々から見ると,「守旧派」の権化のように感じたかもしれない。

約2年間の審議を経て,平成24年7月「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」という報告書をまとめた。

この報告書では,就学先決定の仕組みについて,様々な考えを集約して,一定のコンセンサスを得るようにした。

また,「合理的配慮」についても,一つの章を起こしてまとめた。そもそも,「合理的配慮」は,「障害者の権利条約」第2条にあり,その内容については各国の裁量にゆだねられている。

特別委員会での定義は「学校の設置者及び学校に対して,体制面,財政面において,均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」とした。大衆迎合主義に流されぬ,軸足がしっかりとした定義である。

「合理的配慮」について,各学校での内容検討が期待されている。

特別支援教育は,まだ黎明期にある。しばらくは,混迷の時期が続くかもしれぬ。それでも,各学校で,次第に理解が深まっている状況にあり,喜ばしいと思っている。

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      明治図書
    • 教育のシステムは、子どもを安定して指導するために必要だと思います。
      本誌を読み込んで、勉強します!
      2015/2/8つばさ

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