- 特集 “夢と希望”で構築!特別支援の教育システム
- 特集のねらい
- 発達障がい児を巻き込む教育システムの構築をTOSSが開発・実践してきた
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- 1.特別支援教育〜システムの歴史
- TOSS特別支援教育のシステムの歴史と現状
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- TOSSが障がい児を支える教育システムを構築した歴史的価値 <1>
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- TOSSが障がい児を支える教育システムを構築した歴史的価値 <2>
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- 教育現場にもの申す!〜これは許せない教育システム <1>
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- 教育現場にもの申す!〜これは許せない教育システム <2>
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- 2.これが鉄則!〜教師のベーシックスキル
- 教育システムを構築するために必要な教師のベーシックスキル <1>
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- 教育システムを構築するために必要な教師のベーシックスキル <2>
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- 教育システムを構築するために必要な教師のベーシックスキル <3>
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- 教育システムを構築するために必要な教師のベーシックスキル <4>
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- 国語の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
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- 国語の指導における教育システム構築のポイント(中学校)
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- 算数の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
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- 数学の指導における教育システム構築のポイント(中学校)
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- 理科の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
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- 理科の指導における教育システム構築のポイント(中学校)
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- 社会の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
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- 社会の指導における教育システム構築のポイント(中学校)
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- 音楽の指導における教育システム構築のポイント(小学校&中学校)
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- 音楽の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
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- 体育の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
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- 体育の指導における教育システム構築のポイント(中学校)
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- 図工の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
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- 美術の指導における教育システム構築のポイント(中学校)
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- 英会話の指導における教育システム構築のポイント(小学校&中学校)
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- 英会話の指導における教育システム構築のポイント(小学校)
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- 3.新提案〜システムが安定する発達障がいを教える授業
- 小学校事例<1>
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- 小学校事例<2>
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- 中学校事例<1>
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- 中学校事例<2>
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- 高等学校(通常学級)
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- 特別支援学校
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- 4.次世代に伝えたいTOSS特別支援教育の研究遺産
- 子役付き模擬授業
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- セロトニン5
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- ギフテッド教育
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- ブレインジム
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- ビジョントレーニング
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- モンテッソーリ教育
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- 5.システムを支える特別支援教育の教材開発
- Gペン
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- ペーパーチャレラン
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- 「アタマげんきどこどこ」
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- フープとびなわ
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- 脳トレ士ジュニア
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- 視知覚トレーニングフラッシュカード
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- 百玉そろばん
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- 自作教材
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- 輪郭漢字カード
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- 直写ノート&おてほんくん
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- 6.これが究極〜対応の技法
- 教えてほめる
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- 無視をする
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- 負けを認める
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- 活動を入れて動かす
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- 予防的支援
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- 薄く書く
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- 7.これが究極の日常指導
- 給食(準備・片付け・食事)指導
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- 掃除指導
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- 整理整頓
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- 友だちとのトラブル対応
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- 8.これが究極の支援システム
- 校内ケース会議
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- 個別の教育支援計画
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- 応用行動分析
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- 特別支援教育コーディネーター
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- 9.万策尽きるまでの対応ドラマ〜この指導であの子が変わった!
- 「すごろく」の進み方が分かった時,「1+1」ができた
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- 10年後のあの子からの電話―「就職しました」
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- 「事前の予告」で劇的に解決
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- 「わかる授業」・「ほめる授業」で落ち着いたSくん
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- 10.応援メッセージ〜これからの特別支援教育への期待
- 医師と学校が連携して,地域の子どもを一人でも救うことは,教師の責務である
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- 特別支援教育はこれからの5年間が勝負
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- 生徒指導部との協働を実践しよう
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- 特性にあった社会参加を目標に適切な学校選択の支援を
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- グラビア
- TOSS熱海合宿2015 2015.1.10〜2015.1.11 静岡 熱海後楽園ホテル
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- 〜「スキルシェア」から「システムシェア」へ〜
- 学校を変える校内特別支援教育通信 (第2回)
- 研修の成功の秘訣は,復習から入ること
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- 写真で早分かり 子どもの特性に合わせた“情報伝達の構造化” (第20回)
- 学校で最も大切な「原理」を視覚化する
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- 〜原理まで踏み込んで「教えて→ほめる」〜
- 教育の新課題と特別支援教育
- 「夜8時に寝かす」家庭は,けっこうあります
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- 巻頭言
- 「黎明期」の特別支援教育あれこれ
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- 『教育』と『医療』の連携で特別支援教育を強化する (第19回)
- 教育と医療の連携で,対象児の症状と障がいを理解し,可能性を引き出す
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- 『龍馬くんの訴え』から学ぶ発達障がい指導原則 (第15回)
- 小さなことを毎日無理なく続けるから,できないことができるようになる
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- 子どもに力をつけるTOSS教材教具
- 〈ソーシャルスキルかるた〉理屈を抜きにして望ましい行動を楽しく教える
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- 〈アタマげんきどこどこ〉集中力やコミュニケーション力を高める教材
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- 〈わくわくずかん『こんちゅうはかせ』〉Aくんが“虫取り名人”になった!
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- 〈TOSSノート〉TOSSノートは、特別支援を要する子に優しいノートである
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- ポイントを外さない〜特別支援の子の保護者への対応術 (第13回)
- 保護者の思いを受け止め,子どもの成長の様子をこまめに知らせる努力を
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- 本を読み,知識を持って対応すれば信頼される
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- 私は,この本をこう読んだ (第13回)
- 『人間発達学』福田恵美子著(中外医学社)
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- 〜誕生から死までの発達が凝縮された一冊〜
- 『医師と教師が発達障害の子どもたちを変化させた』宮尾益知監修・谷和樹編(学芸みらい社)
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- 〜医教連携のあり方を示す本〜
- 特別支援教育を視野に入れた学校づくり (第12回)
- 「教えてほめる」指導法の工夫を学校経営の全面に据える
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- TOSS特別支援教育を知る前と後 (第5回)
- 「特別支援教育はオーダーメイドだ」という自覚をもった
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- 「予防」の観点から特別支援教育を見直す
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- 学級担任に必要な「特別支援教育の基本スキル」 (第17回)
- 特別支援教育は脳科学だ!
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- 〜エビデンスにも興味を持とう〜
- 教育は格闘技だ―フリースクールの実践 (第34回)
- 「人間の生きていく気力を育てる」翔和学園の教育
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- 〜翔和学園卒業生は、就職率が高く、継続率も高い〜
- 続・中学校を改革する 特別支援教育で中学校が変わる (第5回)
- コミュニケーションのズレにアプローチする
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- 若手女教師の特別支援教育奮闘記 (第5回)
- “得意”を伸ばし障がいを補う「ギフテッド」教育
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- 発達障がい児への食事指導 (第5回)
- 食事指導を進める手立て
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- 〜今後、重要な指導の一部として、教科指導と同レベルで教育課程に位置づける必要性〜
- 発達障がい児へのキャリア教育/就労指導 (第5回)
- 卒業後の生活
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- 特別支援学級経営&授業づくりのポイント (第3回)
- 「記録をとり続ける」こと
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- 誌上QAコーナー こんな時どうしますか
- 学習中,机に突っ伏してしまう子への対応
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- 〜セロトニンを出させ、心を安定させる〜
- 特別支援学校・特別支援学級コーナー
- コーナー担当
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- 特別支援学校の実践
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- 〜絵を眺めるように漢字が覚えられる教材「輪郭漢字カード」〜
- 特別支援学級の実践
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- 〜できることを増やし、自信をつける。それが教師の仕事である。〜
- 特別支援のモノ・ヒト・コト (第4回)
- 【東京都】わが校の「モノ」ご紹介
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- 読者のページ
- 43号の学びや感想
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- TOSS特別支援教育イベント情報
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- 編集後記
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- この号のバックヤード (第4回)
- 特別支援教育を学ぶ上での『おすすめ基本文献〜ベスト12選』
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- どんな子でも熱中する教材はこれだ!!
- いつでも、どこでも、楽しく視知覚トレーニング教材! 1分間フラッシュカード「視知覚トレーニング編」@〜Dセット
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巻頭言 「黎明期」の特別支援教育あれこれ
帝京大学教職大学院教授・元全国連合小学校長会会長/向山 行雄
1特別支援教育という言葉
冷静に考えてみると,「特別支援教育」とは,かくもあいまいでとらえどころのない用語である。「特別支援教育」の用語は,平成17年2月の中教審答申で基本的な考え方が示されてから使われ始めた。すでに10年が経過して,教育界は当たり前に受け入れている。
だが,そもそも「特別な支援」を必要とする教育は,何も心身障がい教育だけではない。
困難な家庭環境で生活する子ども,不登校やひきこもりの子ども,同和地区で生活する子ども,山間島嶼部の僻地で生活する子ども,日本語の話せない子どもなど,『特別な支援』を必要とする教育は多方面で必要とされている。
例えば,「へき地教育」を僻地の人が聞くと嫌な思いをするから,「特別支援教育」と呼ぼう。日本語学級とすると,日本語が離せないことが分かるから特別支援教育としよう。同和教育では,同和地区の人々が不快に感じるから特別支援教育にしよう。
仮にこれらの言葉を,「特別な支援」と置き換えると,ファジーな語感になり,具体性が薄れる。それは支援を必要とする当事者にとって,心地よく響くかもしれない。しかし,「特別」という語の陰に隠れて,事実が見えにくくなる問題点が生じる。
心身障害教育を特別支援教育と言い換えたことで,国民にとっては,かえって概念があいまいになってしまった面もある。「特別支援学級」という語を聞いて,教育関係者はすぐにその内実を理解できるが,多くの国民はイメージしにくい。
かつて使用していた,「心身障害学級」「養護学校」「ろう学校」「盲学校」という語の方が一般国民にとって,その内実をイメージしやすい。だから理解と協力も得やすい。
特別支援教育という語は,学校教育の中では確かに定着した。しかし,まだ黎明期である。たまには多様な角度から眺めることも必要である。
2「あすなろさん」と呼ぶ教師
多くの学校では,特別支援学級の名称を,「あすなろ学級」「どんぐり学級」などと名付けている。あるいは,各学年3学級編成の学校では,「5組」と名付ける。
特別支援学級に通う子どもや保護者の心情を慮(おもんぱか)ると,そのくらいの配慮をすることも必要かもしれない。
しかし,例えば職員会議などで,「では,あすなろさんから提案してください」と発言する教師,全校朝会で「どんぐりさん,立派に並んでいますね」と言う教師が多い。
このように多くの学校には,特別支援学級を「さん」付けする風潮がある。一見,特別支援学級を大切にしている言葉である。ふつう,自分の学校の中で,「6年さん」とは呼ばない。しかし,あすなろ学級を「あすなろさん」と呼ぶ。そこには,自分たちとは違う異質なものに対する「さんづけ」の意識があるのではないかと推察する。これは見えにくい差別である。
特別支援学校では,職員間で話すときに子どもたちのことを「お子さん」と呼ぶ人が多い。通常学級の職員間で話すときは,「子どもたち」と呼ぶ。「お子さん」と言う人はいない。
「お子さん」という用法の陰にも,必要以上に気を遣うという〈特殊性〉が見え隠れする。ぜひ,特別支援教育にかかわる言語感覚を見直したいものだ。
3黎明期の特別支援教育
民主党政権時代,鳩山総理は「障がい者制度改革推進会議」を設置して,急進的な障がい者制度改革を進めようとした。推進会議のメンバーには,過激なインクルーシブ教育論者などもいて,これまでの我が国の心身障がい教育を否定しようとした。その一つが,特別支援学校を廃止して,障がい児をすべて通常の学校に受け入れるというプランである。
そのような事態になれば,我が国の学校制度は瓦解する。危機感を抱いた校長会は,小学校,中学校,特別支援学校の会長がそろい踏みで,鳩山総理大臣に慎重に議論する場を設けるように申し入れをした。
それを受けて,平成22年7月に中教審初等中等教育分科会の中に「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」を設置した。全連小会長として,私もその委員会のメンバーとなった。メンバーは障がい当事者を始め各界の代表で構成され,活発な議論を行った。
私のスタンスは,公立学校全体の教育体制を維持することが重要であり,行き過ぎたインクルーシブ教育の歯止めをするというものだった。通常の学級に存在する特別支援の子どもが引き金となり,学級崩壊を引き起こした事例なども紹介した。会議を参観する多くの障がい者団体の人々から見ると,「守旧派」の権化のように感じたかもしれない。
約2年間の審議を経て,平成24年7月「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」という報告書をまとめた。
この報告書では,就学先決定の仕組みについて,様々な考えを集約して,一定のコンセンサスを得るようにした。
また,「合理的配慮」についても,一つの章を起こしてまとめた。そもそも,「合理的配慮」は,「障害者の権利条約」第2条にあり,その内容については各国の裁量にゆだねられている。
特別委員会での定義は「学校の設置者及び学校に対して,体制面,財政面において,均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」とした。大衆迎合主義に流されぬ,軸足がしっかりとした定義である。
「合理的配慮」について,各学校での内容検討が期待されている。
特別支援教育は,まだ黎明期にある。しばらくは,混迷の時期が続くかもしれぬ。それでも,各学校で,次第に理解が深まっている状況にあり,喜ばしいと思っている。
本誌を読み込んで、勉強します!