- 特集 「一人の例外もなく」の原則を貫く授業実践
- 「一人の例外もなく」の原則を貫く向山実践はこれだ
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- 「豆電球」の導入時に見る「一人の例外もなく」の原則
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- 医学と教育の可能性をさぐる
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- 五色百人一首で「この子に自信をつけさせたい」の夢を現実にする
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- 「一人の例外もなく」の原則を貫く授業実践に向かって
- 低学年
- 学年でユースウェアを学ぶことで,「一人の例外もなく」を目指す
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- 「指示が分かる」「できる」「ほめられる」場面をたくさんつくる
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- 教師だからこそできる「環境調整」を探る!
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- すぐれた教材を使って授業する
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- 自己選択をして,やったできたを自分でつかませる
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- 中学年
- 漢字スキル全員100点! 子どもたちは「可能性」を感じ,あきらめない気持ちをもち,「苦手に挑戦する」ことにつながった
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- 1つだけさせたいことは何か? それだけを,絞ってさせる
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- 子どもに「どうせ〜」ではなく「やればできる」を!
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- 優れた組み立ての中に,様々な工夫があるTOSS型英会話指導だからこそ,A君は英会話授業が大好きになった
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- 向山型で「視覚」「聴覚」共に鍛える
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- 高学年
- 向山型算数のおかげで担任は信頼を取り戻し,子どもたちは自信を取り戻した
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- 目玉を書く国語なんて,あり? これならおもしろいな
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- 教師が変われば,子どもたちも激変する
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- 向山型算数難問システムが全員を熱中させる
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- 友だちがいるからこそ
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- 中学・高校
- 感情的にならずに受け入れる そしてほめる,認める
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- 何があろうと生徒の可能性を信じ続ける
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- 教科指導の充実と,教科の枠を越えた学力補強対策が必要である
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- 「不登校のA君を何とかできるのは自分しかいない」という考えが自分を支えA君を変えた
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- 生徒に「自信と居場所」を与える授業! 10の要素と3つのポイント
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- 「一人の例外もなく」の原則を貫くとなぜ発達障害児が変わるのか
- 成功体験の積み重ね。ほめ続けられる自信。そして困難の突破
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- 子どもを救うのは「仲間」である
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- 「一人の例外もなく」は,教師の執念が必要である。あきらめた瞬間に子どもの可能性はなくなるのだ
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- 「たった一人の例外もなく」と言える境地に立つことがプロの証だ!
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- 教師の都合で授業をしない。生徒の実態に合わせることが授業改善につながる
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- 「大縄跳び」「ムカデ競走」の練習で「みんなが」それぞれに育った
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- ミニ特集 発達障害児の生活リズム
- 就労生活の基礎は生活リズムの安定
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- 一日をパターン化することで生じる様々なメリット
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- まずは「食べたい」という思いを育んでいった摂食指導
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- 父親の協力と成功体験で自分への自信を取り戻したことで,毎日登校できるようになったA君
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- ステップを踏んだ排泄指導は就職への鍵となる
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- 続けられる課題設定を
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- 1週間の時間割の順序,1時間の授業の組み立て方を一定にすると子どもは安定する
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- 朝,早く登校する行動を活用し,お手伝いを通して,持続力をつけ,自尊感情を高める
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- 歯磨きに挑戦する
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- 自閉症生徒の偏食は無理強いせず,「生活の質」を考えてフィードバックしながら少しずつ指導しよう
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- 休み方やイライラのコントロールの仕方を教えることで登校を安定させる
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- グラビア
- 第6回TOSS特別支援教育セミナー ほか
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- 発達の凸凹に沿った教育をすることが必要である
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- 障がい者制度改革推進本部発の「インクルーシブ教育」はどう推進されようとしているのか
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- 巻頭言
- まだまだ,特別支援教育は教師の世界の常識になっていない
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- 三人娘の教師修業 (第1回)
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- 泳ぎ続ける回遊魚のように,教師修業を続けたい!
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- 「ポイントをおさえること」「すきま時間活用」で,会議を大幅短縮できる!
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- 大森修の一刀両断 教育再生にもの申す (第10回)
- 第4の発達障害をうまない仕組みが学校にあるか
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- 吉田教頭からみた特別支援教育 (第11回)
- 短く端的で明確な指示を出す
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- 自閉症圏の子どもたちの対人関係能力を伸ばす試み (第6回)
- 変化に対応する 変化を楽しむ
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- 教育は格闘技だ―フリースクールの実践 (第15回)
- 母の労をねぎらい,学校でできることは手伝う
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- コーディネーターのお仕事拝見 (第4回)
- 観察と記録
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- 誌上QAコーナー こんな時どうしますか
- 翔和学園の研修方法と内容に迫る
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- 特別支援学校・特別支援学級コーナー
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- 特別支援学校の実践
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- 〜感覚統合を生かした支援アプローチ〜
- 特別支援学級の実践
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- 〜アスペルガーの子にも受け入れられた難問〜
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- 24号/「具体的場面での指導」「余暇の過ごし方」に大きな反響が
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- 編集後記
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- TOSS特別支援教育イベント情報
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- 酒井式描画法で授業する!
- 酒井式『鏡の中の自画像』で15歳の自分を描く
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巻頭言
まだまだ,特別支援教育は
教師の世界の常識になっていない
岡山市立宇野小学校 小野隆行
1 なぜ教師の世界の常識にならないのか
向山氏は,かつて『跳び箱は誰でも跳ばせられる』(明治図書)の中で,次のように述べた。
跳び箱を跳ばせる技術は,実にかんたんなものです。(中略:小野)そんな簡単な技術が,教師の世界になぜ広まらなかったのでしょうか。跳び箱を跳ばせられることが,どうして教師の世界の常識にならなかったのでしょうか。(p.10)
「跳び箱を跳ばせられること」ということを特別支援教育の内容に変えてみる。
「教室の前面掲示をすっきりとさせること」が,どうして教師の世界の常識にならなかったのでしょうか。
教室の前面をすっきりさせるというのは,特別支援教育の中でも基本中の基本である。
情報の選択ができない発達障害の子どもたちにとって,前面の掲示は邪魔でしかない。
その邪魔でしかない掲示物をわざわざはっているのはだれか?
子どもたちを困らせているのはだれか?
それが,子どもたちを救うべき存在である教師なのである。
もっとも簡単な掲示物でさえ,こうなのだ。他は推して知るべしである。
このような状態で,「みんなで話し合いましょう」「一人一人をみましょう」などとやっている。
それが,特別支援教育の現状である。
2 むちゃくちゃな指導がはびこる
現場では,さらに恐ろしい現実がある。
校長が,前面に掲示物をはるように担任に強く指導する。
ある教師は,校長に発達障害の児童にとって,前面掲示は非常に邪魔になることを話したそうである。
すると,次のように答えたそうだ。
では,障害のある子のために,他の児童まで我慢しなくてはいけないのか。
何という言葉だろうか。これが,公的な学校という場所で許されていいのだろうか。
前面掲示がなくなっても,障害のない子は何も困らない。さらに,掲示物がはってあるから学習の力が伸びたというのは,根拠も何もない。仮に効果があると言うのなら,必要のあるときだけはればいい。
この地区でも,当然,特別支援教育の官制研修が行われていて,そこで前面掲示についても指導があったと言う。そのことを知った上で,このように指導するのである。
また,指導主事が学校訪問で,「掲示物」についての指導をすることもあると言う。
初任者担当教官が,初任者に指導することもあると言う。
これらは,許されていいことだろうか。
そして,もっと大きな問題は,次のことである。
これらの事例は,日本全国で日常的に起きている。
特別支援教育が推進されて,すでに何年もたった。学校には特別支援コーディネーターが置かれ,毎年のように研修も行われている。
それでも,もっとも簡単なことでさえ,教師の世界の常識にはなっていない。
このことこそが,現在の特別支援教育が抱える大きな問題なのである。
3 一人一人の具体的な行為が子どもを救う
本誌を読んでいる読者は,特別教育に関して熱心な教師であろう。
このような読者が一人でも増えていくことが,特別支援教育の今後を明るくすることにつながっていく。
しかし,自分だけが学んでいても現状は何も変わらない。
先ほどのような現状を改善するために,自分がこの1年間で何をしたのか。
ぜひ振り返ってもらいたい。
具体的な行為で,周りに働きかけただろうか。学校全体が難しければ,学年でもいい。自分の担当分野でもいい。
だれにでもできることはあるはずだ。
例えば,職員会議や学年に提案する。セミナーや学習会に誘う。本誌を紹介する。何でもできることはある。
かつて,運動会の全体練習で広汎性発達障害の児童がパニックになったことがある。
後で話をすると,指導する教師が大声で怒鳴ったことが原因だと言う。
しかし,その教師は,その子にではなく全校児童に対して怒鳴っていたのである。
それでも,このような状態になったのだ。
その子は,「大声で怒鳴られると,頭の中がぐるぐると回って,心臓がドキドキしてどうしようもなくなるんだ」と話した。
全体指導で教師が怒鳴ることは,決して珍しい光景ではないだろう。
しかし,そのことで情緒的なこじれを起こす子がいるのである。これは,その子の人生を左右することである。
このようなことを,すべての学校からなくしていきたい。そのためには,一人一人の具体的な働きかけが必要だ。
例え小さな行為でもいい。その一つ一つの行為が,発達障害の子を救うことになるのだ。
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- 明治図書