教育オピニオン
日本の教育界にあらゆる角度から斬り込む!様々な立場の執筆者による読み応えのある記事をお届けします。
美容で始める「食育」の授業
食環境ジャーナリスト金丸 弘美
2013/9/1 掲載

 今、2つの大学で食文化論を教えている。女子大での授業では、いちばん最初に「私の授業の目的はきみたちが美しくなることです」と話す。するとみんな目が輝く。というのも女学生の最大の関心はダイエットや美容だからだ。
 そのあと「腸内セルフチェックシート」(辨野義己さん作成)を配付する。腸内細菌のバランスと健康の目安になるものだ。
 それには23項目がある。

生活習慣

  • トイレの時間は決まっていない
  • タバコをよく吸う
  • 肌荒れや吹き出物が悩みの種
  • 運動不足が気になる
  • おならが臭いと言われる
  • 顔色が悪く、老けて見られる
  • ストレスをいつも感じる
  • 寝つきが悪く、寝不足

食事

  • 朝食は食べないことが多い
  • 朝はいつも忙しく、短時間ですませる
  • 食事の時間は決めていない
  • 外食が週4回以上
  • 野菜不足だと感じる
  • 肉が大好き
  • 牛乳や乳製品が苦手

トイレ

  • いきまないと出ないことが多い
  • 排便後も便が残っている気がする
  • 便が硬くて出にくい
  • コロコロした便が出る
  • ときどき便がゆるくなる
  • 便の色が黒っぽい
  • 出た便が便器の底に沈みがち
  • 便が臭いと言われる

『べんのお便り』(辨野義己著・幻冬舎)より

 0個だと若くてぴちぴち、4個以下は実年齢+5歳、5〜9個は実年齢+10歳、10〜14個は実年齢+20歳、15個以上は実年齢+30歳。15個以上になると「腸年齢60歳以上」で危険信号となる。
 簡単に食生活のバランスを知ることができる。なかには10個以上○がついてショックを受ける学生もいる。
 
 多くの学生が、美しくありたい、若くありたいと思っている。それにも関わらず、肌荒れや、便秘、アレルギーの要因となる要素が、自分自身にあることがあきらかになり、食と生活バランスが不規則というのも一目でわかる。
 野菜不足、食の偏り、バランスの悪い食事、菓子類やジュース類が多い、運動不足から腸内の働きが弱くなり、腐敗菌が出てきて、それが肌荒れや便秘の要因になることを伝える。そして、食のバランスシートを配付して、1週間の自分たちの食べ物をチェックしてもらう。こうすると普段の食と運動の大切さが実感できるというわけだ。
 
 さらに、市販のジュース類、菓子類、インスタント食品の砂糖、塩分、油脂分などの含有量を示した写真を紹介する。これは鹿児島県徳之島の保健課の人たちが作成したものだ。奄美諸島では、肥満や高血圧など生活習慣病がまん延していて問題となっていた。そこで島の子どもたちの間にも広がっているインスタントラーメンや清涼飲料水、菓子類の油分、塩分、砂糖分の含有量を公開。これらを偏って食べると生活習慣病の要因につながることを明らかにしたのだ。この写真を学生に見せるとどよめきが起こる。自分たちが食べているものと同じ。チェックを行った後だから偏った食に思い当たる。
 
 こんな授業を始めた理由は、前に行っていた女子大の授業で、寝ている学生や私語が多い学生が多く、その関心を高めるにはどうしたらいいかを考えたためだ。
 そして健康調査をすると、肌荒れが6割、疲れやすいが4割、便秘が3割、アトピーが1割もいることが分かった。
 そこで、もっと身近なところから食文化の話をしようと始めたのが「美しくなる」をテーマにした授業だった。
 その効果はてきめんで、授業への関心はぐっとあがった。授業のおかげで肌荒れや便秘が解消したとか、食事が変わったとレポートをしてきた学生もいた。
 その授業のせいか、今、教えている大学の講義は学内ナンバーワンの受講者数となっている。
 
 年に1度、八王子の牧場・磯沼ミルクファームに学生の希望者を連れて行き、牧場の料理会を毎年開いている。乳搾り、牧場の野菜とミルクのスープ、溶岩釜のピザ、ヨーグルトを使ったデザートなど、体験をしてフルコースを食べる。
 飼われているジャージー、ブラウンスイス、ホルスタインのミルクのティスティングも行う。そして、香り、見た目、味の違い、牛の品種の違いまでを味わいながら学ぶ。
 牧場の料理会は、もう10年以上になるが、牛の成長や食べる餌、なぜBSEが起こったか、酪農の仕組みなど、きちんと伝えるために牧場と一緒にカリキュラムを作った。こちらも大好評なのである。
 牧場の料理会を、こう表現した女子学生がいた。「先生、いいもの食べないとお肌によくないというのがわかりました」。嬉しい言葉だった。

写真1

写真2

金丸 弘美かなまる ひろみ

1952年佐賀県唐津市生まれ。食環境ジャーナリスト、食総合プロデュサー。
執筆活動のほか、食の総合プロデユーサーとして、食育と地域づくりを連携させた食のワークショップのプラニングから、プロモーション、ツアーへの展開といった食のアドバイザー事業、また学校を対象とした、公開授業、大学から幼稚園まで各学校での食の講師などもてがける。
【主な著書】
『実践!田舎力―小さくても経済が回る5つの方法 』(NHK出版)
『幸福な田舎のつくりかた:地域の誇りが人をつなぎ、小さな経済を動かす』(学芸出版社)
『創造的な食育ワークショップ』(岩波書店)
など多数。

コメントの受付は終了しました。