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「英語が使える日本人」の育成を目指して―「CAN-DOリスト」はどんな役割を担っていくのか
教育zine編集部腰塚
2014/10/31 掲載

 先月、文部科学省は、『平成25年度「英語教育実施状況調査」の結果概要(公立中学校・中等教育学校前期課程)』を発表しました。これは、2011年7月に、「外国語能力の向上に関する検討会」がまとめた、『国際共通語としての英語向上のための5つの提言と具体的施策〜英語を学ぶ意欲と使う機会の充実を通じた確かなコミュニケーション能力の育成に向けて〜(PDF)』(以下、『5つの提言』)を受けてのものです。

 2020年の東京オリンピックに向けて、最近、日本の英語教育に、様々な改革案が提示されつつあるようにも思えますが、実は、同じような施策やそれを受けての調査は、過去にも行われていました。平成15年3月に策定された、『「英語が使える日本人」の育成のための行動計画(結果もともに示されています)』(以下、『行動計画』)がそのひとつです。

 ここでは、『行動計画』と『5つの提言』の共通項の中から、「中学生の英語力」「英語教員の英語力」という2つの視点に絞って、それぞれを受けての調査結果を比較してみることにします。

■中学生の英語力について

 『行動計画』、『5つの提言』ともに、中学校卒業時点で求められる英語力は「英検3級程度」としていました。それらを受けての調査結果を見てみましょう。

○平成19年度(『行動計画』を受けての調査)
  英検3級以上取得者…18.3%
  同程度の英語力をもつ者…14.0%
  合計…32.4%
○平成25年度(『5つの提言』を受けての調査)
  英検3級以上取得者…16.5%
  同程度の英語力をもつ者…15.7%
  合計…32.2%


■英語教員の英語力について

 『行動計画』、『5つの提言』ともに、英語教員に求められる英語力は「英検準1級、TOEIC730点以上」としていました。それらを受けての調査結果を見てみましょう。

○平成21年度(『行動計画』を受けての調査)
  英検準1級以上取得者…24.2%
○平成25年度(『5つの提言』を受けての調査)
  英検準1級以上 または TOEIC 730点以上取得者…27.9%

  ※ただし、平成25年度の結果には、TOEFLのPBT550点以上、CBT213点以上、
   iBT80点以上取得者も含まれています。


 これらのことから、約10年前から、同じような提案がなされていたにも関わらず、残念ながら、「英語が使える日本人」は、政府が思うようには、育成できていないことが分かります。

 とはいえ、自国でのオリンピック開催を6年後に控え、昨年12月に発表された『グローバル化に対応した英語教育改革実施計画』によって2020年までの具体的な計画が提示され、また、『5つの提言』には、『行動計画』には盛り込まれていなかった「CAN-DOリスト」の設定について盛り込まれるなど、いよいよ、日本人の英語力を向上させるための、本格的な策が打ち出されつつあることも確かです。

 「CAN-DOリスト」については、『5つの提言』では、【学校は、学習到達目標を「CAN-DOリスト」の形で設定・公表するとともに、その達成状況を把握する】とありますが、その結果は、

  • 「CAN-DOリスト」の形で学習到達目標を設定している学校は、17.4%。(平成23年度調査より9.9ポイント増加)
  • そのうち、達成状況を把握している学校は66.8%。(平成23年度調査結果より6.4ポイント増加)

と、ここ数年で、数字は大幅に伸びていることがわかります。

 「英語が使える日本人」の育成のために、「CAN-DOリスト」はどのような役割を担っていくのでしょうか。次なる調査結果を楽しみに待ちたいと思います。

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