著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
生徒主体の探究型理科授業を!
東洋大学食環境科学部教授後藤顕一
2023/3/3 掲載

後藤 顕一ごとう けんいち

東洋大学食環境科学部教授,教職センター長。
埼玉県教諭,埼玉県教育局指導主事,国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部,総括研究官を経て現職。

Q1 本シリーズは、中学校3年間の全授業事例を取り上げた書籍になっております。本当にたくさんの事例が載っておりますが、本書の一番の魅力を教えてください。

 これからを担う全国の先生方の日々の授業実践におけるアイデア、工夫と努力が詰まっています。ただし、これらは決して模範でもゴールでもありません。これらの事例を参考にして目の前の生徒の資質・能力を育成するのにふさわしい、探究の過程に沿った自分なりの授業を創っていただくための「たたき台」にしていただければうれしいです。

Q2 本書は、新学習指導要領の方向性に基づいた内容になっております。1章で詳しくご解説いただいておりますが、今後理科授業はどのような点に留意していけばよいでしょうか。

 新学習指導要領の柱は生徒の資質・能力の育成です。生徒を主語にした授業をつくることが大切です。理科の授業も生徒が主体の探究型の授業が求められています。また、探究の過程を踏まえた授業デザインと実践、検証と改善が必要です。これからの評価に関しても、生徒の学びの姿で見取り、より良い実践を共有することが大切です。

Q3 一人一台端末も配布され、大きく授業は変わろうとしております。本書の中でも、ICTを活用した事例が紹介されておりますが、理科授業における活用ポイントを教えてください。

 ICTは、空間を超えた事例の提示や授業時間だけでは扱えない世界を見せてくれます。理科においては、実物を用いた体験型の実験観察が大切ですが、ICTも活用の仕方、工夫の仕方で可能性は広がります。また、生徒が考えをまとめて表現をしたり相互評価をしたりする際にも、集積も分析も保管もしやすい大変有効な道具です。しかし、あくまで道具だということを忘れてはいけません。道具であるICTに生徒も先生方も使われてしまうことがないように、生徒の学びにとって必要に応じて用いることが大切です。

Q4 本書では評価のポイントも掲載されております。指導と評価の一体化のためには、まずは何を意識すればよいでしょうか。

 主体的・対話的で深い学びの実現を目指し、資質・能力の育成に向けて、探究の過程を意識しながら、学習内容と学習方法をつなげることが何よりも大切です。学習指導要領の趣旨からは、「指導」と評価の一体化は「学び」と評価の一体化でもあります。生徒の学びの姿、記述状況等を見ながら、しっかり生徒の学びに寄り添い、カリキュラム・マネジメントを行い、さらなる授業改善を目指すことを意識し続けたいものです。

Q5 本書を手に取り、これから理科授業を頑張っていこうという読者の方にメッセージをお願いします。

 新学習指導要領に向き合っておられる北は北海道、南は沖縄まで、それぞれの地域でご活躍の全国の中学校の先生方の生きた実践を収録しました。執筆者には、これからを担う若手の先生方にも積極的に加わっていただきました。また、学習指導要領作成関係の先生方、全国学力調査などに関係している先生方にも加わっていただきました。是非、お手元に置いておいていただければ、日々の授業改善のヒントにつながると確信しております。

(構成:茅野)
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