著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ソーシャルスキルで、子ども同士のかかわりがもっと豊かに!
学級あそびにソーシャルスキルを取り入れよう
NPO法人TISEC荒畑 美貴子
2022/7/15 掲載
 今回は荒畑美貴子先生に、新刊『あそびを通して身につく!小学校 ソーシャルスキルミニアクティビティ』について伺いました。

荒畑 美貴子あらはた みきこ

NPO法人TISEC理事長
専門は教育学。元小学校教員の経験を生かして、若手に授業法や発達障害のある子どもたちへの支援の仕方を伝えることをライフワークとしている。ソーシャルスキル教育の実践も多数。
すべての子どもたちの幸せを願って、より理想的な学校教育の実現をめざしてTISEC(ティセック)を設立。主に若手教師の育成、発達障害や不登校に悩む子どもたちや保護者の支援充実のために、メディアによる情報発信と、講演会・相談活動を行う。

―本書『ソーシャルスキルミニアクティビティ』ですが、「あそびを通して身につく」という点に先生の思いがあると感じます。この点について、詳しく教えていただけますでしょうか?

 長い間、ソーシャルスキルトレーニングや教育法を研究する中で、「あそびに勝るものはない」という思いが私の中にありました。あそぶことで友達とかかわり、友達を理解し、相手の個性に合わせた接し方を覚えたり寛容な気持ちを高めていったりする様子を、いつも子どもたちの傍で見てきたからです。
 ただ残念なことに、子どもにとってのあそび時間は、限られたものになりつつあります。放課後は習い事などがあり、子どもたちが友達とともに過ごす時間はほとんどありません。ですから、学校の休み時間が子どもにとっての唯一のあそびの時間となっているのです。しかし、休み時間そのものが短いことや、全員があそびに参加しているわけではないことを考えると、十分なあそびが確保されているとはいえない現状があります。
 また、子どもたちは、ワクワクドキドキすることで意欲的になり、自ら学ぼうとする力を伸ばしていくことができます。言葉で説明して頭で理解させるより、心も身体も動かして主体的に学び取ることのできるアクティビティは、現代の子どもたちにとって相応しい学び方のひとつといえるのです。
 このような背景から、学校生活の中で教師が意図的にアクティビティを取り入れていくことは、今後ますます必要性が高まっていくと考えています。

―「ソーシャルスキルアクティビティ」を学級あそびとして取り入れることで、クラス全体や、学級の子どもたちにどんな効果や影響が表れるのでしょうか?

 ソーシャルスキルとは、人とのかかわり方のコツとも言い換えることができます。そのコツを知ることで、グループ活動などがとてもやりやすくなります。誰かとかかわりながら学ぶ姿勢が育っていくからです。
 また、クラス全体の力が高まっていると感じられることもあります。例えば、ひとりの子どもに伝達を頼んだことが全員に伝わる姿や、誰かが困っていると自然と手を差し伸べる姿などを頻繁に見かけるようになるのです。
 それは、子どもたちが、クラスの仲間とかかわって生きていることを実感しているのだろうと思います。そして、支え合いかかわり合って生きていくことが安心なものであり、楽しいことなのだと思っているように感じます。

―最後に、子どもたちが安心でき、楽しく過ごせるクラスをつくりたいという思いで学級経営に向かっていらっしゃる読者の先生方へ、メッセージをお願いします。

 ソーシャルスキルというのは、テストの点数でその成果を確かめることはできません。しかし、人と円滑にかかわる力は、テストで高得点を取ることに匹敵するくらい大切なことだと思います。なぜなら、その力は人生を通して子どもたちを支えてくれるからです。ぜひ、そういった価値観をもって、アクティビティに取り組んでみてください。
また、クラスの中には、友達と上手くかかわるのが苦手な子どもたちもいます。また、自己肯定感や自尊感情の低い子どもたちもいます。そのような子どもたちにとっても、あそびを通してかかわることは意味がありますし、学校が楽しいと思えることにつながっているのだということに確信をもってほしいと思っています。
最後に、皆さんにお願いがあります。私がご提案させていただいたアクティビティはほんの一例だということです。先生方のアイデアや工夫でアレンジし、さらに楽しいものに育てていってほしいと思います。そして、アクティビティの輪が広がっていくことを、心から願っています。

(構成:新井)

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