- 著者インタビュー
- 特別支援教育
障害の重い子やどんな手のかかる子の対応より、保護者の対応は難しい!と、この歳になっても思います。信頼関係を築くことが難しいです。大人である保護者の方は、お一人お一人、人生を抱えていらっしゃるので、こちらが誠実に対応しているつもりでも、理解していただけず、しかられることも多かったです。もちろん、最後に理解してもらえてほっとしたケースもあります。
しかられても、嫌われても保護者と連携をとらなければ、子どもを成長させることはできません。生活の多くの部分を子どもは家庭で過ごします。学校の力を最大限生かそうと思ったら、家庭の協力なくしては実現しませんから。
通常の子どもの場合は、学んだことを自分の力で10にも20にも広げることができます。高学年になるに従って保護者の力を借りなくても、子どもが自力でできることが多くなります。しかし、特別な支援を必要とする子どもの場合、低学年は低学年なりに、高学年になっても高学年なりに、保護者の方の支援が必要になります。そのため、特別な支援を必要とする子どもの成長に合わせて、保護者の方と連携をとる必要があります。多くの子どもに触れている教育のプロとして、教師は、発達段階にあわせた具体的な助言や支援をする必要があります。単に、保護者の方に「お子さんが、困っています、ご協力をお願いします」と言っても、わが子のみとかかわっている保護者にとって、一般的な成長とひきあわせながら、これから成長するわが子のイメージをもつのは大変難しいでことです。より具体的に相談することが大切です。
実は、私も仕上がってきた29のケースの原稿を改めて見直しみてびっくりしたのですが、その多くのケースが「保護者の気持ちを受け止める」ところから始めると語っているのです。どんな無理難題を訴えてきた保護者に対しても、まずその思いを受け止め、つらい気持ちに寄り添うことが大切であることを伝えています。信頼関係の第一歩ですね。
子どもはかわいいけど、保護者への対応を考えると……というは、教師の永遠のテーマかもしれません。保護者とのつきあい方に裏技はありません。まじめに、誠実に対応しましょう。「子どもの幸せために」がんばると思えば、前に進めます。