- まえがき
- T 中学校技術・家庭科の改善
- 1 答申のポイント
- 2 家庭科,技術・家庭科の改善の基本方針
- U 中学校技術分野の改善
- 1 技術分野の現状と課題
- 2 技術分野の改善と基本方針
- V 中学校技術分野の目的
- 1 技術分野を学習する目的
- 2 技術分野の目標の具体的な読み取り
- W 中学校技術分野の内容の解説
- A 材料と加工に関する技術
- B エネルギー変換に関する技術
- C 生物育成に関する技術
- D 情報に関する技術
- X 中学校指導計画の作成と内容の取扱い
- 1 指導計画の作成
- (1) 改善の基本方針と変更点
- (2) 配慮すべき事項
- (3) 指導計画例
- 2 内容の取扱い
- (1) 実践的・体験的な学習
- (2) 問題解決的な学習
- (3) 家庭や地域との連携
- 3 道徳教育との連携
- 4 技術分野における言語活動
- 5 総合的な学習の時間との連携
- 6 実習の指導と安全管理
- [教室環境・電気題材関係]
- (1) 実習室等の環境の整備と管理
- (2) 材料や用具の管理
- (3) 安全指導について
- (4) 電気に関する題材
- [加工機器関係]
- (1) 加工機器の設置について
- (2) 加工機器及び作業の安全管理について
- @糸のこ盤
- A卓上帯のこ盤(バンドソー)
- B卓上ボール盤
- Cベルトグラインダー
- D丸のこ盤
- E自動かんな盤
- F集塵機
- G両頭型研削盤(卓上グラインダー)
- H小型施盤
- (3) 安全な加工作業のために
- 7 中学校「技術分野における評価」について
- (1) 技術・家庭科における評価の基本的な考え方
- @題材における指導目標の分析
- A題材の評価規準の設定
- B学習活動における評価規準の設定
- (2) 配慮事項
- @指導計画・評価計画の修正
- A適切な評価方法の選択と活用
- B自己評価や相互評価の導入
- (3) 評価例
- Y 技術分野と他の教育とのかかわり
- 1 技術分野における情報教育
- 2 技術分野におけるエネルギー・環境教育
- 3 技術分野における知的財産権教育
- 4 技術分野におけるキャリア教育
- 付録1・教育基本法
- 付録2・学校教育法(抄)
- 付録3・学校教育施行規則(抄)
- 付録4・第1章 総則
- 付録・中学校学習指導要領「技術・家庭」
まえがき
近ごろ,テレビの報道番組をはじめいろいろなマスコミに取り上げられる内容に,建築物の構造偽装や機器の安全使用の問題,二酸化炭素の排出規制や燃料の高騰,食の安全管理と表示の偽り,日本の食糧自給率の不足,そしてインターネットの情報犯罪や倫理観の欠如など,われわれの生活を取り巻く諸問題が話題になっている。これらの課題はどれも深刻で,その分野でかかわっている人たちだけでは,対応できない状況にある。したがって,国民として一人一人が,いろいろな問題や課題に対する基礎的・基本的な知識や能力を備え,それらを共に考え,判断したり評価したりすることが求められている。
中学校技術・家庭の技術分野では,現代社会で活用されている多様な技術について学習する。例えば,建築物の構造や機器の安全などについて「A材料と加工に関する技術」で,二酸化炭素の排出改善の技術や動力伝導の効率化などは「Bエネルギー変換に関する技術」で,食の安全管理や食糧自給率などにかかわることは「C生物育成に関する技術」で,そして情報活用や倫理観の育成などは「D情報に関する技術」で取り扱い,これからの生き方で判断や管理できる知識の基盤を養う。技術分野の学習は,技術を理論的に考えるだけでなく,ものをつくる過程を通して,地球温暖化防止のためのエネルギー資源や森林資源の有効利用など,科学の応用としての技術の重要性とその意義を学ばせる。そして,身近な技術や社会や産業で用いられている技術を適切に判断や活用できる能力を備えること,すなわちトレードオフやアセスメント及びコントロールなどを身につけさせるテクノロジーとしての技術を学習する。
今回の学習指導要領技術分野の改善は,従前までの改訂と違って,教科内容の位置づけや方向づけを再構成した大変革である。これまでは,主として技術分野の学習は生活における技術をもとに展開してきたが,このたびは,技術を工学の基礎として位置づけ,産業で用いられている技術を社会・環境とのかかわりについて理解し,これからの在り方を工夫・創造する展開を求めた。このことは,技術分野の学習内容の高度化であり,再構成して深化したものである。そして,人間形成上,必要とされる能力の一つとして育成されるべき学問であり,教科の役割や位置づけを確実にした改善である。
平成20年10月 京都教育大学教育学部教授 /安東 茂樹
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