- T 新しい授業スタイルで中学校技術分野の授業づくり
- 1 新しい教育課程の内容とカリキュラム
- 2 技術科教育で求める資質・能力
- 3 これからの授業スタイル
- 4 選択教科における技術分野の学習
- U カリキュラムデザイン
- 1 学校における教育課程の方法(時間割の組み方)
- 2 技術分野における学習内容と時間配分の方法
- 3 技術分野の3年間のカリキュラム
- V 「A技術とものづくり」「B情報とコンピュータ」の授業づくりのポイント
- 1 題材や教材・教具の工夫
- 2 指導法と評価のあり方
- W 新しい題材・指導法・学び方で創る「A技術とものづくり」の授業
- 1 生活の中で技術の果たしている役割を調査し,ユニークに発表する
- −総合的な学習と関連付けた授業モデル−
- 2 豊かなアイデアを練り,木製品の構想・設計に取り組む
- −ティームティーチングによる授業モデル−
- 3 生活に生かす工夫と材料が加工できる技術を育てる
- −ゲストティーチャーを招聘した授業モデル−
- 4 ものづくりに使用する機器や工具の仕組みを調べる
- −子ども自ら取り組む課題解決型の授業モデル−
- 5 動く車の模型の製作を通して,エネルギー変換の方法を学ぶ
- −問題解決的な学習による授業モデル−
- 6 花の寄せ植え栽培の学習を通して,子どもの心を育てる
- −ゲストティーチャーとの交流による授業モデル−
- X 新しい題材・指導法・学び方で創る「B情報とコンピュータ」の授業
- 1 ネットワークを活用した情報モラルの指導
- −シミュレーションによる授業モデル−
- 2 コンピュータの構成と機能を知り,操作方法を追求する
- −ティームティーチングによる授業モデル−
- 3 コンピュータの利用形態を調べ,ソフトウェア活用能力を高める
- −子ども自ら課題を設定し,その解決に努める授業モデル−
- 4 ネットワークを利用した,問題解決的な学習を展開する
- −ティームティーチングで推し進める授業モデル−
- 5 マルチメディアを用いて,プレゼンテーションの方法を学ぶ
- −総合的な学習と関連付けて展開する授業モデル−
- 6 プログラムと制御について学ぶ
- −ゲストティーチャー(情報化推進コーディネーター)による授業モデル−
まえがき
本書,【新しい時代の学力づくり授業づくり『資質・能力を育てる 中学校技術分野編』】が,なぜ必要かを明確にするために,現状を見つめ直すことから理解していただきたいと思います。
これまで,日本の教育は高く評価され,全国の学校において一律に,また一斉画一の授業形態による効率的な学びの体系が確立されてきました。そして,子どもの知識の量や暗記力を育成し,国際比較においても高い水準を保ってきました。その背景として,我が国の戦後の復興を目指して優れた科学技術の育成に努め,産業経済の急激な進歩を築き国の急速な発展が達成されたことが考えられます。並びに,高学歴社会を求める社会の風潮が生まれ,教育水準の高さとともに競争原理が取り入れられた学校教育のあり方として,子どもに知識を詰め込み高い学力を備えさせてきました。
しかし,この数年,学校教育に課題が山積し,教育が失速状態に陥っていると指摘され,教育改革が必要と叫ばれて久しい状況にあります。その課題とは,1980年代からの非行,校内暴力,落ちこぼれ,家庭内暴力,登校拒否,いじめ,対教師暴力,不登校,学級崩壊,少年犯罪,引きこもりなど,問題点ばかりが話題になり改善が求められ,教育のあり方に多くの指摘がなされてきました。教師の質の問題とか,学校教育の機構自体の問題について言及されてきました。時には,教師が怠けていて学校の機構が悪くなっているという批判も発せられています。しかし,学校現場の状況を視察すると,どの学校も綿密に作り上げられた教育課程による地道な実践や,毎日忙しく動きまわっている教師の行動,及び熱心ですばらしい資質を備えた教師のひたむきな努力が見受けられます。結局のところ,たくさんの要求が学校教育に求められる時代になり,以前の教師より時間をかけて教育活動を実践しているにもかかわらず効果が上がらず,現場ではどうしようもない状況が生じています。その状況からも,学校教育の機構を抜本的に改革する時期が来ているように思われます。それとともに,子どもの心の教育の必要性が求められ,対症療法ではなく新たな方向からの改革が必要と考えられます。これまで実施されてきた10年周期の教育改革だけでは,対応しきれない状況にあると推察されます。
以上の現況を踏まえ,これからの教師は,新しい教育に関して考え方を柔軟にする必要があると思われます。その上,教師にこそ変化への対応が求められ,教師は繰り返し研鑽をして勉強しないと子どもを指導できなくなることが推測されます。そのため「学校は,教師は,教育をどのように進めるのか?」という命題を突きつけられている現状において,本書はこれからの新しい技術科教育の教科指導のあり方,授業の進め方,題材や教材の示し方,評価の基準作りなどに役立つ内容を備えた,新しい時代の学力づくり授業づくりに役立つ指針としての意味付けと考えをまとめています。この多様な展開を創る授業モデルを利用することから,新しい教育の進め方やその実践が生まれ確立することが期待できると思います。
最後に,本書の出版にあたり,企画の段階から印刷の校正まで,親切で丁寧に,優しく的確にご指導とご協力いただきました明治図書出版社の仁井田康義氏と原田俊明氏に,心よりお礼申し上げます。
平成13年4月 兵庫教育大学 /安東 茂樹
ずっと前から共学なのに,職場でまだ「男女別」の意識が消えない人がいて悲しいです。私自身がちゃんと説明してこれなかった責任もあるかな?この本があったら,他の教科に負けない学問的系統性に基づく指導や説明ができそう。