新時代の授業づくり:理論と実践の展開8
生活実践力を育成する家庭科授業の創造

新時代の授業づくり:理論と実践の展開8生活実践力を育成する家庭科授業の創造

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生きる力に直結する生活実践力をいかに育成するかを追求した。

家庭科では生活実践力を育むことが、子どもの自尊感情を高め、未来の夢や希望を実現する力の原動力となり、「生きる力」に直結すると考える。本書はそうした生活実践力を育成する家庭科の理念と実践を広く多くの方に知ってほしいという思いで書かれた。


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ISBN:
4-18-720818-6
ジャンル:
技術・家庭
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 144頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

もくじの詳細表示

プロローグ
第1章 生活実践力育成プラン
第1節 社会の要請に応える家庭科教育の使命
1 家庭科成立期から今日までの歴史的経緯
2 社会状況の変化と家庭科教育の動向
3 社会状況の変化にあわせた学習内容
第2節 生活実践力=「生きる力」とは何か
1 生活実践力の定義
2 生活実践力と生活実践知の形成
3 生活実践知の構造と形成の道筋
第3節 生活実践力を育成する方法
1 教材選択の視点
2 授業づくりの方法
第2章 生活実践力を育成する授業
第1節 生活に生きる栄養学習を目指して
◆題材「1食分の食事をととのえよう」の実践
1 本授業のエッセンス
2 教材
3 授業づくりの視点
4 授業の実際
5 結果と考察
第2節 消費者としての価値判断と意思決定
◆題材「給食のデザートを選ぼう」の実践
1 本授業のエッセンス
2 授業づくりの視点
3 授業の実際
4 結果と考察
第3節 環境にやさしい行動ができる子どもの育成
◆題材「めざせ!エコ隊員」の実践
1 本授業のエッセンス
2 教材及び活動
3 授業の実際
4 結果と考察
5 授業のまとめ
第4節 エネルギー消費を意識化する授業
◆題材「わたしたちのくらしと電気」の実践
1 本授業のエッセンス
2 子どもの実態
3 授業づくりの視点
4 授業の実際
5 事後の指導経過と子どもの変容
6 まとめと今後の課題
第5節 高齢者とのふれあいのある生活
◆題材「祖父母に学ぼう」の実践
1 本授業のエッセンス
2 授業づくりの視点
3 授業の実践
4 結果と考察
5 まとめ
第6節 対話を重視した人間関係の学習
◆題材「わたしと家族」の実践
1 本授業のエッセンス
2 授業づくりの視点
3 授業の実際
4 結果と考察
第7節 アサーションスキルを身に付けよう
◆題材「家族のコミュニケーション」の実践
1 本授業のエッセンス
2 授業づくりの視点
3 授業の実際
4 結果と考察
エピローグ

プロローグ

 学校文化の中の家庭科は,週1〜2時間という少ない時間数で,しかも5,6年生2学年だけに位置づけられた,いわば弱小教科である。学力向上が叫ばれながらも基礎教科には入らず,20世紀末からようやく高等学校での共修が実現したものの,学校においても社会においても家庭科の学力への期待は,さほどにない。男女平等の理念を掲げながらも男性優位の構造は根強く,女性が中心となって守ってきた価値観や信念は未だ理解されがたい状況があるのだろう。家庭生活を教育内容とする家庭科に学問的な価値があるのかと問われるたびに,家庭科の学力を身に付ける必要性を広く認知してもらうため,家庭科教員である自分が奮起しなければと強く思う毎日である。

 現代の日本は,経済至上主義社会である。高度経済成長時代の産業モデルの教育を反省し,「人間重視」の教育をと言いながらも,その路線は期待したほど大きく変わってはいない。経済優先,効率主義に邁進したひずみは,親の教育力の低下,コミュニケーションの不足,基本的な生活習慣の欠如など,家庭崩壊の危機となって現れている。学校においては,不登校,いじめ,学びからの逃避,学級崩壊などの問題がある。それらは,もはや,教師の指導力とか学校教育の在り方を問うだけでは解決できない,社会全体に根を持った問題であろう。

 そうした中で,家庭科はいつの時代も常に,家庭生活における人間関係を大事にし,人が生活する根幹のところでの生き方を教育内容としてきた。家庭生活や社会生活での体験を自らの視点で捉え,科学的に認識してその意味や価値を問い直し,技術を身に付けて生活実践力を育む。家庭実践の経験を重ねることこそが,子どもの自尊感情を高め,未来の夢や希望を実現する力の原動力となると考えるからである。家庭科の学力である生活実践力が,「生きる力」に直結する所以である。

 本書は,そうした生活実践力を育成する家庭科の理念と実践を広く多くの方に知っていただきたいという思いから執筆した。以下,本書の構成を述べる。

 第1章は,理論編である。第1節では,家庭科が社会の要請にどのように応じてきたか,その歴史的経緯を学習指導要領の変遷から考察した上で,事例をもとに検証した。第2節では,生活実践力を定義するとともに,生活実践力育成の鍵となる生活実践知について考察し,その構造を明らかにした。第3節では,生活実践力を育成するための授業づくりについて,教材開発の視点や授業づくりの方法を具体的に論じた。第2章の実践を読んでいただく際の道案内にもなっている。

 第2章は,実践編である。食教育,消費者教育,環境教育,エネルギー教育,福祉教育,家族の教育,アサーションスキルレッスンに関わる7実践を各節に掲載した。衣食住の生活文化や技術の習得に関わる実践は他でも多く報告されていることから,本書ではあえて取り上げないつもりであったが,食領域については昨今の社会的要請の高まりから,1実践を掲載した。これらは,筆者が17年間,広島大学附属小学校に在籍している間に行った実践である。本校学校教育研究会が刊行している月刊誌『学校教育』に掲載したものに加筆修正してまとめた。実践は,できるだけ授業記録を掲載するように努めた。特に,題材自体がオリジナルのものは,全時間の学習過程を示し,全体計画がわかるようにした。従来からなされている題材で教材開発に重点を置いた実践や,教師の指導的役割を重視した実践は,詳細がわかるように単位時間の指導案を掲載した。明日からの授業づくりのヒントになればという思いである。

 以上のように,本書は2章構成になっている。手に取っていただいた方は,興味・関心のある節から読んでいただければ幸いである。


  2005年11月   /西 敦子

著者紹介

西 敦子(にし あつこ)著書を検索»

1957年12月 広島県広島市に生まれる。

2001年3月 広島大学大学院教育学研究科

      博士課程前期修了,修士(教育学)

現在  広島大学附属小学校教諭。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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