- まえがき
- T 学級づくり論三つの枠組み
- 一 学級づくり論の枠組み
- 二 組織論1・四月の初めに何をするか
- 三 組織論2・組織化のイメージ
- 四 組織論3・学級内の三つの仕事分野
- 五 組織論4・向山学級組織図
- 六 指導論1・活動をつかみ評定する
- 七 指導論2・偶発の問題への対処
- 八 活動論1・いかなる活動をさせるのか
- 九 活動論2・二つの活動の方向
- 一〇 研究課題
- 1 大四小児活の研究課題
- 2 児童活動四つの分野
- U イベント論
- 一 はじめに夢がある
- 二 次に策が必要となる
- 三 原則はいかなる分野の人にも通じる
- 四 西暦二〇〇〇年イベントを我が手で
- 五 子どもイベント集団 日本子どもチャレンジランキング連盟発足
- 六 イベント論チャレラン編
- 1 職員室でのチャレラン批判と回答
- 2 具体的事実で共通理解を
- 七 イベント花ゲリラ
- 1 花ダイコン
- 2 花ダイコンの授業化
- 八 イベント実行委員会活動
- 九 イベントの創造
- 1 北海道オホーツク通信
- 2 チャレラン誕生と炸裂
- 3 いずれシルバーチャイルドチャレランを
- V 学級づくりの諸問題
- 一 規則
- 二 外国の「校則」
- 三 児童の権利に関する条約
- 四 中学への親子の不満
- 五 人を魅きつけるのはロマンである
- 1 法則化運動になぜ多くの人が参加するか
- 2 誰でも本はだせる
- 3 ロマンの運動は規模が広がる
- 六 指導者のイメージが子供のを規定する
- 七 夢を具体化させる
- 1 具体的に場面を描く
- 2 イベントリーダーの力量
- 3 教師の力量
- 八 リーダーは生まれる
- 1 人を得て事を為す
- 2 子供に向いた企画を
- 九 スターの条件
- 一〇 別れに夢を描く
- 一一 卒業によせて
- 1 一年生を担任した子に
- 2 寄せ書きへのクレーム
- 3 中学生の「向山学級騒動記」感想文
- 4 次の課題
- あとがき
まえがき
一
今から一〇年ほど前までは、京浜サークルに参加した若い教師に次のように言ったものだった。
「担任として新学期の一週間が勝負です。いや、勝負は三日間だと言ってもいいでしょう。
何をするかというと、クラスのしくみを作るのです。
しくみとは、大きく分けて二つあります。
一つはグループに分けてそのグループの仕事を決めること。
一つは生活をしていく上でのルールです。
最初の三日間、全力をあげて、これを作るのです。
うまくできれば、一年間いいクラス経営をしていけるでしょう。
しかし、これをなおざりにすると、よほどの力のある人でない限り、クラスは段々と崩れていきます」
どのように作るのかというと方法はいくらでもある。
問題なのは、最初の三日間で作りあげるということである。これが大切だ。
もし、うまくいかなければ、直していけばいい。
これを「うまい考えが出てから」とか「ちゃんと整理してから」などということで、先にのばすと失敗する率が高い。
まず、作ることである。不十分なのは、その後に直せばいい。
グループに分けるといっても、学習や生活のための班を作るということや「文化・スポーツ・レク」のための係りを作るということや学級生活のための当番や仕事などの「係り」を作るということがある。
これらは、作り方もちがうし、ねらいもちがう。
また、ルールといっても「大切なことや」「給食を残していいかどうか」などという小さい(が子供には切実な)ことまである。
どうしていけばいいのか本書に書かれている。
これらの原則を参考にして、自分のクラスの方針を作りあげるわけである。
自分のクラスのしくみは、担任が作るほかにない。それ以外の誰も作ることは不可能なのである。
子供たちの活動が活発になるような、子供たちがお互いに関係しあうような、そんなしくみを作りあげていただきたいと思う。
できるだけ早いうちにクラスのしくみを作ること――これは実に大切なことである。
新任の教師が多く失敗するのはここである。
はじめは子供はきちんとしているし、おとなしいので新卒教師は自分の力と過信するものである。それはすべて前担任からの贈りものなのである。
二
学級を組織するには、原理・原則(法則)がある。大学を出たばかりの新卒の教師は「私は子供を大切にする」ということで「一人一人の言うこと」に耳を傾け、一人一人に対応するのであるが、その結果、二か月もしないうちにクラスはズタズタになり、騒乱状態になる。
それは、「学級」という「集団」を生かしていくためには、それなりの「方法」や「しくみ」が必要だからである。
人間という一つの組織体は、頭脳や神経などという「しくみ」に支えられているから、「生き生き」とする。
足や手や目がバラバラの動きをしたら、想像するさえ恐ろしい騒乱状態になってしまうだろう。
「学級」は一つの「生きもの」なのである。
「一つの生きもの」を「生き生き」と「好ましい」状態で生かしていけるかどうかは、教師の技量にかかっている。
本書では、原理・原則といくつかの論から表わしたものである。
一九九一年九月一五日 /向山 洋一
-
- 明治図書