真の学力を育てる授業の創造
/西郷 竹彦
ここ数年前から、中学一年に入学してくる子どもたちの学力が眼に見えて落ちてきた。教科書をろくに読めない子どもが増えてきた。と、多くの中学の教師たちが言います。
その根本的な原因は、新学力観にもとづく「支援」という形の教師の指導性の拗棄ではないか。今回の「学習指導要領」が実施されて七年目。その「成果」が右のような実態であると言います。最近の中学生の自殺や殺傷事件の多発の真因もそこに在ると現場の教師たちは指摘しています。
子どもの主体性、個性を尊重とか、ゆとりのある教育とか、聞こえはいいが、結局は、教師の主体性の拗棄であり、ひいては子どもたちの主体性の喪失につながるのです。
私ども文芸研は、昨日よりは今日、今日よりは明日へと、一歩一歩地道に課題を遂行してきました。
此度、発表された教育課程審議会の「まとめ」は、さらなる改悪でしかありません。私どもが長年きずきあげてきた研究と実践の成果を否定するものです。
私どもは、人間の喜こびや悲しみ、ほんとうの幸せとは何か、人間にとって価値とは何か――そのことを「たしかさをふまえた、ゆたかな、ふかい読み」によって、子どもたちに切実な体験・認識させてきました。
この私どもの成果の一端を本誌の本号において提示し、読者のご批判とご助言を得たいと考え、特集を組みました。
各地のサークルの活動家のメンバーの実践記録の一部を引用しつつ、文芸研のめざす「真の学力を育てる」には、いかにあるべきかを、読者とともにあきらかにしたいというのが、私どものねがいです。
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