基幹学力シリーズ8
コミュニケーションする算数授業づくり

基幹学力シリーズ8コミュニケーションする算数授業づくり

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教室の仲間と学び合う算数授業づくりのためのポイントと授業実践

学級で授業をしている以上、友達との関係を抜きには成立しない。隣の子は何を考えているのか、話しあうことで、今までの自分の考えを振り返ったり、発展させたりする契機となる。そういう算数授業のコミュニケーションをどうつくっていけばいいのか。豊富な事例で紹介。


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ISBN:
978-4-18-605838-3
ジャンル:
算数・数学
刊行:
2刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 192頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 毎日の授業で活用できる指導技法とその意図
1 友達とかかわり合う力を高める指導技法
(1) 友達の思いや考えを読む
友達の思いや考えを読む指導技法の活用例
〜1年「ひき算」の実践から〜
(2) 隣にいる友達や席の前と後ろにいる友達同士で話し合う
隣にいる友達同士で話し合う指導技法の活用例
〜3年「たし算とひき算」の計算練習の場面から〜
〜2年「かけ算@」の実践から〜
〜4年「面積のはかり方と表し方」の定着場面から〜
(3) 自分で「いままで見えなかったもの」が見えるようにする
(4) 友達とかかわり合いながら学び進める活動を組む
2 いまの自分の学びを意識させる指導技法
(1) 自分の思いや考えを明らかにする
(2) 書くことで,自分の思考を確かなものにする
3 様々な指導技法を活用した授業
〜1年「10より大きい数」の実践から〜
U 子どもに確かな力をつける授業の組み立て
1 「授業の組み立て」について考える
(1) ねらいをしっかりと押さえる
(2) 「何を」「どのように」追究させるのかを明確にする
(3) 子どもの思考に寄り添って,授業を組み立てていく
2 新卒当初,光の見えない授業づくりから抜け出す!
(1) 授業づくりで光が見えない……
(2) 授業をシンプルに考え,組み立てる
(3) 「あれっ?」「えっ?」を生む!
(4) 4年「四角形」の実践から
3 授業を組み立てるときに大切にしたいポイント
(1) 自分の思いや考えをもてるようにする
(2) ズレを浮き彫りにし,問いの共有化を図る!
(3) つなげることを意識して授業を組み立てる!
(4) 子どもの言葉やしぐさを生かす
4 問題場面と式をつなげて考える力を高める授業
〜3年「長さ」の実践から〜
5 計算技能を高める授業でも,仕掛けをつくる
〜3年「たし算の筆算」の計算練習〜
〜1年「ひき算」の計算練習〜
〜2年「ひき算の筆算」の計算練習〜
<トピックス> 先輩教師の授業を見つめるときの視点
V 教材研究を深め,算数授業づくりに生かす
1 わり算には2つの考え方がある.12÷3=4は?
(1) 包含除:いくつ分,何倍を求めるわり算
(2) 等分除:等分したときの「1つ分の大きさ」を求めるわり算
2 わり算の意味を理解していなくても点数をとれるテスト
3 「□を使った式を書きなさい」という問題をつけ加えたら?
4 「問題の先を読んで話す」から生まれた授業
〜3年「わり算」(第2時)の実践から〜
5 単元全体の組み立てから,子どもの揺らぎを生み出す!
〜1年「たし算」の実践から〜
<トピックス> テストについて考える
W 子どもを引きつける問題提示の工夫と授業の組み立て
1 2年「3けたの数」(第1時・導入)の実践から
2 2年「かけ算@」(第1時・導入)の実践から
3 2年「3口のたし算」の実践から
4 2年「かけ算B」の実践から
<トピックス> 朝の会のスピーチ活動で,算数の学び方を鍛える
X 授業にゲームや遊びを取り入れ,コミュニケーション能力を高める
1 コミュニケーションを成立させるには
2 子どものコミュニケーション能力を高める学習
(1) 2年「数直線を使ったゲーム」の実践から
(2) 3年「わり算」(わり算カードで遊ぼう)の実践から
3 わり算カードを基に,友達とのかかわり合いを生む
(1) わり算カードを作った意図
(2) わり算カードの種類と枚数(計24枚)
(3) 遊び方について
あとがき

まえがき

 ある算数の学習会で,若い先生が次のようなことを話していた.


 いま,2年「長さ」の学習をしているが,12p6oと表さなければならないところを10p26oと表す子がいて困っている.一生懸命教えても,なかなかこういう間違いがなくならない…….


 この話を聞いて,「10p26oは本当に間違いなのか?」という疑問とともに,先生がその間違ったという子に一生懸命,個別にかかわっている風景が頭に浮かんできた.

 確かにテストにおいては10p26oではなく,12p6oと表してほしい.だが,10p26oは12p6oと表す思考の途中であり,長さそのものは等しいのである.また,教師が個別にかかわることによって,子どもたちの学び合うチャンスを奪ってしまうのはもったいない.教師が個別指導した子は,自分の考えを修正してよりよい考えを創ることができるかもしれない.しかし,他の子どもたちは,その修正するという思考過程をたどらないことになる.したがって,思考途中の結果で満足する子がこれからも出てくる心配が残る…….そんなことを考えていた.


 自分だったら,「2つの長さがありました」と言って,それぞれの長さを板書する.教室の仲間とのズレを浮き彫りにすることで,「はっきりさせたい」という気持ちを子どもにもたせていくのである.そして,10p26oと表した友達の思考を読み取る場を設定する.

 10p26oと表した友達の思考を探る話し合いでは,「26oは2p6o.単位の同じ10pと2pをたして12pにしたほうがいい」といった,よりよい表し方に目を向けた発言が出てくるだろう.その発言を生かし,10p26oとともに12p6oと表す思考過程も明らかにしていきたい.


 学級の中には,自分と異なる見方や考え方をもっている友達,自分と似た見方や考え方をもっている友達がいる.その友達の見方や考え方も,時や場合や状況によって変化する.絶えず変化する関係性の中で,子どもたちは存在しているのである.わたしは,子どもたちがコミュニケーションし,友達と楽しさや喜びを共有したり,時には友達とぶつかったりするなどの経験を積み重ねながら成長できるところに学校の価値があると考えている.

 子どもたちが学校で過ごす一番長い生活時間は,授業である.授業では,子どもたちがたくさんコミュニケーションすることを大切にしたい.

 自分はどんな授業をしたいのか,思いつくままに書き出してみた.


 ◇学級全員の子どもが手を挙げ,発言できるような授業をしたい.

 ◇隣に座っている友達と話し合う活動では,自分の思いや考えをわかってもらおうと,一生懸命伝え合う姿が見られる授業をしたい.

 ◇友達が困ったり悩んだりしていたら,その友達の困りや悩みに寄り添いながら,みんなで新しい考えや確かな考えを創っていくような授業をしたい.

 ◇友達の発言を読み取り,「Aさんの気持ち,わかったー」と自ら伝えようとする姿が現れる授業をしたい.

 ◇いままで見えなかったものが見えてきて,「そうか」「わかった」と,新しい見方や考え方をみんなで共有できる授業をしたい.

 ◇「B君が〜という発言をしてくれたから,わかったんだ」「Cさんは自分のはっきりしないことを最後まで一生懸命考えていたからすごい」などと,友達のよさやがんばりを認め合える授業をしたい.

 ◇「自分の発言がきっかけとなって,みんなで新しい考えを創ることができた」「最後まで粘り強く考えられた」など,自分のよさやがんばりを見つけられる授業をしたい.

 ◇「学級のみんながいるから,算数は楽しい」「みんなと学習する算数が大好き」と思える子どもが増える授業をしたい.


 自分の目指す授業を1つにまとめると,次のようになる.


  子どもが目を輝かせて思考し,教室の仲間と「ああだ,こうだ」と表現し合いながらみんなで新しい考えを創っていく授業


 では,この目指す授業像にアプローチするためには,どうしたらよいのだろうか.本書では,それを探る窓口として,次の3つの観点から算数授業づくりについて考えていくことにした.


   ◇指導技法     ◇授業の組み立て     ◇教材研究


 指導技法,授業の組み立て,教材研究は,密接に関連するものである.これらのどれが欠けても,子どもが自分から動き出す姿,教室の仲間とかかわり合い・高め合う姿を引き出すことが難しくなると考えている.

 いまの自分の授業スタイルに大きな影響を与えたのが,國學院大學栃木短期大学の正木孝昌氏,筑波大学附属小学校の田中博史氏,山本良和氏の授業である.当初,正木氏,田中氏,山本氏が使っている指導技法を,自分の授業でやってみてもうまくいかないことが多かった.しかし,何回かに1回,子どもがうわっと迫ってくるような感覚を味わうことができた.これは「教師になったのは,このためであった」と思われるような感覚である.

 そこで,自分の授業をもう一度,原点から見つめ直してみようと考え,試行錯誤する日々が始まった.


 ◇授業の組み立てについて見直す.

 ◇どのような指導技法があるのか,その指導技法の意図は何かを探る.

 ◇指導技法を活用するタイミングや方法を自分なりにアレンジする.

 ◇教材研究では,自分の担当する学年だけでなく,他の学年とのつながりを探ってその単元で核となるものが何かを明らかにする.

      など


 そんなことをしているうちに,次のことが見えてきた.


  〜をすれば,子どもの自分から動き出す姿を引き出せる!


 また,子どもの思考過程がこれまで以上に見えるようになってきた.子どものコミュニケーションする力が高まってきたことを感じる授業場面が増えてきた.何より,毎日の授業がさらに愉しくなった.

 わたしの授業を見た同僚や他校の先生方から,「よく話す子どもたちだね」「どうしたら,あんな考えが出てくるの?」というような言葉をかけられるようになった.

 本書には,算数授業づくりにおいて,大切にしたいポイントを授業実践とともに載せてある.それを参考に,日々の授業に生かしていただけたら幸いである.


   /中村 光晴

著者紹介

中村 光晴(なかむら みつはる)著書を検索»

北海道小樽市生まれ

北海道教育大学卒業

札幌市立伏見小学校を経て,

現在,札幌市立星置東小学校に勤務


全国算数授業研究会幹事

基幹学力研究会幹事

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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