- まえがき
- T 「ことば」と「考えること」
- (1) 数学的思考と「ことば」
- (2) 子どものことばのたどたどしさ
- (3) たどたどしさを大切にする
- (4) 言い直しで変化することば
- (5) ことばを組み立てることは考えを組み立てること
- (6) ことばは考えを整理するための道具
- (7) 子どものことばが磨かれる場
- (8) 人類の進化の過程にことばと思考力のかかわりをみる
- U 算数用語で鍛える数学的概念
- (1) 算数用語を辞典で調べる
- (2) いろいろな算数用語について考える
- (3) 子どもたちが創る算数用語
- V 文章題で鍛える「ことばの力」「考える力」
- (1) 子どもは文章題から何を読み取ろうとしているか
- (2) 文章題の提示を工夫する
- (3) 図をかいたり(半)具体物を使うこと
- (4) 逆思考の問題にこだわる
- (5) 映像からたくさんの情報を読み取る
- W 共有化で鍛えるコミュニケーション能力
- (1) 子どものことばをつないでいく 〜「単位量あたり」の授業にみる共有化
- (2) 「わからない」ということばを大切にする 〜「異分母分数の大きさ比べ」の授業にみる共有化
- (3) 「わからない会議」を開く 〜「分数÷分数」の授業にみる共有化
- X 活動名を意識する
- (1) 1年生「たしざん」の学習 〜おはじきいっきなげゲーム
- (2) 2年生「たし算のひっ算」の学習 〜おはじきいっきなげゲーム2
- (3) 1年生「20をこえるかず」の学習 〜かずのでんごんゲーム
- (4) 2年生「三角形と四角形」の学習 〜どうぶつかこみゲーム
- あとがき
まえがき
今ではすっかり大きくなった2人の子ども.でも,10年ぐらい前は,本当に小さな赤ちゃんだった.もちろん,ことばは話せない.だが,にこにこした笑顔と向き合いながら様々な会話を楽しんで交わしたことを覚えている.例え相手が,「アウアウ」や「ブウ」といった,いわゆる喃語しか話せなくても,そこには立派なコミュニケーションが成立していたのである.こういったコミュニケーションの繰り返しが小さな子どもたちの会話能力を高めていくことについては,いろいろな書物で触れられている.視点を教室に向けてみたい.
教師は大人であり,目の前の子どもたちはまだ幼い存在である.だから,どうしても「よい話し方」「正しい話し方」を指導しようとしがちになる.しかし,赤ちゃんと向き合う大人は,決して話し方を教えようとしているのではない.(もちろん,よいことばを使おうという意識はあるだろうが)とにかく話すのが楽しいのである.こちらの呼びかけに対し,決してそっぽを向かず目をくりくりさせながら反応を示してくれるのがうれしいのである.
教室で,教師と子ども,あるいは子どもたち同士が会話を交わすときには,そこに共通の楽しさがなければならないだろう.それは,「学ぶ楽しさ」であったり「互いに高まっていく楽しさ」であると思う.そういった強いエネルギーから派生したことばには力がある.毎日の授業の中に,力のあることばが行き交う白熱した話し合いが生まれていれば,自然に子どもたちの言語能力は成長し,強いては思考力も高まっていくと信じている.
この本に載っている実践例のほとんどは前任校でのものだ.周りを田畑に囲まれた国道沿いに建つ1学年1クラスの小規模校だ.クラスの仲間が10人ちょっとの子どもたちが,くったくのない笑顔で自分たちの思いを元気よく話してくれた.そういった生の声を中心にしながらこの本を書き上げてみた.
わたしのような者にこのような貴重な機会を与えてくださった,明治図書出版株式会社,並びに,編集長の樋口雅子氏に,心からお礼の言葉を申し述べたい.
/工藤 克己
「ことば」を通して、子どもたちは算数を学んでいます。
こんな当たり前のことですが、意識して授業するのと意識しないで授業するのでは、子どもの育ちに大きな違いがあらわれます。
「力のあることば」から、数学的な考え方を高めていくという筆者の主張に賛成です。授業づくりのコツもわかりました。