- まえがき
- 一 「ありの行列」は子どもたちにどんな力を育てるか
- 1 説明文で何を学ばせるのか
- やるほどに意欲をそぐ授業/「ありの行列」は子どもの何を変えるか/ただの「ものしり」をつくるのではない
- 2 子どもたちの実態から
- 理由を言えない子どもたち/育てたい力/小学校の関連・系統表
- 二 「ありの行列」をどう読んだか
- 1 「ありの行列」の教材分析
- 筆者について/題名/書き出しの仕掛(形式段落@)
- ウイルソンの実験観察1(形式段落AB)/ウイルソンの実験観察2(形式段落C)/ウイルソンの研究(形式段落DEF)/ありの行列ができるわけ(形式段落GHI)
- 2 説得の論法を学ぶ
- この説明文のおもしろい理由/「ありの行列」の構造
- 3 「ありの行列」で育てたい認識の方法
- 類別/条件・仮定/構造・関係・機能
- 4 「ありの行列」で育てたい認識の内容
- 5 「ありの行列」の授業の構想
- 教授=学習過程(全七・五時間)
- 三 「ありの行列」の授業の実際(三年)
- 1 〈はじめの感想〉
- 2 《たしかめよみ》1[一、二、三、四段落]
- 仕掛にのっかって/ありの身になって/予測してみる
- 3 《たしかめよみ》2[五、六、七、八、九、十段落]
- 予測をする/「ありの行列」ができるわけ
- 4 《まとめよみ》1
- どんな時に液をつけるか/えさを手に入れる大切な条件/ありの行列の意味を考える
- 5 《まとめよみ》2
- なぜ、この説明文はおもしろいか/読者に興味をもたせる仕掛
- 読者がおもしろく読みながらわかる順序
- 四 授業を終えて
- 1 〈おわりの感想〉
- 2 「ありの行列」を学んだ意味
- ありはありの特性を条件として活かす/説得の論法を学ぶ
- 3 異なった教科を横につなぐ「認識の方法」
- 文芸研の認識の系統表の意味/チョウの羽はなぜはえる/雄が先か雌が先か
- 五 「ありの行列」の授業をめぐって(座談会)
- 1 説明文を学ぶ意味
- 表現の内容と表現の形式/説得の論法を学ぶ
- 2 説明文「ありの行列」における典型化とは
- 読者にとっての意味/「こころがけ主義」と「典型化」とのちがい
- 特性を条件として活かす
まえがき
最近の教育現場は、多くの教師たちが実感しているとおり、昏迷する文教政策によって、戦後、最低最悪の状態にあります。このままでは、子どもたちの花咲く可能性も芽生えのうちに枯渇せざるを得ない危機にあります。
この現状を打開する唯一の道は、子どもたちに「真の学力」を育てる教育を確立する以外にありません。
私ども文芸教育研究協議会(文芸研)は、創設以来、半世紀にわたる歴史のなかで、子どもたちを〈自己と自己をとりまく世界を変革する主体〉に育てあげるために〈のぞましい人間観・世界観の育成〉をめざして、ひたすら研究と実践を地道につみかさねてきました。
〈ものの見方・考え方〉(認識方法)の関連・系統指導の原理に立って、文芸の授業、作文の指導、読書の指導においては、西郷文芸学の理論と方法をふまえ、また、説明文の指導においては、説得の論法をふまえて、〈ゆたかな、ふかい認識・表現の力〉を育ててきました。
本シリーズ『文芸研の授業』は、私ども文芸研の過去半世紀の歴史の到達点を示す企画といえましょう。本シリーズの各巻とも、これまでの文芸研の全国大会に提出されたレポートを中心にまとめたもので、会内外のきびしい批判検討を経たものであります。
全国大会のレポートは、すべて、各サークルの月例研究会において討議をかさねたものを、年二回の全国規模の二日間にわたる合宿研究会に提出し、厳正、綿密な検討を受けたものを大会分科会に提出します。勿論、分科会においては全国各地より参集された教師のみなさんによって、あらゆる角度から批判と助言を受けます。これらの成果をふまえ次の年度のレポートはさらに一層の研鑚をかさね、かくして一つの教材が多くの仲間たちによってすくなくとも十数年の長期の批判・検討を経たものになります。
本シリーズの各巻の執筆を担当した者は、以上の成果を充分に踏まえて、まとめております。したがって、本シリーズのすべての巻は、執筆者一個人の業績というよりも集団的な所産というべきものであります。
たとえ、すぐれたベテラン教師の教材研究・授業実践といえども個人の力量には限界があります。私どもは、仲間・集団の具体的な力の結集の上に一個人の限界をこえる成果を生み出すことをめざしています。
その意味において、本巻を手にとられた読者諸氏にもぜひきびしい、かつあたたかいご批判とご助言をお寄せいただきたいと願っております。
本シリーズは、文芸、説明文、作文、読書の領域はもちろん総合学習やその他の領域にもわたる実践がまとめられ刊行の予定です。
なお、本シリーズのどの巻も、概念・用語はすべて統一されております。一つの基本的な思想・主張・理論に基づいた実践である以上当然のことでありますが、読者にとっては、どの巻から読みすすめられても、概念・用語などの不統一でとまどわれることはあり得ないと信じます。すべての巻が相互にひびき合い、それぞれの成果を相乗的にせりあげるものになるはずです。
巻末には、執筆者とサークル員、監修の西郷との対談あるいは座談会の形式でいくつかの問題点をひきだし、解説を加えることにしました。参考になれば幸いです。
本シリーズでも、これまでと同様、企画から刊行にいたるまで、編集担当の庄司進氏の献身的な協力をいただきました。紙面を借りて厚くお礼を申し上げます。
二〇〇三年七月 文芸教育研究協議会会長 /西郷 竹彦
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- 明治図書