- まえがき
- 一 作文指導の目的
- 1 作文指導の目的
- (1)国語科の目的と作文指導の目的/ (2)認識の力をつけることは、生き方をも変える
- 2 虚構の作文指導
- ――読み手による新たな意味づけ
- (1)作文の「虚構性」/ (2)深く豊かに意味づける/ (3)書き手による意味づけ
- 3 深く豊かなものの見方・考え方を育てる
- (1)認識の方法と認識の内容/ (2)小学校の関連系統指導案
- 二 低学年の作文指導
- 1 ものごと・人に積極的にかかわらせて
- (1)思いを言葉にしていく(口頭作文に触れて)/ (2)せんせいおしえてね(相手意識・目的意識)/ (3)「一つだけなら ぼくが てつだったことを おしえたいな」(観点を一つに決める)/ (4)観点を決め、読み手に語りかけるように、反復強調して――「しっぽのやくめ」に学ぶ
- 2 自分の成長・友達の成長
- (1)できたよ!/ (2)価値あることのために人間は連帯する――「おおきなかぶ」に学ぶ
- 3 ものごとや自分を見つめて書く
- ――ことがら、さらに対象にかかわる自分をしっかり書く
- (1)勇気を出したまさや君の手/ (2)くろいわくんは なかなかった!
- 4 労働から学ぶ@ 一年生
- ――対比によって本質を見つめる
- (1)おかあさんとくらべてみたら/ (2)おかあさんはがまんしてたよ/ (3)「てんぐとおひゃくしょう」「どうぶつの赤ちゃん」に学ぶ
- 5 労働から学ぶA 二年生
- ――順序・過程をきちんとふまえて
- (1)はたらくことが かぞくをつなぐ/ (2)仕事の手順のみごとさ――自立していく姿/ (3)変化・発展・展開・過程――「おじさんのかさ」「おてがみ」に学ぶ
- 三 中学年の作文指導
- 1 中学年の特性をつかみ学級集団づくりに取り組む
- (1)抽象的な思考の始まり/ (2)集団的な活動が活発になる/ (3)達成感をバネにがんばれる
- 2 集団の組織的な活動を創造していく
- ――書くことで自分と友達との相関関係に気づかせる
- (1)教え合う関係づくり(班学習)/ (2)集団遊びや学級・学校行事に全力で取り組む
- 3 友達、そして自分をとらえ直すために
- ――作文を取り上げて授業する意味
- (1)教材「一人一人の力」/ (2)教材分析(この作文をどう読んだか)/ (3)学習のねらい/ (4)授業の実際/ (5)〈おわりの感想〉/ 愛授業を終えて
- 四 高学年の作文指導
- 1 意味を考えて書く
- (1)書くことによってものごとの意味を考える/ (2)行動を意味づけることは、自己変革につながる/ (3)虚構の作文指導――新たな意味の発見
- 2 子どもの現実から
- (1)学級の人間関係を見つめる/ (2)書けない子どもたちをどうするか
- 3 学年のはじめに
- ――意味づけることを意識させる
- (1)詩の授業から/ (2)意味を考えて書いたものを取り上げて
- 4 自分を見つめ、変える力に
- (1)テーマ日記を書く意味/ (2)テーマ日記を読み合う/ (3)自己と向き合い、困難を乗り越える――日記を綴る中で自己を見つめ、変えていった夏美さんの記録
- 5 今起きている出来事と自分
- (1)自分を取り巻く世界に目を向け、書くことで意味づける――トットちゃんの「アフガニスタン報告」を読んで/ (2)意味づけることは新たな問いを生み出す――「100人の村の話」から
- 6 心に蓄積してきたことを
- ――意味づけたことを効果的に表現する
- (1)学級文集作りを通して取り立て指導する/ (2)作文をどう読み合うか――鑑賞指導
- 7 作文の授業
- ――今まで学んできたことをふり返り、どんな意味や価値があったかを考えて書く
- (1)「生きる」ことの意味を考えて書く/ (2)どんな作文を書いたか/ (3)授業の実際@/ (4)授業の実際A/ (5)授業を終えて/ (6)終わりに
- 五 作文の指導をめぐって(座談会)
- 1 テーマ日記の教育的意味
- ねうちのあるテーマとねうちのないテーマ――テーマ日記の題材/ 自分で自分を変える方法としてのテーマ日記/ 方法には、絶対的・理想的方法はない/ 短作文をどう考えるか
- 2 虚構の作文指導の意味
- 作文を豊かに読む/ 読み合いが学級の人間関係をつくる/ 作文は総合的な力の表れ/ 何をこそ「ありのままに」書かせるか
まえがき
最近の教育現場は、多くの教師たちが実感しているとおり、昏迷する文教政策によって、戦後、最低最悪の状態にあります。このままでは、子どもたちの花咲く可能性も芽生えのうちに枯渇せざるを得ない危機にあります。
この現状を打開する唯一の道は、子どもたちに「真の学力」を育てる教育を確立する以外にありません。
私ども文芸教育研究協議会(文芸研)は、創設以来、半世紀にわたる歴史のなかで、子どもたちを〈自己と自己をとりまく世界を変革する主体〉に育てあげるために〈のぞましい人間観・世界観の育成〉をめざして、ひたすら研究と実践を地道につみかさねてきました。
〈ものの見方・考え方〉(認識方法)の関連・系統指導の原理に立って、文芸の授業、作文の指導、読書の指導においては、西郷文芸学の理論と方法をふまえ、また、説明文の指導においては、説得の論法をふまえて、〈ゆたかな、ふかい認識・表現の力〉を育ててきました。
本シリーズ『文芸研の授業』は、私ども文芸研の過去半世紀の歴史の到達点を示す企画といえましょう。本シリーズの各巻とも、これまでの文芸研の全国大会に提出されたレポートを中心にまとめたもので、会内外のきびしい批判検討を経たものであります。
全国大会のレポートは、すべて、各サークルの月例研究会において討議をかさねたものを、年二回の全国規模の二日間にわたる合宿研究会に提出し、厳正、綿密な検討を受けたものを大会分科会に提出します。勿論、分科会においては全国各地より参集された教師のみなさんによって、あらゆる角度から批判と助言を受けます。これらの成果をふまえ次の年度のレポートはさらに一層の研鑚をかさね、かくして一つの教材が多くの仲間たちによってすくなくとも十数年の長期の批判・検討を経たものになります。
本シリーズの各巻の執筆を担当した者は、以上の成果を充分に踏まえて、まとめております。したがって、本シリーズのすべての巻は、執筆者一個人の業績というよりも集団的な所産というべきものであります。
たとえ、すぐれたベテラン教師の教材研究・授業実践といえども個人の力量には限界があります。私どもは、仲間・集団の具体的な力の結集の上に一個人の限界をこえる成果を生み出すことをめざしています。
その意味において、本巻を手にとられた読者諸氏にもぜひきびしい、かつあたたかいご批判とご助言をお寄せいただきたいと願っております。
本シリーズは、文芸、説明文、作文、読書の領域はもちろん総合学習やその他の領域にもわたる実践がまとめられ刊行の予定です。
なお、本シリーズのどの巻も、概念・用語はすべて統一されております。一つの基本的な思想・主張・理論に基づいた実践である以上当然のことでありますが、読者にとっては、どの巻から読みすすめられても、概念・用語などの不統一でとまどわれることはあり得ないと信じます。すべての巻が相互にひびき合い、それぞれの成果を相乗的にせりあげるものになるはずです。
巻末には、執筆者とサークル員、監修の西郷との対談あるいは座談会の形式でいくつかの問題点をひきだし、解説を加えることにしました。参考になれば幸いです。
本シリーズでも、これまでと同様、企画から刊行にいたるまで、編集担当の庄司進氏の献身的な協力をいただきました。紙面を借りて厚くお礼を申し上げます。
二〇〇三年七月 文芸教育研究協議会会長 /西郷 竹彦
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