- まえがき
- 一 「大きなかぶ」の教材分析(一年)
- 1 子どもたちにとっての教材「大きなかぶ」の意味
- 2 「大きなかぶ」表現の特質
- 文型のくり返し/かさね言葉/つなぎ言葉/変化をともなって発展する反復/美の構造
- 3 「大きなかぶ」でどんな力をつけるのか
- 順序/類比/主題(表現の内容)と思想(認識の内容)/典型化について
- 4 「大きなかぶ」の授業をどう組み立てるか(授業の構想)
- 教授=学習過程/授業の構想
- 二 「大きなかぶ」の授業の実際
- 1 《だんどり》《とおしよみ》……〈よみきかせ〉〈はじめの感想〉
- 題名の働き/心理的な間/くり返しの発見/〈ねこ〉と〈ねずみ〉の関係/〈かぶ〉も人物か?/〈はじめの感想〉/文型指導
- 2 《たしかめよみ》……一場面・「ねうち」について
- 《内の目》と《外の目》/願いの順序がねうちの順序に/かさね言葉の効果/順序性の意味/〈つづきの感想〉
- 3 《たしかめよみ》……二〜七場面・「連帯」について
- ねうちがあるからひっぱる/つなぎ言葉で話者の見方がわかる/かぶのイメージが少しふくらむ/ねうちのあるかぶだからこそ/つなぎ言葉(それでも)/変化発展するかぶのイメージ/ますますふくらむかぶのイメージ/類比的に見ることで/話者はあきらめても、人物はあきらめない/切実な共体験/小さなねずみの大きな存在/つなぎ言葉の働き/同じ言葉なのに違うイメージ/ねうちがあればこそ/〈つづきの感想〉
- 4 《まとめよみ》
- 変化をともなって発展する反復/順序の意味/〈おわりの感想〉
- 5 授業を終えて
- 三 「大きなかぶ」の授業をめぐって(座談会)
- 1 意味と価値をひびき合わせる
- 2 順序性を教える意味
- 3 翻訳の違いによる意味の違い
- 4 「つなぎ言葉」を指導する意味
- 5 文図を使った指導の留意点
- 6 美について
まえがき
最近の教育現場は、多くの教師たちが実感しているとおり、昏迷する文教政策によって、戦後、最低最悪の状態にあります。このままでは、子どもたちの花咲く可能性も芽生えのうちに枯渇せざるを得ない危機にあります。
この現状を打開する唯一の道は、子どもたちに「真の学力」を育てる教育を確立する以外にありません。
私ども文芸教育研究協議会(文芸研)は、創設以来、半世紀にわたる歴史のなかで、子どもたちを<自己と自己をとりまく世界を変革する主体>に育てあげるために<のぞましい人間観・世界観の育成>をめざして、ひたすら研究と実践を地道につみかさねてきました。
<ものの見方・考え方>(認識方法)の関連・系統指導の原理に立って、文芸の授業、作文の授業、読書の指導においては、西郷文芸学の理論と方法をふまえ、また、説明文の指導においては、説得の論法をふまえて、<ゆたかな、ふかい認識・表現の力>を育ててきました。
本シリーズ『文芸研の授業』は、私ども文芸研の過去半世紀の歴史の到達点を示す企画といえましょう。本シリーズの各巻とも、これまでの文芸研の全国大会に提出されたレポートを中心にまとめたもので、会内外のきびしい批判検討を経たものであります。
全国大会のレポートは、すべて、各サークルの月例研究会において討議をかさねたものを、年二回の全国規模の二日間にわたる合宿研究会に提出し、厳正、綿密な検討を受けたものを大会分科会に提出します。勿論、分科会においては全国各地より参集された教師のみなさんによって、あらゆる角度から批判と助言を受けます。これらの成果をふまえ次の年度のレポートはさらに一層の研鑚をかさね、かくして一つの教材が多くの仲間たちによってすくなくとも十数年の長期の批判・検討を経たものになります。
本シリーズの各巻の執筆を担当したものは、以上の成果を十分に踏まえて、まとめております。したがって、本シリーズのすべての巻は、執筆者一個人の業績というよりも集団的な所産というべきものであります。
たとえ、すぐれたベテラン教師の教材研究・授業実践といえども個人の力量には限界があります。私どもは、仲間・集団の具体的な力の結集の上に一個人の限界をこえる成果を生み出すことをめざしています。
その意味において、本巻を手にとられた読者諸氏にもぜひきびしい、かつあたたかいご批判とご助言をお寄せいただきたいと願っております。
本シリーズは、文芸、説明文、作文、読書の領域はもちろん総合学習やその他の領域にもわたる実践がまとめられ刊行の予定です。
なお、本シリーズのどの巻も、概念・用語はすべて統一されております。一つの基本的な思想・主張・理念に基づいた実践である以上当然のことでありますが、読者にとっては、どの巻から読みすすめられても、概念・用語など不統一でとまどわれることはあり得ないと信じます。すべての巻が相互にひびき合い、それぞれの成果を相乗的にせりあげるものになるはずです。
巻末には、執筆者とサークル員、監修の西郷との対談あるいは座談会の形式でいくつかの問題点をひきだし、解説を加えることにしました。参考になれば幸いです。
本シリーズも、これまでと同様、企画から刊行にいたるまで、編集担当の庄司進氏の献身的な協力をいただきました。紙面を借りて厚くお礼を申し上げます。
二〇〇三年七月 文芸教育研究協議会会長 /西郷 竹彦
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