文芸研の授業4
文芸教材編「ちいちゃんのかげおくり」の授業

文芸研の授業4文芸教材編「ちいちゃんのかげおくり」の授業

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人間の真実が見事に描かれた世界に子どもたちを引き込む。

小学校で最初に出会う戦争文学を典型的な文芸研方式による授業によって、子どもたちに切実な文芸体験を保証し、戦争の本質や平和を願う人間の真実をとらえさせる。


復刊時予価: 2,475円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-518412-3
ジャンル:
国語
刊行:
12刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 148頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
一 「ちいちゃんのかげおくり」の教材分析・研究
1 作家と作品
2 この作品を教材としてとりあげる意味
3 教科書指導書に見る「ちいちゃんのかげおくり」の授業の問題点
音読主義と活動主義国語で確かな平和認識は育つのか
4 この教材をどう読んだか
作品の構造(視点・筋・構成・場面)/ 表現の特質/ この教材でどんな力を育てるか
5 授業の構想
教授=学習過程/授業案
二 「ちいちゃんのかげおくり」の授業の実際(三年)
1 《だんどり》《とおしよみ》――〈よみきかせ〉〈はじめの感想〉
2 《たしかめよみ》〔第一場面/第一時・第二時 北村実践から〕
一場面前半の授業/一場面後半の授業
3 《たしかめよみ》〔第二場面/第三時 小林実践から〕
4 《たしかめよみ》〔第三場面/第四時 野澤実践から〕
5 《たしかめよみ》〔第四場面/第五・六時 野澤実践から〕
四場面前半の授業/四場面後半の授業
6 《たしかめよみ》から《まとめよみ》へ〔第五場面/第七時〕
《まとめよみ》〔第一時 野澤実践から〕
7 《まとめよみ》〔第二時 北村実践から〕
意味づけの授業/典型化の授業
8 《まとめよみ》〔第二時 野澤実践から〕
典型化の授業
9 《まとめ》
子どもたちの感想
10 実践を終えて
平和な世界をつくるために、今できることは何か/ 米国十三歳の少女のスピーチから/ 平和をつむぐ担い手として
三 「ちいちゃんのかげおくり」の授業をめぐって(座談会)
1 戦争文学を授業するときに
戦争を知らない子どもたちへの手だて/ 生活体験(直接体験)と文芸体験(間接体験)のもつ意味/ 初読と再読のちがいをどう指導するか/ 仮定法によってより深い意味づけを
2 「ちいちゃんのかげおくり」を意味づける
《たしかめよみ》と《まとめよみ》における意味づけ/ 人物にとっての意味づけと読者にとっての意味づけ/ 一場面と四場面の対比で見えてくるもの/ より豊かな読みをめざして/ 典型化の授業のあり方/ 反戦平和教材でくり返し戦争の本質をとらえる意味

まえがき

 最近の教育現場は、多くの教師たちが実感しているとおり、昏迷する文教政策によって、戦後、最低最悪の状態にあります。このままでは、子どもたちの花咲く可能性も芽生えのうちに枯渇せざるを得ない危機にあります。

 この現状を打開する唯一の道は、子どもたちに「真の学力」を育てる教育を確立する以外にありません。

 私ども文芸教育研究協議会(文芸研)は、創設以来、半世紀にわたる歴史のなかで、子どもたちを〈自己と自己をとりまく世界を変革する主体〉に育てあげるために〈のぞましい人間観・世界観の育成〉をめざして、ひたすら研究と実践を地道につみかさねてきました。

 〈ものの見方・考え方〉(認識方法)の関連・系統指導の原理に立って、文芸の授業、作文の指導、読書の指導においては、西郷文芸学の理論と方法をふまえ、また、説明文の指導においては、説得の論法をふまえて、〈ゆたかな、ふかい認識・表現の力〉を育ててきました。

 本シリーズ『文芸研の授業』は、私ども文芸研の過去半世紀の歴史の到達点を示す企画といえましょう。本シリーズの各巻とも、これまでの文芸研の全国大会に提出されたレポートを中心にまとめたもので、会内外のきびしい批判検討を経たのものであります。

 全国大会のレポートは、すべて、各サークルの月例研究会において討議をかさねたものを、年に二回の全国規模の二日間にわたる合宿研究会に提出し、厳正、綿密な検討を受けたものを大会分科会に提出します。勿論、分科会においては全国各地より参集された教師のみなさんによって、あらゆる角度から批判と助言を受けます。これらの成果をふまえ次の年度のレポートはさらに一層の研鑽をかさね、かくして一つの教材が多くの仲間たちによってすくなくとも十数年の長期の批判・検討を経たものになります。

 本シリーズの各巻の執筆を担当した者は、以上の成果を充分に踏まえて、まとめております。したがって、本シリーズのすべての巻きは、執筆者一個人の業績というよりも集団的な所産というべきものであります。

 たとえ、すぐれたベテラン教師の教材研究・授業実践といえども個人の力量には限界があります。私どもは、仲間・集団の具体的な力の結集の上に一個人の限界をこえる成果を生み出すことをめざしています。

 その意味において、本巻を手にとられた読者諸氏にもぜひきびしい、かつあたたかいご批判とご助言をお寄せいただきたいと願っております。

 本シリーズは、文芸、説明文、作文、読書の領域はもちろん総合学習やその他の領域にもわたる実践がまとめられ刊行の予定です。

 なお、本シリーズのどの巻も、概念・用語はすべて統一されております。一つの基本的な思想・主張・理論に基づいた実践である以上当然のことでありますが、読者にとっては、どの巻から読みすすめられても、概念・用語などの不統一でとまどわれることはあり得ないと信じます。すべての巻が相互にひびき合い、それぞれの成果を相乗的にせりあげるものになるはずです。

 巻末には、執筆者とサークル員、監修の西郷との対談あるいは座談会の形式でいくつかの問題点をひきだし、解説を加えることにしました。参考になれば幸いです。

 本シリーズでも、これまでと同様、企画から刊行にいたるまで、編集担当の庄司進氏の献身的な協力をいただきました。紙面を借りて厚くお礼を申し上げます。


  二〇〇三年七月   文芸教育研究協議会会長 /西郷 竹彦

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