- 作文力を高める四つの原則
- 一年生の作文指導のポイント
- 一年生の作文ワーク
- A 作文のための言語事項ワーク
- 1 片仮名の大体の読み書き、片仮名で書く語に注意する〔イ(イ)〕
- 2 漢字を文の中で適切に使うこと〔イ(エ)〕
- 3 長、拗、促、撥音等の表記ができ、助詞のはへをを正しく〔ウ(ア)〕
- 4 句点を打ち、また、読点の打ち方に注意する〔ウ(イ)〕
- 5 「 」(かぎかっこ)の使い方に注意すること〔ウ(ウ)〕
- 6 文の中における主語と述語との照応に注意すること〔オ(ア)〕
- 7 敬体の文章に馴染む〔力(ア)〕
- 【Aワークの解説】
- B 作文技能ワーク
- 1 書くための事柄を考えたり、見つけたりする〔ウ〕
- 2 見聞、経験などについて順序を辿って簡単な文章を書く〔エ〕
- 3 語と語、文と文とを続けて簡単な文章を書いたりする〔オ〕
- 4 自分の書いた文や文章を読み返す習慣を付ける、間違いに注意する〔カ〕
- 5 正しく視写したり、聴写したりする〔キ〕
- 【Bワークの解説】
- C ジャンル別作文ワーク
- 1 先生、あのね〔ウ〕
- 2 「もしも」作文〔ウ・オ〕
- 3 絵にっき〔イ〕
- 4 詩〔ウ〕
- 5 生活文〔ウ〕
- 【Cワークの解説】
作文力を高める四つの原則
作文力を高める原則
作文力を高める伝統的な原理として著名なものは、中国の古典に説かれた「三多の原則」(後山詩話)である。
@ 作多 (多く作る)
A 看多 (多く読む)
B 商量多(多く推敲する)
この「三多の原則」は、不易のものであり、今の時代にも十分に通用する。十分に通用するが、小、中学校の作文授業が、今以てこれだけで良いか、というとそうはいかない。これに、新しく、どうしてもつけ加えなくてはいけないことがいくつかある。
それらを含めて、私なりの実践的原則を提示し、参考に供したい。
(1) 多作、乱作、楽作
古来言われている「作多」の原則は、作文力を高める不変の王道である。私は、とにかく「やたら書かせる」ことを実践してきた。
一年間に、四百字詰めの原稿用紙を、一人ざっと二百枚は書かせたい。そのくらいを目安にしたい。これは、「作文くん」五十枚綴りで四冊、金額にして八百円である。一年間の作文指導に、ざっと一人千円もかければ、それだけでもかなりの量を書かせられることになる。せめてそのくらいは目安としたいものだ。
ただ書かせさえすればそれでいいのか、と開き直られれば困りはするが、ひとまずはそれで良いとしよう。それだって、書かせないよりはどんなにいいか知れない。つまり「乱作」をひとまず肯定していきたいのである。
もう一つ「楽作」と、私は言う。楽しんで書くのである。苦行ではなく、易行として作文を位置づけるのである。子どもにとって、楽しく、面白くなければ、本当に自ら学ぶエネルギーは生まれて来ない。私はそう思う。
子どもに喜ばれ、好かれ、楽しまれる新しい教材開発をしていかなくてはならない。
(2) 作文ワークによる基礎学力の形成
多作、乱作、楽作は不変の王道であるが、それらの作文に誤字や脱字や、不整合な主述や論理の通らない文などがいっぱいあるとしたならば、それではやはり作文力がついたことにはならない。
一つ一つの文が、正しく整った構造を持ち、意味がよく通り、誤字や脱字のないものになっていなければならない。そのような作文上の学力を確かに形成しようとするならば、それは、多作、乱作、楽作のみに安んじているわけにはいかない。そういう基礎学力の定着にふさわしい教材と、指導とが必要になる。
この課題に応えるのが「作文ワーク」である。「作文ワーク」は、作文を書く上に本当に必要とされる最も基礎的で、基本的な学力を身につけさせるために開発された新しい教材である。僅かの時間で、確実に基礎学力を形成できるように、しかも、かなりの程度子どもの自学に委ね、楽しく学習できるようにと、欲ばったオリジナルな開発教材なのである。
多くの教室で活用されることにより子どもの学力形成に貢献できると期待している。
(3) 学習用作文用紙の開発と常備
これまで、子どもの作文学習のための作文用紙というものはなかったと言ってよい。大体市販の大人用、一般用のものを用いてきた。
学童用のものと言えばノートとして一冊にまとめてある「作文帳」であった。これは、保存用にはすぐれているが、提出したり、教師が目を通したりするには重くて、大量で不便な点が多い。
また、市販のいわゆる「原稿用紙」は用紙が薄くてしわがより易い上に、二つに折らなくてはいけない。また、保存しておくためにはすべてにパンチ穴をわざわざ開けなくてはいけない。
これらを一挙に解決したのが「作文くん」(新学社発行)である。これは、学童の作文学習のために様々の工夫をこらして開発されたすばらしい用紙である。全国の教材店から手軽に購入できる。五十枚綴りで一冊二百円と価格も手頃である。
学校に一冊、家庭に一冊と持たせておくことによって、いつでも、どこでも手軽に作文が書けることになる。こういう背景的な環境整備もまたきわめて重要な配慮事項である。
(4) 作文用漢字辞典の活用
いわゆる「国語辞典」は、意味の分からない言葉について、その意味や用法を理解するために作られている。小、中学生であれば、一人残らず必ず一冊は持っているというベストセラーであり、かつロングセラーの古典的教材である。
しかし、持ってはいても一般にはこれほど使われない本も珍しい。教室で、あらゆる授業の機会を通じて盛んに使わせるごく一部の熱心な教師を別にすれば、国語辞典の利用は極めて頻度が少なく、ほとんどそれは死蔵されている状態に近い。
このような状態がなぜ生ずるかを子ども達に問うてみると、次のような本音が返ってきた。まことによく頷ける理由である。
一つは、分からないほどむずかしい言葉にはそれほど出会わない、ということである。
二つには、分からない言葉に出会ったら質問するのが一番簡単で、それで大方は事が足りる、というのである。
つまり、彼らの現実の日常言語生活においては、わざわざ国語辞典の助けを借りるまでもなく事足りてしまう、ということなのである。
では、それならそれでよいか、というとそうはいかない。例えば、作文を書かせてみると、次のような子どもの実態に常に頭を悩ませている教師が多い。
・漢字が使われていない。
・使われていても誤字や誤用が多い。
・送りがなの誤りが目立つ。
これらの解決のために、教師は赤ペンを用いてそれらの誤りをいちいち指摘する労をとるのだが、それによって子ども達の次からの用字や用語の力が高まるかというと、まずその見通しは暗いと言ってよい。労多くして功の少ないのがこの方法である。
では、その解決にはどうすればよいか。一つだけ良い方法がある。それは、
作文用漢字辞典
を開発することである。
小学生用の国語辞典の収録語彙数はざっと二万五千語と豊富である。豊富であることは良いことには違いないが、一語の意味を調べるのに、二万五千語の中から選び探すという労力を必要とする。
一方、作文を書く場合に子どもが用いる言葉は、すでにその意味が理解されているので「国語辞典」を用いる必要はない。彼らに必要なのは、漢字での書き方であり、送りがなのつけ方であり、その語句の用法の適否を判定する情報である。それは、語数にして一万もあれば十分で、そういう作文を書く為の専用の辞典の開発が必要である。
その辞典の活用によって、子ども達の作文における言葉や漢字の使い方はきっと大きく向上するに違いない。今のところは仮説の段階であるが、作文用漢字辞典が開発され、活用されたならば、子ども達の漢字の力は大きく高められるに違いない。
以上のことをまとめてみよう。要するに、
作文力を高める原則は
@多作、乱作、楽作の実践
A作文ワークの活用
B学習用作文用紙の活用
C作文用漢字辞典の活用
という四つのことの実践、具現にある、と私は考えている。
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- 明治図書