教え方のプロ・向山洋一全集82
「すごい」と言われる教師からぬすむ上達の方法

教え方のプロ・向山洋一全集82「すごい」と言われる教師からぬすむ上達の方法

好評2刷

「いいとこ取り」はムリ。システム全体を学ぶ方が近道

教室が熱中してシーンとなる授業から本当の教師修業は始まる。まずは授業の「第一声」を意識するようになればアマから脱出したということ。「正しい努力は裏切らない」がおいしそうな部分だけを横取りしようとすると、我流ハタンの憂き目にあう。そうならない道を提言。


紙版価格: 1,716円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
978-4-18-436211-6
ジャンル:
教育学一般
刊行:
2刷
対象:
小・中
仕様:
A5判 128頁
状態:
在庫僅少
出荷:
2024年4月22日

目次

もくじの詳細表示

1 向山洋一全集全一〇〇巻刊行へのまえがき
/向山 洋一
2 震災からの再建・ソフト面は教師が主担意識を
/松崎 力
T 教師修業に近道はない
1 正しい努力は裏切らない
2 遠い日の思い出―私の夏休み
3 学ばない教師は、いつしか「ツケ」がまわってくる
4 定石から入って定石を出る「守・破・離」―名人に定石なし
5 プロになるには近道はない
6 教師の力はかけ算で示される(たし算で示すことはできない)
7 高速道路を走るような感じで教師の実力がつく方法
8 修業なしには、上達しない
9 教師修業は果てしがなく
10 向山ノートの中から、向山実践は誕生していった
11 まずは授業開始一分間の行為をクリアせよ
12 「ちょっとしたこと」の中に原則は貫かれている。我流はちょっとしたことから始まる
13 教室が熱中してシーンとなる授業から本当の教師修業は始まる
14 授業の技量(技能)を向上させるには「いいとこ取り」ではできない。システム全体をライブ、模擬授業で学ぶしかない
15 授業が下手な教師の共通点
16 定石はトッププロの知恵の結晶―「型」を身につけ「板」につくようになり「様」になるまでの修業が腕を上げる。我流では決して上達しない
17 模擬授業で本当の自分の実力が分かり、正しい努力の方向を発見した
18 教師の技量がマスコミで大きく取り上げられるわけ
19 授業の技量は、その気で修業した人しか向上しない。向上のステージには五つのレベルがある
20 教師のすぐれた技量は、すぐれた哲学が創り出す
21 「教師の技量向上」こそが目下の最大のテーマである
22 授業の「第一声」を意識するようになればアマから脱出したということである
23 いかなる分野でも修業なしに技量が向上することはない
24 「分かったつもり」から一年たって「分かった」へ。それから一〇年かかって「分かったことができる」ようになる。名人への道はその先に続いている
25 語り、リズムはCDを車中で聞くことで身につける
U TOSS教師の圧倒的な授業力
1 読売教育ルネッサンスセミナー〈TOSS教師の授業に圧倒されました〉
2 「参加しないと一〇年遅れる」のは本当のことだ。トップを走る人は、最初から参加しつづけた人々だ。「まだチャンスのある」うちに、自分自身を「教育=今日行く」することだ
3 インターネットの時代―志ある教師の連帯の証
4 ゲーテ「私がとばすシャレ一つにもサイフいっぱいの金貨がかかっている」―プロの技能は身銭を切って学んでいく
5 すぐれた授業は、最初から最後まですべて良い。その意味で、最初の三分間が、その人の授業のすべてを物語る
あとがき
/松崎 力・兼田 麻子

1 向山洋一全集全一〇〇巻刊行へのまえがき
   /向山 洋一

 向山洋一全集全一〇〇巻が刊行されることになった。

 これは、日本の教育界で初めてのことであり、他の分野でもほとんど耳にしない出来事である。

 私が、小学校で三十二年間実践したことのすべて、千葉大学、玉川大学で十年余にわたって教えたこと、NHKクイズ面白ゼミナール、進研ゼミ、セシールゼミ、光村、旺文社、正進社、PHP、サンマーク出版、主婦の友社などで発刊した教材群(その多くは、日本一のシェアをとった)などが入っている。

 すべての子どもの学力を保障するために、とりわけ発達障がいの子の学力、境界知能の子の学力を保障するために、慶応大学など多くの専門医と協同研究をしてきた成果でもある。

 教育技術の法則化運動は、結成して一年で日本一の大きな研究団体となり、二十一世紀にそれをひきついだTOSSは、アクセス一億、一ケ月で七十七ヶ国からのアクセスがあるなど、ギネスものの無料のポータルサイトとなって、多くの教師、父母の方々に情報を提供するようになった。

 TOSS学生サークルも全国六十大学に広がり、TOSS保護者の支援サークルも生まれている。

 総務省、観光庁、郵便事業会社と全面的に協力した社会貢献活動もすすめてきた。例えば、「調べ学習」として、全国一八一〇自治体すべての「観光読本」(カラー版)を自費で作り、八〇〇余の知事、市、町村長からのメッセージをいただいている。

 このような大きな教育運動の中で、多くの方々と出会い仕事を共にしてきた。波多野里望先生、椎川忍総務省局長はじめ、幾多の方々の応援に支えられてきた。

 また、こうした活動を普及していく多くの編集者とも出会ってきた。

 とりわけ、お世話になったのが、向山洋一全集全一〇〇巻のほぼ全部を創ってくれた江部・樋口編集長である。多くの方々に心から御礼の意を表したい。

 この一〇〇巻が完成する時、二〇一一年三月一一日、一〇〇〇年に一度といわれる巨大地震が日本をおそった。

 東北地方太平洋岸が壊滅的な被害をうけた。

 向山洋一全集全一〇〇巻と共に、この東日本大震災のことも、この全集に含めておきたい。

 どこよりもはやく、東日本復興の企画会議を招集し、今回百数十人から寄せられた「復興企画」の中から寄稿をお願いしたものである。

 「TOSSの活動、願い、実行力」を具体的に示すものとして、後世に長く伝えられていくことと思う。


2 震災からの再建・ソフト面は教師が主担意識を

   /松崎 力


 マグニチュード9という未曾有の大地震が教育界に与えた影響は、計り知れない。五〇〇〇を超える学校が被災し、かけがえのない命も多く失われた。

 難を逃れたという子どもたちの中にも、家族や生活の場を失ったという子も多い。

 福島第一原発の放射能漏れのために、強制避難を余儀なくされている子もいる。

 避難所での生活は不便である。学習環境も整っていない。子どもたちの学びの場も至るところで奪われているのだ。

 そのような子どもたちに、わたしたちも復興に向けて何らかの役に立ちたい。多くの人はそう考えて、義捐金などに協力をしたのではないか。

 しかし、わたしたちは教師である。教師としてどのような形で復興に関わっていくか、そのことを考えなくてはならない。

 例えば、被災した子どもたちの基礎学力を保証していく問題がある。向山行雄前全国校長会長は、震災後四月からの新教育課程実施上の課題の中で、学校再開が五月一日にずれ込んだ場合は約六〇時間から九〇時間の時数が不足し、さらに六月一日にずれ込んだ場合は約一五〇時間から一九〇時間もの時数が不足してしまうと通知している。

 新学習指導要領が完全実施され、新しい教科書は分厚くなった。算数は、問題数がかなり増え、内容も難しくなっている。このような新学習指導要領に沿った学習の場を、被災された子どもたちにも提供していかなければならない。避難所にもいずれインターネットがつながるだろう。TOSSが提供している子どもランドをさらに充実させ、避難所でも学習ができる環境を整える。分厚い教科書そのままというわけにはいかないが、内容を精選し、より効果的な学びができる配慮が必要である。

 原発が水素爆発を起こしたあと、全国で放射能を極度に怖れる動きが見られた。水を買い占めたり、被災地の野菜購入を拒否したり、風評による被害が至るところで報告された。

 私は、震災二週間後に関西地区を訪れた。私が乗ったタクシーの運転手は、息子から「東京の水は飲めないから、水を大量に送ってくれ」と頼まれ、水を数万円分買い東京にいる息子に送ったと話していた。私の住む栃木はいちごの生産で有名であるが、震災後ハウスいちごのツアー客は激減し、観光バスの来場はゼロになってしまった。福島から遠く離れた東京のある学校では、子どもたちの外出を禁止し、体育などすべての活動を室内で行うよう指示をした校長もいた。

 このような混乱は、放射能への正しい知識が欠如しているために起こっている。メディアが発信する放射線の量に関しても、マイクロシーベルトとミリシーベルトの違いを見ずに、単に数値だけを追って「こんなに高いのか!大変だ」などと誤解する。風評を防ぐための手立てをとることも教育の仕事である。

 子どもたちの心のケアも行わなければならない。被災地では家や職場が流されて、保護者が無職になってしまった子どもたちもいる。将来設計を立てることができず、不安は募る。このような状況を子どもたちは敏感に察知する。言葉掛けだけでは拭いきれない不安を払拭するためには、被災地での人材育成事業が必要になる。

 TOSSは総務省や株式会社「いろどり」と連携して、「官民連携人材育成モデル事業」を展開している。葉っぱビジネスで、年間に一〇〇〇万円を稼ぐ高齢者を育てた「いろどり」のノウハウを被災地の復興に役立てたい。壊滅的な被害を受けた漁村や農村で新たな人材育成事業を立ち上げ、職の安定化を図っていく。このことが子どもたちの心のケアにつながる。

 そして、教育ができる最大の心のケアは、楽しい授業をすることである。子どもたちが熱中しながら、基礎学力を高めていく授業をする。授業で子どもたちを励ましていく。授業こそが、教師の生命線である。

 教師として、大震災からの復興のためにできることは何か。それを常に考え続けていくことこそ、教師にできる復興への第一歩である。

著者紹介

向山 洋一(むこうやま よういち)著書を検索»

1943年9月15日生まれ

1968年3月 東京学芸大学社会科卒業

2000年3月 東京都大田区立多摩川小学校退職

教育技術法則化運動代表,千葉大学非常勤講師,上海師範大学客員教授,日本教育技術学会会長,日本言語技術教育学会副会長。月刊『教室ツーウェイ』『向山型「算数」』『向山型「国語」』編集長。月刊『教育トークライン』,隔月刊『ジュニア・ボランティア教育』編集人。

日本一のインターネット教育情報ポータルサイトTOSSランド代表。

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※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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