- はじめに
- 第1章 今こそ,国語授業の「対話」をアップデートしよう
- 1 国語科の学びと対話
- 2 子供が学びを創り出す対話
- 3 発表的なグループ活動,教師の答えを探る一斉授業
- 第2章 「対話」を通して学ぶ土台をつくる
- 1 ボトムアップ型の学級をつくる
- Point1 答えをもつ者として君臨しない
- Point2 子供を追い詰めない
- Point3 教室に横のつながりをつくる
- Point4 表情と眼差し
- 2 国語の眼鏡をつくる
- Point1 「話すこと・聞くこと」の教材と国語の眼鏡
- Point2 「書くこと」の教材と国語の眼鏡
- Point3 「読むこと」(説明文)の教材と国語の眼鏡
- Point4 「読むこと」(物語文)の教材と国語の眼鏡
- 3 ICT活用の基礎をつくる
- Point1 5分間タイピンググランプリ
- Point2 みんなに伝えたい! ○○カード
- Point3 みんなはどんな気持ち? クラスアンケート
- Point4 係活動での活用
- Column 1 学びは状況に依存する―学級経営―
- 第3章 対話型国語授業の状況を整える―単元―
- 1 単元づくりの視点
- 2 各領域の単元づくり
- Point1 「話すこと・聞くこと」領域の単元づくり
- Point2 「書くこと」領域の単元づくり
- Point3 「読むこと」(説明文)領域の単元づくり
- Point4 「読むこと」(物語文)領域の単元づくり
- Column 2 国語科の学びと国語の眼鏡,そして資質・能力
- 第4章 対話型国語授業の状況を整える―授業―
- 子供が学びを創り出す授業デザイン
- 方略1 学びの空間をつくる
- Point1 学習形態
- Point2 教材を共に見つめる
- Point3 机の上にあるもの
- 方略2 発問する
- Point1 分かる・できるをつくる
- Point2 もやもやをつくる
- Point3 発問を組み合わせる
- 方略3 指し示す
- Point1 発言を指し示す
- Point2 目的・相手を指し示す
- Point3 矛盾を指し示す
- 方略4 整理する
- Point1 分ける
- Point2 並べる
- Point3 つなげる
- 方略5 ICTを導入する
- Point1 きっかけをつくる
- Point2 情報にアクセスさせる
- Point3 学びを蓄積させる
- Column 3 「待つ」ことも,対話を促す働きかけ
- 第5章 対話型国語授業の実践事例
- 話すこと・聞くこと
- 2年 しつもんしあって,くわしく考えよう
- 「あったらいいな,こんなもの」(光村図書)
- 3年 役割におうじて話し合おう
- 「はんで意見をまとめよう」(光村図書)
- 書くこと
- 3年 かんしゃの気持ちをつたえよう
- 「6年生のすごいところ」(参考:光村図書「これがわたしのお気に入り」)
- 5年 読み手が納得する意見文を書こう
- 「あなたは,どう考える」(光村図書)
- 読むこと(説明文)
- 2年 みんなが楽しめるあそびかたを考え,せつめいしよう
- 「おにごっこ」(光村図書)
- 3年 説明の方法を見つけよう
- 「すがたをかえる大豆」(光村図書)「自然のかくし絵」(東京書籍)
- 5年 資料を使った文章のよさを見つけよう
- 「固有種が教えてくれること」(光村図書)
- 読むこと(文学)
- 1年 おんどくげきで,おもしろさをつたえよう
- 「おおきなかぶ」(光村図書)
- 3年 とっておきの考えを発信しよう
- 「モチモチの木」(光村図書)
- 6年 人物の生き方を表す3つの文を選び出そう
- 「海の命」(光村図書)
- おわりに
はじめに
GIGAスクール構想の実現に向けた取組が進み,教室の風景,教師の教え方,子供の学び方が急速に変化しています。共有,分析などといった情報の処理を1人1台端末が担うことで,学びの幅がグッと広がることは,多くの先生方が実感しているところだと思います。
しかしながら,ここであえて問いたいことは,1人1台端末の活用,それが授業改善の「核」であるのかということです。教室は,多様な子供たちが集い,同じ教材や題材を見つめ,共に学ぶ場所です。一人一人が異なる知識や経験をもち,それぞれの見方で教材や題材を見つめながら,学んでいるのです。この子供たちがよりよい学びを得るための「核」は,それぞれの知識や経験に根差した考えを,交換したり組み合わせたりすることにあります。すなわち,「対話」です。
対話は,普段,教室の至るところで自然発生的に行われています。私の学級では,昼休みに,次のような対話が聞こえてきました。
A 次のお楽しみ会,ドッジボールと鬼ごっこ,どっちにする?
B ドッジボールは同じ人ばかり投げるから,やめたほうがいいと思う。
C たくさん投げた人は,投げていない人に譲るとかにする?
B 前もそうしたけど,結局みんな忘れちゃってたから,無理だよ。
A じゃあ鬼ごっこのほうが,みんな楽しめるかも。
C 鬼ごっこだと,なかなか捕まえられなくて,鬼が大変。
B でも,ふえ鬼(タッチされたら鬼になる)だったら,鬼が増えるよ。
A ふえ鬼だけだとすぐ終わっちゃうから,こおり鬼とたすけ鬼もやれば,いいと思う。いろいろした方が,きっとみんな楽しいよ。
Aさんは,一貫して「みんなが楽しめる」ということを大切に,考えを述べています。Bさんは,自身の経験をもち出しながら,ドッジボールのデメリットを述べています。反対に,Cさんは,自身の経験をもち出しながら,鬼ごっこのデメリットを述べています。
この3人の子供たちは,まさに,それぞれの知識や経験に根差した考えを,交換したり組み合わせたりする対話を行なっていると言えます。
このような対話が授業の中で行われることによって,国語科のよりよい学びを実現することが,本書の内容です。国語科は,子供が日常生活で使っている「言葉」を直接の学習対象としています。したがって,「言葉の力」を育むためには,それぞれの知識や経験に根差した考えを交換したり組み合わせたりする対話が,一層重視されるべきだと考えています。
1章では,本書で提案する「子供が学びを創り出す」対話について,実際の授業記録を紹介しながら具体的にお示しします。
2〜4章では,「子供が学びを創り出す」対話を実現するための具体的な手だてをご説明します。
5章では,各学年,各領域における実践事例をご紹介します。
それでは,子供が学びを創り出す「対話型国語授業」のつくりかたについて,一緒に考えていきましょう。
2022年6月 /中野 裕己
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