新版 数学的な考え方とその指導2
指導内容の体系化と評価

新版 数学的な考え方とその指導2指導内容の体系化と評価

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計算だけが算数の学力ではない。真に必要な学力を育てる。

第1巻で数学的な考え方の内容とその指導法を具体的に示した。本書では、数学の指導内容とは何か、どのようなものをどう指導するかを体系的に解説し、実際の授業例をも示した。また、数学的な考え方や関心・意欲・態度についての評価のポイントも具体的に解説した。


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ISBN:
4-18-417012-9
ジャンル:
算数・数学
刊行:
6刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 224頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 指導内容体系化の基本的考察
§1 指導内容体系化の必要
§2 体系構成の要素
1 基礎的な経験
2 定義(約束ごと)
3 定理(見つけさせ,説明させていくこと)
§3 体系構成に基づく指導法の原理
第2章 指導内容の体系
§1 算数の指導内容
§2 指導内容の体系一覧
「数」の体系
「加法・減法」の体系
「乗法・除法」の体系
「量と測定」の体系
「図形」の体系
「式」の体系
「関数」の体系
「統計」の体系
第3章 指導内容「数」の体系化
§1 数えることとその基礎的な経験
§2 数の用い方
§3 数え方の工夫
@適当な観点によって,分類して,数える/A適当な大きさにまとめて数えること/B数えやすいものに置き換えて数えるという関数的な考え
§4 整数,小数の記数法・命数法
@十進位取り記数法/A命数法と漢数字による記数法/B0の意味
§5 小数・分数について
@ある大きさをa等分したものをb個集めた大きさを表す/A量の測定値を表す/Bある大きさをa等分して,それをb個集めることを表す/Cb/a(0.a)は単位の大きさb/1(0.1)のa倍の大きさを表す/D割合を表す/Ea÷b の商を表す
§6 数の抽象
@整数の抽象/A小数,分数の抽象
§7 数のモデル
@数直線/Aその他のモデル
§8 数の性質
@整数・小数の大小・順序の,記数法による判別の仕方/A数の大小・順序と数直線/B数の合成分解/C約数,倍数/D分数の大小,通分,約分
§9 概数
§10 数についての考え方
第4章 指導内容「加法・減法」の体系化
§1 加法・減法の基礎的な経験
§2 たし算の用いられる場合とたし算の意味
@加法の用いられる場合/Aたし算の意味/Bたし算の意味の拡張1/Cたし算の意味の拡張2/D3口以上のたし算・拡張3
§3 ひき算の用いられる場合とひき算の意味
@ひき算の用いられる場合/Aひき算の意味/Bひき算の意味の拡張1/Cひき算の意味の拡張2/D3口以上のたし算,ひき算
§4 加減の相互関係
§5 加法・減法の性質
@たし算の性質/Aひき算の性質
§6 1位数の加法とその逆の減法の計算
@和が10以下のたし算とその逆のひき算/A和が10以上のたし算とその逆のひき算
§7 整数の加法・減法の筆算方法
§8 小数の加減法
§9 分数の加減法
@同分母分数の加減法/A異分母分数の加減法/B帯分数の加減法
§10 加法・減法についての考え方
第5章 指導内容「乗法・除法」の体系化
§1 乗法・除法の基礎的な経験
§2 乗法の意味
§3 かけ算の意味の拡張1−0のかけ算−
§4 かけ算の意味の拡張2−乗数が小数,分数の乗法−
@乗数に当たる数が小数になると/A小数の乗法の意味を表すことばの式/B分数の乗法/Cモデル及び公式について
§5 除法の意味
§6 わり算の意味の拡張1−あまりのあるわり算−
§7 あまりの0と,乗法と除法の関係
§8 わり算の意味の拡張2−除数が小数・分数の除法−
§9 乗法・除法の性質
§10 九九の作成
§11 2位数と1位数のかけ算の仕方
@何十×1位数/A2位数×1位数/B1位数×何十/C1位数×2位数
§12 「整数,小数×整数」の筆算
§13 「整数,小数×小数」の計算の仕方
§14 分数の乗法計算の仕方
§15 除法の計算方法
§16 整数除法の筆算の仕方とそのアルゴリズム
§17 小数の除法計算の仕方
§18 あまりのある小数のわり算のあまりの出し方
§19 分数のわり算
§20 整数,小数,分数の乗法・除法計算の統合
§21 乗除計算の概算
§22 乗法・除法についての考え方
第6章 指導内容「量と測定」の体系化
序 「量と測定」で取り上げる量
§1 長さの比較・測定
@長さの基礎的な経験/A長さの直接比較/B長さの間接比較/C長さの任意単位による測定/D長さの普遍単位による測定
§2 広さ
@広さの基礎的な経験/A広さの直接比較/B広さの間接比較/C広さの任意単位による測定/D面積の普遍単位による測定
§3 かさ
@かさの基礎的な経験/Aかさの直接比較/Bかさの間接比較/Cかさの任意単位による測定/D体積・容積の普遍単位
§4 重さ
@重さの基礎的な経験と直接比較/A重さの任意単位による測定/B重さの普遍単位
§5 時間(時刻)
@時間の基礎的な経験/A時刻・時間
§6 角
@直接比較と間接比較/A普遍単位による測定
§7 速さ 異種の2量の割合
§8 間接測定
@長さを求めるとき/A面積を求めるとき/B体積を求めるとき/C重さを求めるとき
§9 面積・体積の公式
@長方形・正方形の求積公式/A平行四辺形の求積公式/B三角形の求積公式/Cひし形,台形,多角形の求積(発展的な扱い)/D円周の公式/E円の面積の公式/F円の公式の活用:おうぎ形の面積/G直方体・立方体の求積公式/H直方体・立方体の公式の活用
§10 メートル法
§11 概測
@平均/A概則
§12 量と測定についての考え方
第7章 指導内容「図形」の体系化
§1 「図形」で,主に何を指導するか
@基礎的な経験/A「形」の明確な弁別/B概念に当てはまるものの範囲をとらえる/C内包を豊にする/D他の図形との関係を明らかにする/E外延をより広げる/F概念を拡張する/G新しい観点から図形を見直したり,関係の見方や操作の仕方,表現の仕方を広げる/H図形の見方を育てる/I空間概念を育てる
§2 「図形」で取り上げる基礎的な経験−形−
§3 三角形・四角形
@三角形・四角形の概念/A三角形・四角形の性質/B三角形・四角形の構成
§4 長方形・正方形・直角
@意味/A相互関係
§5 二等辺三角形・正三角形
@二等辺三角形・正三角形の意味/A二等辺三角形・正三角形の性質/B二等辺三角形・正三角形の弁別・構成/C相互関係
§6 平行四辺形・ひし形・台形
@平行四辺形の意味/A平行四辺形の性質/B台形,ひし形の意味,性質/C四角形の弁別・構成
§7 多角形(発展的内容)
@意味
§8 円・おうぎ形
@基礎的な経験/A円の意味と性質/B円の構成
§9 角
@角の基礎的な経験/A角の意味
§10 平行・垂直
@垂直・平行の意味/A平行線の性質/B平行・垂直の判断・作図
§11 直方体・立方体
@立体の基礎的な経験/A直方体・立方体の意味と性質/
B表現・構成
§12 柱体
@角柱,円柱の意味/A性質/B表現
§13 球
§14 点の位置
@直線上の点の位置/A平面上の点の位置(発展的内容)
§15 敷き詰め
§16 図形についての考え方
第8章 指導内容「式」の体系化
§1 式についての既習事項−演算記号と=の使い方−
§2 等号の意味
§3 ことがらや関係を表す式をよむ
§4 ことばの式や公式に表したり,これをよんだりする
§5 四則の混合した式や,かっこを用いた式
§6 ○や△を用いた式や,文字を用いた式
§7 式に表す・式をよむ考え方
第9章 指導内容「関数」の体系化
§1 関係を表す表
§2 関係を表す折れ線グラフ
§3 関係を表す式
§4 比
§5 比例
§6 関数の考え
第10章 指導内容「統計」の体系化
§1 基礎的な経験
§2 表
§3 棒グラフ
§4 折れ線グラフ
§5 百分率
§6 内訳グラフ
§7 平均
§8 統計的な考え
第11章 算数科の評価
§1 指導の過程における評価
1 指導の過程における評価の意味とその重要性
2 指導の過程における評価を生かす指導の留意点
§2 評価の種類
§3 評価と評定,測定
1 評価,評定,測定の意味
2 評価,評定と測定の異同について
§4 数学的な考え方と関心・意欲・態度の評価
1 数学的な考え方の評価
2 「関心・意欲・態度」の評価とは
3 指導要録での「関心・意欲・態度」の位置づけ

はじめに

 第1巻「数学的な考え方の具体化と指導─算数・数学科の真の学力向上を目指して」は,次のようなことをねらいとして著した。

 数学的な考え方を育てることは,算数・数学教育の目標である。それなのに,この「数学的な考え方とその指導」について研究したい,勉強したいと思っても,これについて詳述した書物は出版されていない。しかも,今日の日本の教育は,学力低下をもたらすということがもっとも大きな問題になっている。とくに算数・数学科は,その憂いが顕著である。

 進歩の激しいこれからの社会では,自ら考え,判断し,自らの行動を決定し,実行できるようでなくてはならない。常に創意工夫に努め,少しでも新しいよりよいものを求めていく能力や態度を身に付けていかなくてはならない。

 そのような自主的に考え,判断し,自らの力で問題を解決していくことは,単に形式的計算が正しくできる力だけでは,全く期待できないことである。

 解決のためにどんな知識や技能を使ったらよいかを判断し,時にはそのような知識や技能を駆り出すことができなくてはならない。このようなことを可能にする力を身に付ける。さらに,問題解決のためにどのように考えるのがよいかといった,解決のための種々の考え方を身に付けることが,数学的に自主的に活動して,創造的活動をしていくための最も重要な学力なのである。

 数学教育では,数学的な考え方こそが,このような学力なのである。

 ところが,はじめに述べたように,「数学的な考え方にはどのようなものがあるのか,その指導はどのようにしたらよいのか」ということについて研究し実践したくても,これについて書かれた書物が,今まったく出版されていないのである。

 そこで およそ算数・数学教育に関係するものなら,必ず研究しなくてはいけない「数学的な考え方とその指導」について,これまでの拙著を再検討して,新しく第1巻として著すことにしたのである。そして,さらにもう1つの重要な学力である「関心・意欲・態度」についは,その指導どころか,その意味さえまともに捉えているとは思えない。そこでこの「関心・意欲・態度」の意味と指導法も詳しく考察した。

 ところが実際の指導を考えると,「数学的な考え方」にしろ「関心・意欲・態度」にしろ,毎日の授業で育てていかなくはならない。そこで,授業で取り上げるすべての内容について,どのような数学的な考え方が育てられるかを,明確にしなくてはならないはずである。ところが,このことが実際にはほとんどなされていない。

 そこで,各内容でどのような数学的な考え方が指導できるかを明確にすることにした。そのためには,指導内容の意味を明確にしなくてはならない。すなわち,教えるべき内容と,考えさせ,見つけさせる内容を明確に区別しなくてはならない。それがはっきりしていないために,指導そのものが混乱しているのである。算数科の内容には,基礎的な経験と,用語などの定義にあたる約束と,子供たちに考えさせ,見つけさせ,説明させたい,定理にあたるものがある。これらを明確にし,算数の内容を体系化したのが本巻である。これらはこれまで誰も行っていないことであった。しかし,これによって,各内容で育てられる数学的な考え方を明示することができた。毎日の指導を,この巻に拠って考えていけば,どんな数学的な考え方が育てられるかを,はっきりとらえた指導ができるであろう。

 最後に,算数・数学指導で重要な評価について述べた。評価というと,テストや学力調査をすることのように考えられがちであるが,評価は,よりよい指導をするため,よりよい学習をするためのものであるから,「指導の過程における評価」こそが最も重要なのである。この指導の過程における評価によって,数学的な考え方の評価もできるのである。そこでこの点について詳しく述べた。

 このように,これまで算数・数学教育で,数学的な考え方の育成という観点からみて,きわめて重要でありながら,その研究が不十分であった,指導内容の体系化と指導,さらに評価を取り上げたのが,この第2巻である。ぜひこれを活用して,数学的な考え方という真の学力の向上を目指してほしい。


  2004年6月   著 者

著者紹介

片桐 重男(かたぎり しげお)著書を検索»

1925年,東京都に生まれる。東京教育大学(現筑波大学)大学院教育学研究科修士課程修了。都立教育研究所指導主事,文部省初中局小学校課教科調査官,横浜国立大学教育学部教授,文教大学教授。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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