- はじめに
- 序章 教師のためのペップトークの基礎知識
- 第1章 「学級経営」場面の練習問題10
- 「学級経営」場面のペップトークのポイント
- Q1 新学期当初から素直でなく,ケンカが多い子に
- Q2 言葉の行き違いからケンカになってしまう子たちに
- Q3 5月の連休明け,トラブルの増えてきた子たちに
- Q4 書くことに自信がなく,乱雑な字を書く生徒に
- Q5 授業中,教室から飛び出してしまう子に
- Q6 学級や学校のお便りを家庭に渡してくれない生徒に
- Q7 「他人のせい」にするのをやめさせたい生徒たちに
- Q8 自分自身で生活管理をできるようにさせたい生徒に
- Q9 清掃時,ついついふざけて遊んでしまう生徒に
- Q10 大掃除にまじめに取り組まない子に
- 第2章 「学習指導」場面の練習問題10
- 「学習指導」場面のペップトークのポイント
- Q11 数学が苦手な生徒たちに
- Q12 授業前の整列ができない子たちに
- Q13 自分の持ち物を大切にできない子に
- Q14 読書の習慣をつけさせたい子に
- Q15 授業中,手を挙げて発表できない子に
- Q16 授業の準備が素早くできない子に
- Q17 運動が苦手で,体育の授業が大嫌いな生徒に
- Q18 歌が苦手で,合唱の授業でふてくされている生徒に
- Q19 頑張ったのに点数が取れず,泣いている子に
- Q20 志望校が決まらず,困っている生徒に
- 第3章 「部活指導」場面の練習問題10
- 「部活指導」場面のペップトークのポイント
- Q21 駅伝で,前の選手に続けるよう頑張らせたい生徒に
- Q22 気持ちがばらばらで力が合わない綱引部の生徒たちに
- Q23 全国優勝を目指すリレーメンバーの生徒たちに
- Q24 春の大会で1回戦で負けてしまった生徒たちに
- Q25 朝食抜きで朝部活に参加する生徒に
- Q26 本番を1週間後に控え,練習不足で自信がない生徒に
- Q27 選手選考で外れ,落ち込んでいる生徒に
- Q28 3年生最後の夏の大会が中止になってしまった生徒に
- Q29 この試合を最後に,部活動が廃部になる生徒たちに
- Q30 最後の大会で試合中にけがをしてしまった主将の生徒に
- 第4章 「学校行事」場面の練習問題10
- 「学校行事」場面のペップトークのポイント
- Q31 修学旅行での取り組みに向け,困っている生徒たちに
- Q32 乱暴な子が文化祭実行委員長になり,不安がる子たちに
- Q33 避難訓練に真剣に取り組まない生徒たちに
- Q34 夜尿症が不安で,修学旅行に行きたくない子に
- Q35 学芸会で活躍させたい,発達に遅れのある子に
- Q36 職場体験学習に出かけて緊張している生徒に
- Q37 自然教室の登山で,はしゃいで危ない生徒に
- Q38 地域のボランティア活動に積極的に参加させたい生徒に
- Q39 駅伝大会の準備を請け負う特別支援学級の生徒たちに
- Q40 在校生のいない寂しい卒業式を迎える生徒たちに
- 第5章 「生徒指導」場面の練習問題10
- 「生徒指導」場面のペップトークのポイント
- Q41 おはじきを大量にこぼして,泣きそうになっている子に
- Q42 自分で壊したペンを,友達が壊したとウソをつく子に
- Q43 走るのが遅くて,級友から心ない言葉をかけられた子に
- Q44 困難に対して、すぐにあきらめてしまう生徒に
- Q45 はしゃいで,女子が嫌がる言葉を発する男子に
- Q46 生活日記を定着させたい生徒に
- Q47 登校できずに,自宅に引きこもっている子に
- Q48 コロナ禍の中,親の考えでマスクをしない生徒に
- Q49 数を数えることが苦手な,特別支援学級の生徒に
- Q50 SNSに憶測で悪口を書かれ,傷ついた生徒に
- おわりに
はじめに
あなたは,「言葉の力」を信じますか? 皆さんは,あの人のあの言葉によって傷ついた経験はありませんか。それとは逆に,あの人のあの言葉で励まされたり,勇気づけられたことはありませんか。
前作の『教師のための「ペップトーク」入門』で,ペップトークを多くの先生方や指導的立場のある方に,知っていただくことができました。
「気がつくと,ついついダメなところに目が向いて,叱ってしまいます」,「とらえ方変換に心がけることで,生徒への言葉がけが変わりました」,「親子でペップトークの本を読んでいます。子どもに,『お母さんプッペだよ』と注意されることがあります」…こんな感想を送っていただき,ペップトークの大切さを改めて感じています。
ペップトークは,『受容→承認→行動→激励』の4つのステップで行われますが,コミュニケーションにおいて,最初の『受容』がいかに大切かを伝えてきました。
例えば,「体育の授業やりたくないなあ」と口にした生徒に対して,「何言ってるんだ。授業はきちんと受けるものに決まっているんだ」と言うか,「そうかあ,そんな気持ちになる時もあるよなあ」と言うかでは,この後の生徒の受け答えが全く違うものになってきます。前者は,心を閉ざし,話が進展しません。後者は,生徒の気持ちを受け入れているので,「何かあったのか?」と聞くことで,自分の気持ちを話すことが多くなります。
要するに,「認める」ことの大切さです。人は,周りから認められたいのです。「認」の文字を分解すると,「言葉が刃となって,心に突き刺さる」ととらえることもできます。人は,『自分のことは認めてほしいが,他人のことは認めたくない』という心理が働くことがあるそうです。
相手を認める。学校や会社,そして家庭でも,誰かが話す時に「身を留めて話を聴く(認める)」ことができたら,話し手は,聴き手に対して尊敬や愛情を感じるのではないでしょうか。
以前の私は,児童・生徒たちの話を受け入れることができていませんでした。児童・生徒の話を半分馬鹿にしながら聴いていたり,腕を組んで聴いていたり,自分に合わない話だと,眉をひそめて聴いていたことを思い出し,申し訳なく思っています。
特に家庭では,そういうことがおろそかになっていないでしょうか。カウンセリングで,子育て中のママの相談を受けることがありますが,お子さんが「泣き止まない,無理なことを言ってくる,家事の邪魔をする」ことがあるそうです。ママは,お子さんの話を,身を留めてしっかり聴いてあげているでしょうか。学校では,先生方は子どもたちの話を,身を留めて聴いているでしょうか。身を留めるは「認める」につながります。
年齢を経てくると,自身の経験の中で,物事を考えるようになるため,自分で枠をつくることが多くなりがちです。子どもたちの夢を否定するようになります。多くは,自身が夢をかなえた経験がないからだと思います。自身に夢を叶える,または夢に向かって努力する体験があれば,子どもたちに夢をもつことの大切さを伝えられるのではないでしょうか。
昔から,「子は親以上に育たない」と言いますね。特に親は,自身の体験を強く出しがちになります。子どもが幼い頃には,ちょっとしたことができただけでも,「この子は天才じゃないだろうか」と思う親が多いのに,だんだん成長するにつれて,子どもが口にした夢を否定するようになる傾向があります。自分の子どもに対して,「〇〇ちゃんは,世界で活躍するようになる」と言い続けて育てた私の友人がいます。その子は現在はアメリカで商社マンとして活躍していますが,中学生の頃から海外の話をよくしていたことを思い出します。もちろん,運も出会いもあるわけですが,言われ続けると,何となくその方向に向かうということが実際にあるようです。
次代を担う子どもたちに,「言葉の力」の大きさを伝え,夢をもって学び続ける素晴らしさを,感じさせてあげましょう。
2021年1月 /三森 啓文
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