国語科授業の新展開25
国語教室の活性化 小学校編

国語科授業の新展開25国語教室の活性化 小学校編

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国語の授業を面白くわかりやすい,しかも力のつく授業にするにはどうすればよいか,教室経営から授業展開まで著者の豊かな経験をふまえた提案。


復刊時予価: 2,959円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-387911-6
ジャンル:
国語
刊行:
9刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 216頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
T 授業・ああ、このよきもの
一 子どもを変えるおもしろさ
1 笑いを買った出合い
2 「わからなさ」という、とまどい
3 淋しさと悲しさを感ずる
4 「秋風」は淋しく悲しいか
5 だれの「なきがら」か
6 生命の根源として「鼻の穴」
7 死の厳粛さと、あっけなさと
8 泣き出した女の子
二 書き添えておきたい三つのこと
1 教材の選定について
2 子どもの生活経験と鑑賞について
3 作品と出典について
U 国語教室活性化のための授業論
一 確認型から変容型へ
二 散歩型から旅行型へ
三 挙手指名型から作業巡視型へ
四 網羅的指導型から焦点的指導型へ
五 千篇一律型から千変万化型へ
V 活性化をめざす指導計画の立案
一 活性化のための立案心得
1 まず、教材の原点的研究を
2 理想状態の具体的把握を
3 子どもの抵抗と限界の把握
4 指導方法の創造的開発
二 活性化をめざす指導計画の実際
1 低学年 国語科学習指導案(童話)
2 中学年 国語科学習指導案(民話)
3 高学年 国語科学習指導案(伝記)
三 活性化のための展開心得
1 変える、動かす
2 切る、捨てる
3 絞る、まとめる
4 ながめる、見つめる
5 あるがままを楽しむ
W 活性化のための授業基礎技法―授業における技法の大切さ―
一 発問の技法
1 発問とは何か
2 発問技法・五つのポイント
二 指名の技法
1 指名とは何か
2 指名技法・五つのポイント
三 話し合いの技法
1 話し合いとは何か
2 話し合いの技法・五つのポイント
四 個別作業(ノート作業)の技法
1 個別作業とは何か
2 個別作業(ノート)の技法・五つのポイント
五 机間巡視の技法
1 机間巡視とは何か
2 机間巡視の技法・五つのポイント
六 板書の技法
1 板書とは何か
2 板書の技法・五つのポイント
七 その他の技法
X 低学年における授業活性化の実際―授業の活性化とは―
一 一年「チックとタック」
1 授業の意図
2 中心的な授業場面
二 二年「子ガニ」
1 授業の意図
2 中心的な授業場面
Y 中学年における授業活性化の実際
一 三年「手ぶくろを買いに」
1 授業の意図
2 中心的な授業場面
二 四年「とびこめ」
1 授業の意図
2 中心的な授業場面
3 「とびこめ」余録
Z 高学年における授業活性化の実際
一 五年「空にうかぶ騎士」
1 授業の意図
2 中心的な授業場面
二 六年・俳句「闘鶏の眼つぶれて飼はれけり」
1 授業の意図
2 中心的な授業場面
[ 活性化を阻む授業通説の批判
一 まず指導書、まず教科書
二 学習計画、学習問題は子どもの手で
三 教師中心の授業では力がつかない
四 鑑賞指導では「なぜか」と問うな
五 学校としての指導過程を作れ
\ よりよい授業者となるために―私を育てた七訓七話―
一 やっぱり、それは、教材研究の不足です
二 成果が一言で言えないようでは、それは碌な研究ではない
三 技術は、百発百中でないとねえ
四 指導案は十も二十も作れ。ただし、授業になったら、それらの一切を捨てよ
五 自分のことばを、自分の耳で聞きながら話せるようになれば一人前です
六 子どもの心の中に、清々しい疑問を育てることが本物の教育ではないか
七 経験は意図的に積み重ね、しかも、それに整理を加えなければ力にはならない
あとがき

まえがき

 私は、音楽や体育のすぐれた授業を見ると、いつでも「すばらしいなあ」と感じます。音楽や体育の先生は、子どもの「望ましくない状態」を的確に診断し、そのところに適切な指導を加えることによって、見事に子どもたちを「望ましい状態」に変えていきます。子どもたちがぐんぐんよくなる姿を、現実のものとして目のあたりに見せてくれます。

 一方、子どもたち自身も、先生の指導を真剣に受けとめ、生き生きと学習に参加しています。学習意欲に支えられた学習活動が次々に展開され、そして、具体的な成果が明らかに認められます。学習の過程における子どもたちの一喜一憂が、手にとるようによくわかります。「活性化されている授業」というのは、こういう姿を指すのだと私は考えています。


 さて、国語の授業はどうでしょうか。活性化されているでしょうか。私は、数えきれないほどの国語の授業を参観してきましたが、残念ながら、おおかたは、あまり活性化されていないように思われました。何となくわかりにくく、くどく、おもしろくなく、笑いに乏しく、成果があいまいで、教師も子どももつまらなそうに見えました。

 文学作品の読みとりの学習など、時間を追うごとに深い読みとりに導かれ、文学の世界のおもしろさにいよいよ開眼されていくのでなければならないのに、なかなかそういう授業には出合えませんでした。ひどい場合には、自分ひとりで読んだ最初の出合いの感動が最も強く深く、指導を受ければ受けるほどつまらなくなってしまったなどということさえ、耳にしました。何とも残念なことです。

 これらは、あるいは、国語科の指導がいかにむずかしいものであるかということの証拠かも知れません。確かに、国語や道徳の授業は、とりわけ指導のむずかしい領域であるとは、私も思っています。具体性に乏しく、作業性に乏しく、行動性に乏しいことが、それらの指導をむずかしくしているのでしょう。

 しかし、時には、目のさめるような国語の授業にも出合いました。ふだん見ているおおかたの授業が退屈なものが多いだけに、まれに見るそれらのすばらしい授業は、本当に輝いて見えました。子どもたちが、生き生きとして、時時刻々、より高みへと向上的な変容を遂げていくのです。そういう授業に接すると、私は、「国語科でも、こんなすばらしい授業がやっぱりできるのだ」と、思いました。こういう授業のメカニズムを探れば、だれだってよい授業ができるはずだ、と考えました。

 子どもが生き生きと活動し、ぐんぐん向上的変容を遂げていく。授業の前と後とでは明らかな違いが表れる。子どもに好かれ、おもしろがられ、期待され、それらに応え続ける教師もまた楽しくてたまらない。そんな国語の指導はできないものか。音楽や体育に負けないすばらしさを、国語の授業でも実現したい。―私は長くそう願い続けてきました。また、そういう願いを具現すべく実践を積み重ねてきました。


 このたび、そのような年来の私の思いや実践を、一冊の本にまとめる好機に恵まれました。「国語教室の活性化」という主題は、まさに私の長年求め続けてきた課題そのものであります。

 本書では、文学教材の鑑賞指導という分野に限定しての実践論でありますが、私は本書の中で存分に自分の思いと実践を語らせてもらいました。大胆に、率直に、誤解さえも恐れずに、終始一貫、自分の本音を綴ることに努めました。「必ず実践をくぐらせて理論化する」というのが私の持論でありますが、むろんのこと本書でもこの信条は強く、太く貫いたつもりです。

 本書を読まれた方々の教室の授業が、いっそう活性化され、子どもたちに喜ばれるものになることを私は心から念じています。そうなることに、及ばずながら本書が少しでもお役に立てるなら、著者として幸いこれに過ぎるものはありません。


 本書が、このような形で公刊されるについて、明治図書編集部長江部満氏には格段の御教導を賜りました。特に記して心からなる感謝を捧げます。ありがとうございました。


  昭和六十年五月十日 屋根を打つさみだれの音を楽しみながら

   /野口 芳宏

著者紹介

野口 芳宏(のぐち よしひろ)著書を検索»

昭和11年 千葉県君津市に生まれる

昭和33年 千葉大学教育学部卒業

昭和38年 千葉大学附属小学校教諭

昭和58年 木更津市立西清小学校教頭

研究分野 国語科教育,家庭教育

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • これだけ評判が良ければ、買わずにいられません。
      2020/5/30
    • 堂々と、本音で語られるこの本は野口先生の著書の中でも一押しです。絶版になっていたのが復刊されると聞き、うれしくなりました。
      2019/5/12
    • 2年前に自校にいらっしゃったとき、この本を読むべきだと神からのお告げがあり、探したがなかった。たまたま持っていた先輩教員のものを見ると擦り減っていた。何度この本に触れたことだろう。考えただけで茶碗3杯はいける内容であることは間違いない。
      2019/5/6C
    • もう絶版になっている野口先生の著書が手に入るなんて!
      2019/5/6ちか
    • 先日、野口芳宏先生のセミナーに参加しました。先生ご自身が宣伝されており、読みたかったのですが、本が見つかりませんでした。復刊に感謝します。
      2019/5/2ぽん

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