- 序文 生きて働く要点力で「論理的思考力」を磨き人間力を育てる
- /瀬川 榮志
- まえがき
- /西田 市善
- T 「要点力」を磨く重要性
- 一 要点力の必要性
- 1 説明文を読むということ
- 2 説明文の二面性
- 3 「要点力」とは
- 4 要点力の必要性と活用
- 二 要点力が定着する基礎的技能・基本的能力・統合発信力の系統化
- 1 要点力が定着する基礎・基本の分析と系統化
- 2 要点力が定着するステップワークの開発
- U 「要点力」を磨く低学年のステップワーク
- 一 要点力を磨く一年生のステップワーク
- 【基礎的技能ワーク】 一年・ウォーキングコース
- じゅんじょに 気を つけて 要点力を つける
- 【基本的能力ワーク】 一年・ランニングコース
- 「大事なこと」を 考えながら、中心を とらえよう 「はたらく じどう車」(教育出版)
- 【統合発信力ワーク】 一年・クリエイトコース
- ようすが わかるように かこう 「おもしろい ことば」(教育出版)
- 二 要点力を磨く二年生のステップワーク
- 【基礎的技能ワーク】 二年・ウォーキングコース
- 文や 文章の 大事な ことを 見つけよう
- 【基本的能力ワーク】 二年・ランニングコース
- 「時間的順序」を考えながら、内容の大体をとらえよう 「たんぽぽの ちえ」(光村図書)
- 【統合発信力ワーク】 二年・クリエイトコース
- しらべたことをはっぴょうしよう 「せかいのあいさつ」(教育出版)
- 解答例
- V 「要点力」を磨く中学年のステップワーク
- 一 要点力を磨く三年生のステップワーク
- 【基礎的技能ワーク】 三年・ウォーキングコース
- 大事な文を見つけよう
- 【基本的能力ワーク】 三年・ランニングコース
- だん落とだん落の関係を考えながら中心をとらえよう 「とんぼのひみつ」(学校図書)
- 【統合発信力ワーク】 三年・クリエイトコース
- 大事なことをおさえてまとめよう 「合図としるし」(学校図書)、「くらしと絵文字」(教育出版)
- 二 要点力を磨く四年生のステップワーク
- 【基礎的技能ワーク】 四年・ウォーキングコース
- 接続語等を使って大事なことに気をつけて読もう/指示語等を使って大事なことを読みとろう/文末等に気をつけて、大事なことを読みとろう「地下からのおくりもの」(学校図書)/くり返し出てくる言葉
- 【基本的能力ワーク】 四年・ランニングコース
- だん落とだん落の関係をおさえて「中心だん落」をとらえよう 「あめんぼはにん者か」(学校図書)
- 【統合発信力ワーク】 四年・クリエイトコース
- 大事なこと・要点をおさえながらまとめよう 「手と心で読む」「点字を通して考える」(学校図書)
- 解答例
- W 「要点力」を磨く高学年のステップワーク
- 一 要点力を磨く五年生のステップワーク
- 【基礎的技能ワーク】 五年・ウォーキングコース
- 要点をおさえ文章の内容を的確にとらえよう/文章構成から要旨をとらえよう
- 【基本的能力ワーク】 五年・ランニングコース
- 要点をおさえ事実と意見の関係を考えながら要旨をとらえよう 「和紙の心」(学校図書)
- 【統合発信力ワーク】 五年・クリエイトコース
- 中心点や要点を明確にして課題を伝え合おう 「日本語を考える・日本語について調べよう」(教育出版)
- 二 要点力を磨く六年生のステップワーク
- 【基礎的技能ワーク】 六年・ウォーキングコース
- 要点をおさえ文章の内容を的確にとらえよう/要点をおさえ文章の中心をさぐろう/要点をおさえ文章構成を考えよう
- 【基本的能力ワーク】 六年・ランニングコース
- 要点に気をつけて中心をとらえ文章構成を考えよう 「自分の脳を自分で育てる」(学校図書)
- 【統合発信力ワーク】 六年・クリエイトコース
- 討論会を開こう――要点をまとめ要旨を明確に 「エネルギー消費社会」(学校図書)
- 解答例
- X 「要点力」が生きて働く統合学習 五・六年
- 一 要点力が生きて働く統合学習・五年
- ともに生きる――今私たちにできることは〜
- 二 要点力が生きて働く統合学習・六年
- 要点をおさえ要旨を明確にして自分の意見を発信しよう「アジアを見つめる、アジアから考える」
- あとがき
- /西田 市善
序文――生きて働く要点力で「論理的思考力」を磨き人間力を育てる
中京女子大学名誉教授 /瀬川 榮志
真の学力とは目的や必要に応じて生きて働く知識・技能・能力あるいは、情緒・意志・感動等を駆使・統合して価値的な行動ができる「人間力」のことである。この価値ある行動ができる人間力は、言語の機能によって培われることは言うまでもない。学力低下が我が国の教育界において重要な課題となっている現在、国語科教育が軽視されるようなことがあってはならないのは当然である。
学力向上を図る国語科教育の今日的課題は、「生きる力――人間力」に連動する「生きて働く言語行動力」の指導を徹底することである。戦後半世紀以上経過した現時点においても、この課題解決の具体策は講じられていない。つまり、国語科で習得した基礎・基本が、総合的な学習や他教科ならびに日常生活に波及・応用されていないのである。
生きて働く言語力を確実に身に付ける効果的な解決策に三つの方法が考えられる。
第一の具体的方法は、言語能力の螺旋的系統に基づく「国語科教育の体系化」である。「基礎的技能」を確実に定着し、その力で「基本的能力」を的確に習得し、その学習法で「統合発信力」を完全習得するのである。つまり、基礎が基本に生きて働き、さらに国語科で培う究極のねらいである「価値ある言語行動力」としての「統合発信力」に生きて働くのである。
この「統合発信力」は、総合的な学習を充実させ他教科の学習にはもちろん、日常生活の言語生活に生きて働くのである。「生きる力」を育む「生きて働く言語力」が多様な言語活動に波及・応用される経路はこれまで発見・開発されていない。
第二の具体的方法は、学習者の向上的変容を根底においた「国語科指導法の組織化」である。一単元・一教材の指導のシステムは、知的理解の「わかる段階」に止まることなく、自己変革の「かわる段階」に挑戦し、さらに実践行動の「できる段階」へと変容・変革する。学習者主体の指導過程では、このように「わかる」→「かわる」→「できる」の自己実現の学習過程によって「生きて働く言語行動力」が獲得できるのである。
この二つの具体策の推進によって、国語学力の向上は保障されるのである。これまでも現在においても、前述の国語科教育の理念や指導の原理・原則に基づいた抜本的な改革は行われていない。教育の営みは、言うまでもなく、意図的・計画的でなければならないはずである。確たる理念・理論のない主義・主張に迎合し妥協することがあってはならない。日々子どもに接している現場の教師が、どの説に拠って実践するかについて去就に苦しむようなことがあっては、質的に高く、しかも具体的な授業は創造できない。このように考えていくと「国語科教育の体系化」と「指導法の組織化」は今すぐ取り組まなければならない価値ある課題である。
この具体策の実施を完璧に遂行するためには、もう一つの追加しなければならない重要課題がある。それは、基礎的技能としての「単一技能」の指導が未開拓であるということである。
このことについてはほとんど着手していないのが現状である。学力低下の原因もこの指導の不徹底にあると言っても過言ではない。それは、基礎的技能としての「単一技能」の指導が未開拓であるということができる。
「単一技能」の指導とは、「順序・要点・要約・段落・中心・要旨・場面・情景・心情・主題」等の基本的能力を一つ取り上げて、段階的学習法で生きて働く技能として定着することである。この「単一技能」の指導がなぜ必要か。それは、例えば、高学年になっても要点力が定着していないために、説明文を的確に書いたり読んだりすることができない子どもが多い実態がある。その対応として、「単一技能」としての要点力の指導を徹底するのである。その指導法は、「基礎的技能」として行うことが原則である。加えて、生きて働く要点力として「基本的能力」に位置づけて指導する。さらに、「統合発信力」の指導に位置づけて行う必要がある。
戦後半世紀以上、基礎教科として研究の歴史と、輝く伝統のある国語科の指導で培った基礎・基本が、他教科の学習や総合的な学習ならびに日常生活に波及・応用されないのは、確たる国語科教育の理念や理論に基づく実践理論・方法が開拓されていなかったからである。
さて、説明文の指導において、「順序・要点・要約・段落・中心・要旨」等の技能・能力はきわめて重要である。しかも、これらの技能を駆使・定着する過程で論理的思考力を磨くことになる。つまり、単なるスキルの錬磨定着に止まらず、物事の筋道を整え論理的に組み立てていく資質・能力は低学年から指導する必要がある。要点力も中学年から指導するのではなく、一年生から技能の発達段階に則しステップアップの指導法によって、段階的に定着→習得→獲得しなければならないのである。
現行の教科書の単元・教材は、以上述べた論理によって配列構成されていないようである。「生きて働く国語力」の低下に歯止めをかけるには、「国語科教育の体系化」における「単一技能」の指導方法を明確にすることが大切である。例えば、要点力を指導するために最適な単元や教材を精選し、その教材で要点力指導に焦点を絞り技能の定着を図らなくてはならないのである。しかし、教科書教材の中から、「単一技能」の定着に最適の教材を見つけることは困難である。したがって、「単一技能」定着のための教材開発をすることが新しい課題となる。
開発教材には、どのような「要点技能定着」の機能があるか確かめなくてはならない。もちろん教科書教材についてもこのような視点から技能定着の機能があるかどうか分析確認する必要がある。
このような論理と方法によって要点指導を徹底するためには、「『基礎的技能』の定着における要点指導」(基礎学習)→「『基本的能力』の習得における要点指導」(基本学習)→「『統合発信力』の獲得における要点指導」(統合学習)の教材を精選し、あるいは発掘して効果的な指導方法を開拓しなければならないのである。「単一技能」としての「要点力定着」の観点からの教材分析が求められる。
前にも述べたように、これまでの説明文の学習では、「順序・要点・段落・中心・要約・要旨」等の基本的能力や学習で習得すべき重要な単一スキルが不徹底のため、「生きて働く国語力」が波及・応用されてこなかった現状がある。中学校・高等学校においても、このスキルが習得されていないために密度の高い文章が読み書きできない実態がある。大学生の国語力の低下も国・公・私立を問わずその傾向がみられる。例えば、要点を押さえ、要旨を明確にした自己紹介ができない、さらに四年間の研究の集大成としての卒業論文を完璧に仕上げることができない学生が少なくない現状があると言われている。
西田市善先生は、このような国語科教育の重要な課題に焦点を絞り、確かな実践理論で解決している。この価値ある課題への挑戦は小学校国語科教育だけの問題ではない。小・中・高・大学の国語教育で一貫して取り上げる課題であり「よき言語生活者」として生きていくために生涯教育の課題としてもチャレンジする意義がある。さらには、国際社会に伍していく世界の中の日本人として理論的主張ができる国際的な人間育成にも連動する。
この価値ある課題解決に取り組んだ西田先生は、理論と実践を統一した研究実績がある。このたび、本書の執筆編集に当たっても課題解決に真剣に取り組み、実践事例の内容の充実と画期的な構成の工夫等で多大の成果を収めた。
本書は、教育の理念を追究しつつ国語科教育の原理・原則に基づき実践的研究方法でまとめた、よりよい授業作りに役立つ実践者必携の書である。教育の究極のねらいは「一人一人の子どもの可能性を最大限に引き出し生涯の幸せを保証する」ものであると信じている。本書がこのような機能を発揮し役目を果たすことを祈念している。
明治図書の教育図書出版企画室代表の江部満様には、企画から出版まで心温まるご支援をいただいた。深く感謝し心からお礼を申し上げる次第である。
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