- 序章 国語学力向上の具体策「行動学習法」を導入したステップワーク
- ――「国語学力をつけるワークの開発」の理論的根拠と各巻の内容構成―― /瀬川 榮志
- まえがき
- /田中 桂子
- T 心を耕し想像的に読む力を育てる
- 一 子どもたちに豊かに想像できる力を育てていきたい
- 1 なぜ今、情景を豊かに想像する力を育てていくことが必要なのか
- 2 「情景を想像する」大切さについて考える
- 二 子どもたちの想像的に読む力をどのように育てていくか(基礎・基本の系統化)
- 1 情景は、文章の言葉からじっくり想像させる
- 2 想像的に読む力を育てる基礎的技能・基本的能力・統合発信力の分析と系統化
- 3 情景を描く力を育てる基礎・基本・統合発信系統表
- 4 想像的な読む力を育てる学習スキルの開発
- 5 ステップ学習系統表
- U 場面の様子を想像する力を育てる低学年のステップワーク
- 想像的な読む力を育てる低学年のワーク
- 一年・がっちりコース…じゆうに そうぞうしよう
- 一年・チャレンジコース…ゆたかに おもいえがこう
- 一年・発信コース…たのしく つたえよう
- 解答例/ワークのめあてと指導のポイント
- 二年・がっちりコース…じゅんじょを おさえて、場面の ようすを そうぞうしよう
- 二年・チャレンジコース…ことばと むすびつけて、場面の ようすを そうぞうしよう
- 二年・発信コース…ゆたかに つたえよう
- 解答例/ワークのめあてと指導のポイント
- V 情景を想像する力を育てる中学年のステップワーク
- 想像的な読む力を育てる中学年のワーク
- 三年・がっちりコース…情景をくわしくすることばを見つけよう
- 三年・チャレンジコース…様子を表すことばをもとに、情景を読もう
- 三年・発信コース…「おにたのぼうし」をくわしく読もう
- 解答例/ワークのめあてと指導のポイント
- 四年・がっちりコース…情景を思いうかべながら読もう
- 四年・チャレンジコース…情景を想像することにより話の中心をとらえよう
- 四年・発信コース…新美南吉の世界を味わおう
- 解答例/ワークのめあてと指導のポイント
- W 描写から想像する力を育てる高学年のステップワーク
- 想像的な読む力を育てる高学年のワーク
- 五年・がっちりコース…場面の描写を読もう
- 五年・チャレンジコース…人物の心情を情景から想像しよう
- 五年・発信コース…場面の描写と登場人物の心情をもとに考えを深め合おう
- 解答例/ワークのめあてと指導のポイント
- 六年・がっちりコース…自然の描写を想像しよう
- 六年・チャレンジコース…心の描写を味わいながら読もう
- 六年・発信コース…日本の四季の中で自分を見つめよう
- 解答例/ワークのめあてと指導のポイント
- X 心の世界へ
- ――詩の情景を想像してドラマを作ろう―― 〜心の描写を声と動作にのせて表現する〜
- 1 詩を通して、心の描写を表現しよう
- 2 学習計画
- 3 朗読発表会を行う
- 4 心の描写を表現する詩
- あとがき
- /田中 桂子
まえがき
国語科の学習で「情景を描く力を豊かに育てたい」と一言で言っても、いざ授業をしていると、情景とは何か、情景を豊かに描かせるにはどうしたらよいのか、また、その力をどのように育てていったらよいのか、などと迷うことがたくさんあります。しかし、詩や文学の情景を豊かに想像できると、登場人物の心情や主題に向けての話し合いは深まり子どもたちの目は輝きだします。
例えば、「ごんぎつね」の学習を進めていくと、子どもたちはまず「ごんはひとりぼっちでかわいそう」と感想に書きます。しかし、その「かわいそう」という内容は、なんとなく書いたというのが現状です。そこで、次に「ごんは、ひとりぼっちの小ぎつねで、しだのいっぱいしげった森の中に、あなをほってすんでいました。」の一文を皆で読み合い、「ひとりぼっちの小ぎつね」「しだ」「いっぱいしげった」「森の中」「あなをほって」の言葉の意味を想像し、ごんのおかれている情景をじっくり想像してみます。すると子どもたちの口から出てくる「かわいそう、ひとりぼっち」の言葉に理由がつき、考えも深くなってきます。そしてその後のごんの言動、兵十とのかかわりにもこの情景を描いた一文が土台となり、最終場面へとつながっていくのでした(詳しくは八五ページからのワーク参照)。
このように、情景を描く力が豊かであれば、その情景の中におかれている登場人物の気持ちに、きちんとした根拠を持ってよりそうことができます。これは優しさ、相手を思う気持ち(想像できる力)を育てることとも直結すると思われます。また、情景を描く言葉に着目して、言葉のおもしろさ、奥深さを知ることもできます。
そこで、本書では、場面の様子、情景、描写の優れた詩や文学文を精選し、その基礎・基本の系統化を図り、さらにステップ学習で、情景を描く言葉を基に想像的に読む力を豊かに育てていけるワークの開発を行いました。
子どもたちが、詩や文学文の情景を意識して読むことにより、想像的に読む力が身につくとともに、国語科に限らず、相手を思いやる気持ちを育てることにもつながっていき、日常の人間関係や自分の人生をさらに豊かにしていってくれるようにも思うのです。
/田中 桂子
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- 明治図書