国語力をつけるワークの開発13
心情を読み取る文学文の指導

国語力をつけるワークの開発13心情を読み取る文学文の指導

投票受付中

心情を読み取る力を基礎から身につけるステップワーク集

本書は登場人物の心情の読み取りを中心に授業展開を行い、その中でワークシートの位置づけを図っている。ワークシートは問題集的なものではなく、子どもたちの言語活動を誘発したり、活動の方向性を示唆している。


復刊時予価: 2,442円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: 未販売

電子化リクエスト受付中

電子書籍化リクエスト

ボタンを押すと電子化リクエストが送信できます。リクエストは弊社での電子化検討及び著者交渉の際に活用させていただきます。

ISBN:
978-4-18-375715-9
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小学校
仕様:
B5判 144頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

もくじの詳細表示

序章 国語学力向上の具体策『行動学習法』を導入したステップワーク
――「国語学力をつけるワーク開発」の理論的根拠と各巻の内容構成―― /瀬川 榮志
まえがき
/金久 慎一
T 人間形成に資する文学の価値
一 文学が内包する「おもしろさ」
1 児童がとらえる「おもしろさ」
2 人間形成に資する文学の機能
二 新しい視点に立つ文学の学習指導
1 文学の学習指導の目標と「生きる力」
2 生きる力に連動する言語行動力
三 作中人物の心情に視点をあてた価値目標の明確化
1 作中人物に視点をあてた文学作品の価値目標を明確にする
2 新しい視点に立つ発見的・創造的指導法開発の必要性
3 新しい視点に立ち授業に生かす教材研究内容
U 登場人物に視点をあてた読みの構造と指導の系統
一 登場人物の心情読みを位置づけた読みの波及・発展構造
二 心情読みに結ぶ読みの指導
1 心情読みを重視した基礎的技能・基本的能力・統合発信力の分析・系統
2 心情読みの力を身につけるための一単位時間内での基礎・基本・統合発信力の分析と位置づけ
3 学習指導過程に「わかる」「かわる」「できる」のステップ化の位置づけ
4 心情読みを効果的にするワークシート
V 心情読みにせまるための基礎学習
1年 「促音」「長音」に気をつけて読み書きしよう
一 入門期児童の実態と指導の必要性
二 ワーク構成上の工夫
ホップ 促音を正しく読み書きしよう
ステップ 長音を正しく読み書きしよう
ジャンプ 促音・長音のことばあそびをしよう
2年 丸(。)、点(、)、かぎ(「 」)を正しく読み書きしよう
一 二年生児童の実態と指導の必要性
二 ワーク構成上の工夫
ホップ 文しょうに、丸、点、かぎをつけて読もう
ステップ 点のうつところやかぎにきをつけて、まちがえないようにしよう
ジャンプ 丸、点、かぎをただしくつけて、読みやすいようにしよう
3年 音訓遊びをしよう
一 三年生児童の実態と指導の必要性
二 ワーク構成上の工夫
ホップ 漢字の音訓読みをしよう
ステップ 音訓カルタ遊びをしよう
ジャンプ 五・七・五の音訓遊び歌をつくろう
4年 いろいろな意味をもつ言葉について考えよう
一 四年生児童の実態と指導の必要性
二 ワーク構成上の工夫
ホップ 同じ「かな」を使ったいろいろな言葉を集めよう
ステップ 「いろいろな意味をもつ言葉」問題をつくろう
ジャンプ 言葉発表会をしよう
5年 同音異字の言葉研究をしよう
一 五年生児童の実態と指導の必要性
二 ワーク構成上の工夫
ホップ 同音異字調べをしよう
ステップ 同音異字づくりをしよう
ジャンプ 言葉のクイズ大会をしよう
6年 暮らしの中の言葉調べをしよう
一 六年生児童の実態と指導の必要性
二 ワーク構成上の工夫
ホップ いろいろなことわざを集めよう
ステップ いろいろな漢字四字熟語集めをしよう
ジャンプ ことわざや漢字四字熟語を使って問題づくりをしよう
◆ワーク解答例
W 心情読みにせまるための基本学習
1年 場面の様子を想像する――「大きなかぶ」(光村一下)
一 一年生児童の実態
二 教材選定の観点
三 本単元の指導目標
四 本時場面と授業展開(5/7)
ホップ グループで役割を決めて一次動作化をする
ステップ 他のグループ発表を見て、気づいたことや取り入れる内容について話し合う(二次動作化)
ジャンプ グループごとに、場面を想像しながら動作化を修正する(三次動作化)
五 教材研究の成果と授業の再構成
4年 感想を深めよう――「一つの花」(光村四下)
一 四年生児童の実態
二 教材選定の観点
三 本単元の指導目標
四 本時場面と授業展開(5/12)
ホップ 構造図づくりをもとに自分なりに学習課題について考える
ステップ 話し合いを通して、父親の気持ちを考え合う
ジャンプ 学級全員で学習課題に対しての話し合いをする
五 教材研究の成果と授業の再構成
5年 人物の考え方や生き方をとらえよう――「わらぐつの中の神様」(光村五下)
一 五年生児童の実態
二 教材選定の観点
三 本単元の指導目標
四 本時場面と授業展開(4/8)
ホップ 本時場面を構造図にまとめる
ステップ 二人の気持ちを考えて、会話読みをする
ジャンプ 大工さんの仕事に対する考えを聞くおみつさんに語りかける
五 教材研究の成果と授業の再構成
X 心情読みが生きる統合学習
1年 よんだ ほんの しょうかいクイズたいかいを しよう
一 一年生児童の実態
二 学習指導展開の工夫
三 本単元の指導目標
四 本時場面と授業展開
ホップ 三つのヒントのある クイズづくりを しよう
ステップ はなしあいで きまったことを カードに かこう
ジャンプ ほんの しょうかいクイズカードを かんせいさせよう
五 教材研究の成果と授業の再構成
3年 二年生に本の読み聞かせをしよう
一 三年生児童の実態
二 学習指導展開の工夫
三 本単元の指導目標
四 本時場面と授業展開(3/5)
ホップ グループごとに話し合いカードを作る
ステップ 他のグループの読み聞かせを聞いて「よかったことさがし」をする
ジャンプ 学級「読み聞かせ大作戦表」を作る
五 教材研究の成果と授業の再構成
6年 「宮沢賢治」からのメッセージをさぐろう
一 六年生児童の実態
二 学習指導展開の工夫
三 本単元の指導目標
四 本時場面と授業展開(5・6/9)
ホップ 個々人で宮沢賢治を調査する
ステップ グループ内で賢治について調べたことを発表し合う
ジャンプ グループ相互で賢治の生き方、考え方を発表し合い、まとめる
五 教材研究の成果と授業の再構成
あとがき
/金久 慎一

序章 国語学力向上の具体策「行動学習法」を導入したステップワーク

   「国語学力をつけるワークの開発」の理論的根拠と各巻の内容構成
    中京女子大学名誉教授 /瀬川 榮志


 国語学力が向上しない最大の理由は、順序・要点・段落・中心・要約・要旨――粗筋・情景・場面・心情・主題――などの基本的能力が確実に身についていないことに起因する。例えば、小学校高学年や中学校の児童・生徒が、説明文を読んだり書いたりする活動を展開する際に「要点力」不足で内容を的確に理解したり表現したりすることができない事実がある。

 要点力は小学校中学年で定着しておかなくてはならない重要な基本的能力である。この能力は、教科書教材を中心に指導しているであろうが不徹底である。また、現在の教科書教材や、その指導法では「生きて働く要点力」等の基本的能力は十分に定着していないことが多い。その理由は、要点力や要約力を論理的な文章構成の中に的確に組み入れて、集中的にその能力を指導できる教材が少ないからである。

 話したり聞いたりする活動においても、順序を押さえる能力がないために、的確な音声活動ができない中学生や高校生・大学生もいる実情である。「順序力」は小学校低学年で完全に定着しておく基本的能力である。この能力は、中学年では論理的順序、高学年では心理的順序として発達する能力で、「話す・聞く」「書く・読む」活動において、表現・理解する内容を論理的に構成する重要な能力である。


 このような国語学力の核となる基本的能力を確実に身につける指導が、従来の国語科教育には欠落していたのである。実に驚くべき事実であり、憂慮すべき実態である。この能力の指導が徹底しない限り国語学力は向上しない。したがって、学習指導要領に示されている学年の発達段階に応じた基本的能力を確実に定着→習得→獲得する具体策を講じることが、国語学力向上の重要課題である。

 この課題の解決の具体策としては、順序・要点・要約・段落・要旨等の基本的能力を「単一技能」として取り上げて、「基礎的技能→基本的能力→統合発信力」の螺旋的系統に拠る国語科教育の体系化に基づいて指導することが効果的である。

 例えば、基礎的技能の指導においては、短い教材文やワークを使って、易から難へのステップを踏んで、確実に「要点力」を定着させる(基礎的技能定着の〈基礎学習〉)。基本的能力の指導においては、教科書教材の典型的なジャンルの文章で、「要点力」を重点にレベルアップしながら確実に習得させる(基本的能力習得の〈基本学習〉)。統合発信力の指導においては、価値ある言語文化を取り上げ、情報活用能力と人間関係力を総合的に駆使しながら、「要点力」を確実に獲得させる(統合発信力獲得の〈統合学習〉)。このような国語科教育の秩序化・体系化を意図的・計画的に改革し推進しなければ、国語学力の向上は期待できないのである。


 生きて働く「単一技能」を身につける学習の方法としては、「行動学習法」を適用することが最適である。「行動学習法」とは、単なるスキルや知識としてではなく、具体的な言語活動を通して「生きて働く言語行動力として定着→習得→獲得する」方法である。「行動学習法」とは「為すことによって学ぶ」ことである。「行動することによって技能・能力を身につける学習法を獲得する」ことでもある。

 国語学習が好きでない……という児童・生徒が多いという実態も、教師の説明・解説中心の授業が多いことが原因である。体育や図画工作・家庭科の授業に興味・関心を示し真剣に取り組むのは、身体的活動としての具体的行動が伴うからである。言語行動においても、ことばによる身体的表現が必要である。例えば、音読の学習で作品の内容に感動・共感し感情移入して、自然に瞳が輝き表情が豊かになり、リズムにのって身体を動かしたりする。この言語行動体験を積み重ねていくことによって、音読から朗読、そして暗唱に発展していくものである。

 身体的表現を重視した「行動学習法」には、文章の要点にサイドラインを引いたり(サイドライン法)、中心を囲んだり(中心法)、要約したことを余白に書き込んだり(脚注法)、登場人物の心情の推移を折れ線グラフにしたり(心情曲線法)、自分の思いや考えを吹き出しに書いたり(吹き出し法)、などの言語活動によって技能・能力が定着し、思考・創造力がフル回転するはずである。このような「行動学習法」は、定着する技能・能力や学習の目的、あるいは単元や教材によって多様に、また、数多く工夫してワークシートを作成することができる。

 基本的能力を獲得させるためには、ワークシートを作成し活用すると効果的である。その場合、理論的根拠が必要である。ただ単に読ませたり書かせたりするワークや市販のいろいろなワークシートを断片的に取り上げたり、つなぎ合わせたりしたワークでは「生きて働く国語力」は定着→習得→獲得できない。そこで、次のような条件を具備したワークシートを工夫することが大切である。


 ◎ワークシートによる学習は言語行動主体・学習者主体の学習法である

 ワークシートによる学習は、一人一人の児童・生徒が価値ある課題を自力で解決する自己実現の言語行動である――という教育理念と、国語科教育の確たる理論と学習の原理・原則が根拠にある。


 ◎生き生きとワークする過程で基礎・基本・統合発信力を定着→習得→獲得する

 充実した学習を行うためには、「活動あって学習事項なし」の状況から脱却しなければならない。よい学習には、「生き生きとワークするプロセスで国語力を定着→習得→獲得する」ということが絶対条件である。そのためには、次のような原理・原則に拠ることが大切である。

  *国語科の基礎・基本・統合発信力を明確にし、その完全獲得を目指したワークシートを作成する。

  *達成感・成就感を満喫し、言語行動主体の自己実現できるステップアップの過程を編成する。

  *「ワーク」と「技能・能力」が密接不離の関係で連動したワークシートを作成する。

  *自己評価や相互評価ができるように適切に工夫したワークシートを作成する。

  *国語力の発達段階や、一人一人の習熟度に応じてワーク量を調節する。


 ◎多種多様でユニークな楽しいワークシートを開発する

 ワンパターンのワークが繰り返し続くと子供は飽きてしまうし、学習の方法も固定してしまう。現在数多く使用されているワークシートが、このような傾向にあるということは否定できない。そこで、「行動学習法」を適用した「新ワークシート」の開発に挑戦することが必要である。


 ◎ワークシートは、発展学習や補充学習にも活用できる

 ワークシートは、発展学習や補充学習に活用すると効果的である。また、習熟度別指導にもその機能を発揮する。国語科指導においては教科書単元や教材を忠実に指導することが前提である。しかし、教科書には量的に制約がある。したがって、言語事項の教材も不足で系統的に配列していないことがある。説明文や文学文も読み方書き方が不徹底のまま調べ学習に発展させているため、典型的なジャンルの読解力や文章表現力が十分身についていない高校生や大学生もいるという、憂慮すべき実情である。

 加えて、文化審議会の答申で強調されている「言語力による情報操作能力」を獲得する的確な単元が設定されていない教科書もある。


 このような教科書の内容構成からも、国語科教育の体系化や指導法の組織化の観点から再検討・再構成の必要がある。また、今後も教科書による指導を中核に据えると共に、基礎・基本・統合発信力の螺旋的系統の体系化に基づく「行動学習法」で国語学力の向上を促進しなければならない。そうしないと国語学力は低下の一途を辿り学力の低下にも歯止めがきかなくなる。

 本企画「国語力をつけるワークの開発」〈「読解の基本的能力を磨く『行動学習法』ステップワーク」〉全一五巻は次のように内容を構成する。

 1 基本的能力指導の重要性――「要点力を磨く説明文の指導」の書名であれば、○要点力指導の重要性(意義・定義) ○要点力の学年の発達系統 ○効果的指導法 で構成する。

 2 基本的技能コースの「要点力を磨く」実践――○低学年の「基礎学習」の指導事例 ○中学年の「基礎学習」の指導事例 ○高学年の「基礎学習」の指導事例 で構成する。

 3 基本的能力コースの「要点力を磨く」実践――○低学年の「基本学習」の指導事例 ○中学年の「基本学習」の指導事例 ○高学年の「基本学習」の指導事例 で構成する。

 4 統合発信力コースの「要点力を磨く」の実践――○低学年の「統合学習」の指導事例 ○中学年の「統合学習」の指導事例 ○高学年の「統合学習」の指導事例 で構成する。

 以上四つのプロットで各巻共通に組み立てる。指導事例はもちろん、易から難へと学習活動をステップアップしたワークシートで構成する。ワークシートによる学習は、学習者の主体的行動・言語行動主体の国語科教育の原理原則に基づく「行動学習法」であることが基本条件である。

 なお、1の○要点力指導の重要性(意義・定義)の執筆に当たっては、『国語学力をつける「基礎・基本・統合発信力」ワーク』(明治図書出版 小学校1年〜6年〈六巻〉、中学校〈一巻〉、計七巻)を参考にする。ここに掲載されている「学習者主体・言語行動主体の国語教育〜スペシャルワークの理念・理論・実践」の「二 生きて働く国語力の螺旋的系統」の「国語科と総合的な学習の波及経路〈基礎・基本・統合発信力の精選と体系化〉」の構造図(九ぺージ)を挿入して原稿を作成する。この構造図には、「単一技能」の機能と役割が示されてある。また、基礎的技能としての「単一技能」が基本的能力に波及し、さらに統合発信力に応用されていくかを理論的に実証し「生きて働く国語力」波及経路が明示されている。


 この七巻は、全国小学校国語教育研究会と全国中学校国語教育研究会の役員、並びに研究同志が企画編集したシリーズである。二十一世紀の国語科教育を拓く理念・理論・方法を明確にしている。この考え方を原点・起点に、これからのわが国の国語科教育を充実発展したいという願いで描いた基本構想である。

 本シリーズに取り上げる基本的能力は、論理的思考力を練磨する説明的文章と情的感動を高める文学的文章に適用される読解能力を精選している。しかも、新世紀の国語科教育の道を開く国語科教育の体系化と指導法の組織化の実践理論に拠る、実用的国語学力を向上させることを目指している価値ある企画である。各巻の「理論と実践を統一」した充実した内容が期待される。

 この企画は、学力向上の具体策は国語学力を高めることが先決であることを重視して、全国的な規模で編著者をお願いした。国語科教育の現状を直視すると、改革しなければならない課題が山積していると言っても過言ではない。これからは、学力低下の原因を分析して、その対策に真剣に取り組む必要がある。国語学力を高めるために、指導法の改善に挑戦し多くの実績を重ねている実践者や、新しい視点から国語科教育の改革を提言し成果を上げている研究団体の指導者が協力連携していくことが極めて重要である。全国的な組織で、国語科教育の充実を意図的・計画的に促進し、「国語教育立国論」の理念を追究し、理論を確立し、効果的な指導法を開拓していく時代の到来である。

著者紹介

瀬川 榮志(せがわ えいし)著書を検索»

現在 中京女子大学名誉教授 全国小学校国語教育研究会名誉顧問

全国日本語教育学会名誉会長 全国創造国語研究会名誉顧問

全国国語科教育研究所長  21世紀の国語教育を創る会代表

1928年鹿児島に生まれる。東洋大学国文学科卒業。鹿児島県・埼玉県・東京都の公立学校教諭、東京都教育委員会指導主事、東京都墨田区立立花小学校・中野区立上鷺宮小学校・同鷺宮小学校長を歴任。その間、文部省教育課程教科等特別委員・教育課程調査研究協力者ならびに副委員長。学習指導要領指導書作成委員、NHK学校放送教育番組企画委員。現在も全国的規模で授業理論の確立に活躍中。

金久 慎一(かねひさ しんいち)著書を検索»

現在 北九州国語教育研究会副会長  北九州市立守恒小学校校長

1948年大分県に生まれる。福岡教育大学教育学部卒業。昭和47年より北九州市の公立小学校に勤務する。昭和53年より9年間、福岡教育大学附属小倉小学校に勤務し、昭和62年より北九州市の公立小学校に再勤務。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ